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ELLE SHOP、SHIPS、TSI ECストラテジー登壇!ファッションEC向け勉強会レポート

 ネイティブアドネットワークの展開で知られるpopIn(ポップイン)。2019年3月に画像検索サービス「popIn Action」の提供を開始し、コマースの領域にも力を入れ始めた同社が、7月24日、ファッションEC担当者向けの勉強会「【画像と検索のデータから学ぶECサイト勉強会】~お客様が本当に欲しい商品と出会える方法とは~」を開催した。

AIによる画像検索ソリューション「popIn Action」

 popIn Actionは、AIによる画像認識技術を用いた検索ならびにレコメンドサービスだ。買い物をしている時「欲しい商品の画像は手元にあるが、商品名がわからない」と困ったことはないだろうか。popIn Actionの検索機能を使えば、ユーザーがスマホに保存してある画像やその場で撮影した写真を簡単にアップロードでき、取り込まれた画像をもとにAIが似ている商品を並べてくれる。

 サービスローンチ前にpopInが行ったアンケートによると、「有名人のコーディネート画像を参考に服を買う」と回答した人が全体の約2割、このうち「Instagram上のコーディネート画像を参考にしている」と回答した人が約8割を占め、3人に1人が「気に入ったコーディネート画像をスマホに保存している」と回答した。この結果を受け、画像検索ソリューションがECサイトのバリューや顧客体験の向上に役立つと考えた同社はpopIn Actionを開発するに至った。

popIn株式会社 ディスカバリー事業部 マネージャー 吉岡真宏氏

 アップロードされる画像は大きく4つに分類される。もっとも多いのはInstagramの画像で、全体の約4割を占める。次いで雑誌の紙面をスマホで撮影した画像が約3割、物撮りされた商品画像、テレビ画面に映るタレントの姿をスマホで撮影した画像も検索時に使われていると言う。ユーザーがアップロードした画像のデータはpopIn導入企業にも提供されるため、マーケティングや商品開発に活用することができる。

 popIn Actionの導入企業第1号は、雑誌ELLEのエディターがプロデュースするオンライン・セレクトショップ「ELLE SHOP」を運営するハースト・デジタル・ジャパンだ。効果は「滞在時間327%」「CVR274%」「購入単価142%」と3つの面で顕著に現れた。

 popIn Action開発時、「導入のしやすさに一番こだわった」と吉岡氏は語る。popIn Actionは購買履歴や閲覧履歴をもとにレコメンドを行うわけではないため、静的なJSタグを全ページに設置するだけで導入の設定は完了する。導入時に専用のデータフィードを作成する必要もなく、すでに持っているデータフィードと連携するだけでサービスが利用できる。既存のレコメンドツールとも併用が可能で、リプレースを検討する必要はない。

 今後は、popInの既存ビジネスであるネイティブアドネットワーク「popIn Discovery」と連携し、ECサイトの認知拡大や新規顧客の獲得などサイト来訪前のサポートも強化する構想を吉岡氏は語った。

ハースト講演「コンテンツでサイトの世界観を貫く重要性」

 第二部にはpopIn Action導入1社目であるハースト・デジタル・ジャパンより、ELLE SHOPのプロモーションを担当する渡邊真帆氏が登場した。

ハースト・デジタル・ジャパン CRM事業部 プロモーション担当 渡邊真帆氏

 雑誌『ELLE』の読者から寄せられた「紙面に掲載されている商品を購入したい」との声を受け2009年にオープンしたELLE SHOPは、国内外約200ブランドの最旬アイテムを厳選して販売している。

 ELLE SHOPはメディアという出自もあり、コンテンツの設計にこだわっている。『ELLE』エディターによるスタイリングの提案や、海外セレブのコーディネート紹介などの記事により、商品ページへの誘導を行っている。それぞれの商品がどれだけクリックされたか、どういうタイトルをつけたブログのトラフィックが多かったかなど、記事単位の効果測定は非常に細かく行われているという。

