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熱量あるコメントでCVR最大250%の成果も サンエー・ビーディーのレビュー活用マーケティング戦略

 「NATURAL BEAUTY BASIC」などの人気アパレルブランドを擁するサンエー・ビーディーは、昨年2月にブランドを横断したECサイトを新設。今年、さらにレビューエンジンを実装し、ユーザーレビューやスタッフレビューを購買の後押しに生かしている。「思いがけず熱量の高いレビューが多く集まっている」と手応えを得ている同社と、レビューエンジンを提供するZETAに、レビューによるマーケティング推進について取材した。

5ブランドをひとつのECに統合

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、サンエー・ビーディー直営の公式ファッション通販サイト「SANEI bd ONLINE」のレビュー機能活用についてお話をうかがいます。まず、同サイトの特徴をうかがえますか?

近藤:当社は「NATURAL BEAUTY BASIC」や「JILL by JILLSTUART」など、10~30代女性に長らく支持いただいている5ブランドを扱うアパレル企業です。全国に路面店やショッピングモール内店舗を展開するほか、ECにも力を入れていましたが、以前は5ブランドそれぞれで直営サイトを運営していました。「SANEI bd ONLINE」は、それらを統合する形で、2018年2月に立ち上げたサイトです。

株式会社サンエー・ビーディー EC戦略部 近藤大介氏
株式会社サンエー・ビーディー EC戦略部 近藤大介氏

MZ:以前は独立して運営していた5ブランドを、なぜ統合されたのですか?

大橋:主にはCRMの観点からですね。顧客の視点からすると、各ブランドを横断して商品を検索できなかったり、会員カードやポイントが分断されていたりするのは利便性に欠けていました。各ブランドの戦略が独立していて、それぞれでファンを捉えていることはメリットもありますが、その反面でブランド間のシナジーを生みにくく、別のブランドの魅力や新たな商品を知っていただく機会も持ちにくい部分があります。それらを解消したいと考え、社名を冠した大きな傘の下にまとめました。

株式会社サンエー・ビーディー EC戦略部 大橋直樹氏
株式会社サンエー・ビーディー EC戦略部 大橋直樹氏

MZ:まとめた結果、期待する効果は上がっていますか?

大橋:そうですね、売上は昨対比200%と好調です。訪問者数も伸びており、50%ほど上昇しています。

ユーザーレビューは“諸刃の剣”か?

MZ:今年6月には、ZETAのレビューエンジン「ZETA VOICE」を実装し、新たにカスタマーレビュー機能を追加したそうですね。具体的に何が可能になったのかをうかがえますか?

近藤:購入した顧客が書き込むユーザーレビューは、他のアパレル企業や別の業種の企業で採用している形式と同様だと思います。ニックネーム、自分の身長、購入したサイズや色を入力し、感想を書き込めるという形式ですね。

 ひとつ我々としてこだわったのは、ZETAさんに依頼して、ショップ店員や本社スタッフによる試着レビューを写真付きで投稿できるようにしてもらった点です。一般の方の率直な感想はユーザーレビューで、着方の提案や素材についてなど、プロとしての意見はスタッフレビューで読んでいただき、写真もスタイリングの参考になればと考えて加えています。

スタッフが写真付きで投稿しているレビュー。導入時は投稿を促していたが、2ヵ月ほど経った今では積極的な投稿も増え、自走し出しているという。
スタッフが写真付きで投稿しているレビュー。
導入時は投稿を促していたが、2ヵ月ほど経った今では積極的な投稿も増え、自走し出しているという。

近藤:また、ユーザーの書き込みに対し、なんらかの当社としてアドバイスやご返信が必要であれば、そのユーザーのマイページへ個別にご連絡したりもしています。メールだと見ていない人も多いので、マイページでのコミュニケーションは有効ですね。

MZ:レビューエンジンの導入は、いつごろから構想されていたんですか?

大橋:実は、そもそも立ち上げ時に入れたいと思っていたんです。ただ、社内には「ユーザーレビューは諸刃の剣では」という見方もあり、その調整に少し時間を要したという感じです。

レビューによるCVR向上を説得材料に

MZ:“諸刃の剣”とは?

大橋:一般の方の投稿は一つひとつ目視し、承認してから公開される仕組みですが、そこで商品に対する率直な不満や批判を却下するわけにはいかないですよね。ただ、そういった意見も掲載するとなると、「ブランディングにはマイナスではないか」という懸念の声がブランド側からあがっていたのです。

MZ:なるほど。高評価のレビューが購買の後押しになる反面、不満や批判はブランド価値を下げるのでは、という心配があったのですね。

大橋:そうですね。ただ、僕らEC戦略部としては常々、実際の口コミがマーケティングに与える影響は大きいと思っていました。具体的なCVR向上の数値なども把握し、シミュレーションでも効果予測ができていたので、時間がかかっても実現するつもりでした。一般的なECサイトでも「レビュー数が多いほど購買が伸びている」といったデータを提示しつつ、ブランド側に客観的なユーザーレビューが次のユーザーの役に立つことを理解してもらい、6月の導入に至ったという経緯です。

MZ:では、サイト立ち上げのころからレビューエンジンの選定なども進められていたと思いますが、ZETAを含めて何社くらい検討され、なぜZETAに決められたのかをうかがえますか?

近藤:検討したツールは5つほどですね。「ZETA VOICE」の決め手は、柔軟な拡張性と、導入・運用のコストの2つです。前述の「スタッフによる写真付きレビュー投稿」といった機能はサイト立ち上げ当初から構想していたので、デフォルトでは備えていない機能でも、こちらの意図を汲んでスピーディーに対応いただけるかは、検討段階で重視した基準でした。

ZETAの柔軟な拡張性が決め手

MZ:ZETAの生川さんは、その検討段階からご担当されていたのですよね。当時はどのような質問を受け、また説明をされていたのでしょうか?

生川:まずは、「ZETA VOICE」が実装している基本の機能以外で、どのようなことをイメージされているのかを細かくヒアリングさせていただきました。スタッフレビューのようなプラスアルファの機能はもちろん、デフォルトの状態では現在の組織にフィットしない点や、業務を円滑に進めるために必ず調整したい点などを先に把握し、どうすれば対応できるかを意識しながらやり取りしていましたね。

MZ:できそうな部分は事前にお伝えしたり?

生川:そうですね。結果的に、事前のご要望は実装できましたし、ローンチ後の改修やつくり込みも進めている最中です。

ZETA株式会社 エンタープライズ事業部 生川亮太氏
ZETA株式会社 エンタープライズ事業部 生川亮太氏

大橋:拡張性については、今も実際にいろいろと追加の要望をご相談していて、その都度すり合わせをさせてもらってスピーディーに対応いただいています。ZETAさんにしてよかったと思っています。

MZ:不満や批判の書き込みが懸念だったとのことですが、実際にはどうでしたか?

近藤:それが、思ったよりずっと少なかったんです。平たく言うと、誹謗中傷が書き込まれる心配もありましたが、これまでほとんどないですね。もちろん、イメージと違った、サイズが合わず返品したという書き込みがあるのは当然ですが、むしろ「こんなに熱いコメントを書いてくれるんだ」と驚くことのほうが多いです。

レビューをマーケティングリサーチにも活用

MZ:そうなんですね。現在、導入して2ヵ月ほどですが、どのくらいのレビューが集まっているのですか?

近藤:3,000レビューほど集まっていますね。元々サイトの訪問者数や購買数などから、半年で3,000くらい集まったらいいねと大まかなKPIを定めていましたが、早々に突破している状況です。内容も9割以上が5点中3点以上をつけていて、不満や批判も少なかったです。

MZ:生川さんにうかがいますが、サンエー・ビーディーさんが懸念されていたような「批判や誹謗中傷があるのでは」といった懸念は、レビューエンジンの導入の障壁になっているのでしょうか?

生川:導入前に、そういった心配を聞くことはありますが、ローンチしてみたらそこまで気にならなかったという反応がほとんどですね。それよりも、自分の感想を書き込んで伝えたいという熱量が伝播して、次の購買を促していくという好循環が発生することのほうがずっと多い印象です。

MZ:ユーザーレビューは今では一般的なプロモーションになりましたが、0件より1件、1件より数件、数十件と蓄積されているほうが、CVRが飛躍的に伸びることもあるとか。

生川:そうですね。1件だと購買が1.1倍、10件になると1.5倍、50件つくと2倍になるというデータもあります(※出典:Smart Insights『The impact of customer reviews and ratings on conversion rates』)。

大橋:最近レビューが投稿された3つの商品のスマートフォンのCVRを確認すると、いずれも180~250%の伸び率となっていました。数ある中から3商品のみでのスコアですが確かな成果を実感しています。

近藤:レビュー投稿キャンペーンも実施しましたが、インセンティブ目的ならこんなに長く書かないだろう、と思うような熱いコメントもあり、改めて我々のブランドが支持されていることを感じました。「こんな色があったらもう1着欲しい」といった、次のマーケティングに役立つ意見も多いので、ブランド側に随時共有しています。

ユーザーの熱量を可視化し、巻き込んでいく

MZ:早速、次なるマーケティングにも生かせているのですね。では、今後の展望をうかがえますか?

近藤:ECでのアパレル購入は、どうしても試着ができないことがネックなので、レビューを参考に返品率が減ることは期待しています。

大橋:今はレビュー自体の検索ができないのですが、レビュー投稿には身長や買ったサイズなどが表示されるので、たとえば自分と同じ身長の人を検索するとか、趣味の合う人をフォローするとか、そういったことも実現できればと思います。

生川:当社の「ZETA SEARCH」を併用していただくと、レビューの検索もできるので、レビューを通したユーザー活性化が実現できそうですね。

近藤:そうなんですか。まだ個人的な構想ですが、レビュー投稿に熱心な方を検出できれば、その方々に新商品モニターをお願いするとか、もっとユーザーを巻き込んだ展開も実現できるんじゃないかと思うんです。

生川:それはすごくいいですね。まだ御社と距離が遠い方にも、購買の後押しになりそうです。先ほどの、レビューが多いほど購買されるという点も、その熱量が伝播していくことが要因なのかなと思ったりします。御社やブランド側としては、たとえばピンポイントなオケージョンを書くことが難しくても、ユーザーの投稿ならそこから広がりが生まれそうです。

近藤:そうですね。先日も「学会に着ていく服を探していて、このスーツがちょうどよかった」という書き込みがあったんです。こういったすごく具体的な意見や感想を可視化できるのが、レビューのよさだと実感しました。まだ数ヵ月の活動なので、今後は年単位でどのように発展するか、僕らも楽しみです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/06 11:29 https://markezine.jp/article/detail/31442