 このように、コンテンツを経由して商品に到達するという動線は一見すると遠回りかもしれないが、「今の時代にお客様から選んでいただくには、商品選定はもちろん、コンテンツによって世界観を貫くことが重要」と渡邊氏は語った。品数や価格で勝負するのではなく、「この人の提案する着こなしなら間違いがない」と思っていただける信頼関係こそ、ELLE SHOPのようなセレクトショップ業態の要と渡邊氏は話す。

 「隠れたニーズを先回りして提示する、popIn Actionのような気の利いた機能と、回り道を楽しめるコンテンツ。そのどちらかに偏るのではなく、お客様が求めていることをベースに表現の方法を追求しています」(渡邊氏)

神戸デジタルラボ講演「利便性の高い検索UIとは」

 第三部は「検索サジェスト最前線」と題し、国内外の大規模ECサイトでどのような検索インターフェースが実装されているのかを神戸デジタル・ラボの橋川隼人氏が解説した。

株式会社神戸デジタル・ラボ サイト内検索sui-sei チーム 導線コンサルタント 橋川隼人氏

 アパレル企業を対象とした調査から、サイト内検索の重要性を裏付ける興味深い結果が得られた。全体の平均CVRが2%程度のECサイトにおいて、5回検索を行ったユーザーのCVRはなんと10%にもなったと言う。「キーワード検索をする人のCVRが高いという事実は意外と知られていない」と橋川氏は話す。

 国内外の売上TOP30サイトを対象に、キーワード検索のインターフェースを調査した橋川氏は、検索の利便性を追求する上で重要なこととして3つのポイントを挙げた。

1.どこからでも検索窓にアクセスできること

 検索窓が発見しやすく、なおかつ画面を阻害していない好例として、ZOZOTOWNの名前が挙がった。虫眼鏡アイコンが表示されており、そこが検索窓であると直感的にわかる仕様だ。

2.入力補助の機能が実装されていること

 規模の大きいアパレルECや総合通販の場合、商品カテゴリが区分されていることが重要だ。この点は海外サイトに先進的な取り組みが見られた。米国の総合通販サイトJoyBuyは、文字を入力すると縦に伸びたサジェストが表示される。タグの形式でキーワードが表示されるため、1回の検索にさまざまなキーワードを盛り込むことが可能となる。

 最近は入力した文字に合わせて商品画像付きで検索ができる「画像付きサジェスト機能」が増えてきている。文字列をクリックするとキーワード検索の結果が表示され、商品画像をクリックすると商品の詳細ページへダイレクトに遷移できるというもの。直感的に商品にたどり着いてもらえる点が特徴だ。

3.人気のキーワードが提示されていること

 ZOZOTOWNの場合はユーザーからよく検索されている人気キーワードと、ZOZOTOWNが選んだ注目のワードを区別してタグ表示していた。この形式はどのサイトにとっても正解というわけではなく、自社サイトの検索窓でどのようにキーワードを表示させるかは「ユーザーやサイトの特徴を見て判断すべき」と解説した。

 最後に橋川氏は、「検索の目的は意図する具体的な商品にたどり着いてもらうこと。ベストなインターフェースはサイトやユーザーによって異なるため、自社サイトの特徴を捉えつつ柔軟に実装していくことが大事」と語り、講演を締めくくった。

SHIPS講演「大幅組織改変でマーケティングもOMO思考に」

 第四部に登壇したのは大手アパレルブランドSHIPSでデジタルマーケティングの責任者を務める萩原千春氏。

株式会社シップス デジタルマーケティング部 デジタルマーケティング課 課長 萩原千春氏

 SHIPSは今年3月に大きな組織改変を行った。自社ECサイトのマーケティング、クリエイティブ、公式アプリ、SNSなど、それぞれの分野ごとに細分化されていた課をひとつに統合し、スピード感の向上と連動性の強化を目指すことになった。それに伴い乱立していた各種自社サイトにも大幅な手が加えられ、コーポレートサイト、ECサイト、オウンドメディアがひとつに統合された。

 「シームレスな組織やサイトになったことで、実店舗とECそれぞれの売上だけでなく、実店舗に貢献するEC売上やECに貢献する実店舗の売上など、相互に影響を与えるマーケティングが意識できるようになった」(萩原氏)

 そう語る萩原氏がpopIn Actionに寄せる期待は大きい。これまでSHIPSでは売上、来店数、サイトのセッション、CVRを上げるためにさまざまな手を打ってきたが、注文単価の引き上げ施策が不足していた。「EC展開外商品を着用したコーディネートページも、アップセル、クロスセルにつながる資産価値の高いコンテンツになる」と萩原氏は話し、popIn Actionがその点に貢献してくれる施策だと見込んでいる。

 また、これまでは「シャツ」と検索してもシャツの商品情報しかヒットしなかったが、サイトが統合されたことによって「シャツ」にまつわる特集コンテンツや店舗イベントなど、今後はキーワードに対して多様な情報を提供していきたいと語った。

パネルディスカッション「アパレルECとコンテンツ活用」

 最後にパネルディスカッションが行われた。第一部~第四部まで登壇した4名に加え、TSI ECストラテジーのデジタルマーケティング部でECサイトのUX改善に携わる田沼亜奈己氏が合流。渡邊氏、萩原氏、田沼氏の3名は自社でpopIn Actionを導入済みだ。吉岡氏とともに、ユーザーとしてpopIn Action活用のコツや効果について語った。

 3社とも画像を用いた商品検索の重要性は導入以前から感じていたと言うが、いざpopIn Actionを導入したものの、ユーザーに使ってもらえなくては意味がない。田沼氏も自社ECモール「MIX.Tokyo」への導入当初はユーザーからの認知が得られず悩んでいたが、思い切った施策で周知させることができた。

 「ウェブ接客ツールを活用するなどして『こういう機能が設置されました』と告知したり、『似ているアイテムを探せます』とテキストを添えたわかりやすいアイコンに変更したり、わかりやすい周知を心がけました。アパレルECの場合はブランドの世界観をとくに意識するので、機能拡充の大々的な告知は敬遠されがちですが、アイコン変更後は認知度が200%くらいになりました。最初はわかりやすく説明してあげることが大事ですね」(田沼氏)

株式会社TSI ECストラテジー デジタルマーケティング部 UX課 田沼亜奈己氏

 画像検索ツールの導入にあたって気になるのは、商品点数だ。AIを用いてとなると、大量の商品画像から機械学習させるのでは……と想像するが。

 「popIn Actionの場合は、型番で1,000点以上のデータがあれば類似商品をうまく抽出できます。さすがに100点以下だと難しいですが……。先日導入いただいたサイトは500点以下だったので、表示する点数を絞ったり、フィルタリングをかけずに画像認識にすべて任せて表示したり、工夫次第で導入は可能です」(吉岡氏)

 popIn ActionはアパレルECへの導入が盛んだが、今後は実店舗でも活用してほしいと吉岡氏は語る。

 「たとえば、実店舗を来訪したユーザーが店頭に在庫のない商品をオンライン上で検索したい場合、自らスマホで店頭の商品を撮影するのはハードルが高いですよね。そこで、スタッフがタブレット端末で撮影した画像をpopIn Actionにアップロードし類似商品を提案してあげる接客も可能だと思います」(吉岡氏)

 現在はアパレルが中心だが、今後は自動車や家具、フィギュアなど、ビジュアルが購買の主な判断基準となる他の分野にも導入を進めていきたいと吉岡氏は話す。

 最後に、画像をはじめとするコンテンツを使って今後取り組んでいきたいことを3名が述べ、勉強会は終了した。

popIn Actionに関するお問い合わせはこちら

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/31803