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動画広告は1対1の恋愛のようなもの──人の心を動かすエモーショナルな表現技術について

 『デジタル時代の実践スキル 動画広告 作成&活用』(翔泳社)の著者、中澤良直さんは動画広告を作る姿勢は恋愛思考でなければならないと指摘します。では、動画広告で視聴者の心を動かすにはどんな表現をすればいいのでしょうか。本書から一部を紹介します。

本記事は『デジタル時代の実践スキル 動画広告 作成&活用 売上・ブランド価値を高めるビジュアル手法』の「Chapter 3 動画広告の企画の作り方」から抜粋したものです。掲載にあたり、一部を編集しています。

広告のターゲットを決める

動画広告の目的やターゲットをしっかりと決める

 あなたの会社やお店のHPやSNSを使って「無料」で発信できる動画広告は、HP、YouTube、Facebook、Instagram、Twitterなどに財産として蓄積していける「ストック型」の動画広告となります。これは自社保有のメディアに掲出するものなので、何度でも視聴可能な動画となります。内容はブランドの魅力や商品説明、使い方を伝えることがメインとなります。

 あなたの会社やお店の動画広告を作る上で大切なのは、その広告の目的やターゲットをしっかりと決めることです。ここで広告の打ち出し方の軸を決めておければ、次に見込客へ有料で打ち出す動画広告を考える上でも役に立つものになります。いつ、どこで、誰に、何を、どのように伝えるか、的確なメッセージを展開できるよう、しっかり考えておきましょう。

ターゲット設定はたった一人の人を思い浮かべるだけ

 広告を届けるターゲットが決められないという人が多くいます。けれども、前述のように、動画広告はあなたのお客さまになる相手への愛の告白です。

 そう考えれば、ターゲット設定は至ってシンプルです。あなたの会社の商品やサービスをほしいと思うたった一人の相手を決めれば良いだけなのです。

 そのターゲットの人物像のことを「ペルソナ」と呼びます。たった一人で良いのか、と思うかもしれませんが、いわゆるターゲット設定をF1層(20~34歳女性)などと、アバウトに決めてはいけません。そのような設定の仕方が向いているのは、TVCMなどのマスメディアに打つ広告の場合です。Webで公開する動画広告の場合は、ターゲットとなる人物像を限定し、よりCMの効果を期待できる相手に視聴させることができるので、ペルソナを明確にイメージして動画広告を作ることが大切になります。

 あなたの会社の商品やサービスをWebで広告していくときにペルソナを明確にしておかないと、自分のターゲットに対して「どんな悩みを抱えているのか?」「どんなアプローチをすれば良いのか?」「どんなサービスを提供すれば良いのか?」といったことを導き出すことも、精査することもできません。

 そうなると、見込客となる人が必要としているものがわからず、結果的に見当違いの動画広告を作ることになってしまいます。それでは売上げにつながりません。あなたの会社の商品やサービスをしっかり見込客に届けたいと思うならば、ペルソナ設定をきちんとしましょう。

4つの基準からペルソナを決定する

 それでは、そのペルソナの設定はどのようにすれば良いのでしょうか。ペルソナの設定でまずすべきことは、あなたの会社の商品やサービスのお客さまになる人(好きになってくれる人)の具体的なプロフィールの設定です。一人の相手をしっかりとイメージできるように詳細な部分まで設定することで、その人に似ている人、近い属性の人に響くメッセージを考えることができます。

 そのときに、「好きな人」を想定するとわかりやすいのですが、あなたの会社の商品やサービスが、自分から見て「年齢」や「文化的」に異なる場合は、自分の親や親友などの身近な大切な人を想定して考えてみてください。

 具体的にどんな項目を決めていくかというと、目安として次の4つの設定基準で考えてみるとわかりやすいです。

■人物像

 氏名、年齢、性別、居住地、恋人や配偶者の有無、家族構成、学歴、仕事、役職、勤続年数、転職回数、収入、生活パターン(通勤時間、就寝時間、食事時間)といったあなたの理想とする一人を導き出すための分析です。具体的にその人は、1日どんなライフスタイルなのか、いつネットにつながっているのかなども考えます。

■価値観(価値背景)

 仕事、お金、職場やプライベートでの人間関係、健康、趣味、流行に対して、どのような価値観を持っているのか想像してみます。

■感情

 その人物が抱いている悩みや課題、根本にある原因や願望についてです。根本にある原因とは、その悩みの本質のことです。たとえば、「太っている」ことが悩みという人であれば、「食べすぎ」「運動不足」「ストレス」などが原因であると推測できます。このようにその人物がそう考える根本の原因も予測します。また願望については、その人物が理想とする未来を考えてみましょう。

■言葉

 その人物がどんな言葉に反応するのかということです。ネットを見たときに、つい目をとめてしまうフレーズ、単語、そのような言葉を探ります。関心のありそうなフレーズを考えてみましょう。

図3-1 ペルソナを決める4つの基準
図3-1 ペルソナを決める4つの基準

 では、実際にペルソナを考えてみましょう。対象とする商品は、「肌トラブルに悩む人向けの、100%無添加スキンケアオイル」です。先ほどの4つの基準から考えた具体的なペルソナが図3-2になります。

図3-2 ペルソナ設定の例
図3-2 ペルソナ設定の例

 このようにできるだけ細かい部分まで設定しましょう。あなたの会社の商品やサービスを利用してくれるお客さまを、アレコレ振り返り想像してみてください。少し面倒くさいと思っても、そうやって理想の人物像が見えてくると、その人の気持ちがより深く理解できるようになり、自分が何を伝えるべきかが整理できるようになります。

3つのFへメッセージを投げかける

3つのFはあなたのコアなファン

 動画広告を自社のYouTubeやSNSに打ち出すときにはターゲットであるペルソナを決めて訴求することをお伝えしました。この基本を押さえたら、次のステップとして、ファンの中でも3つのF(Family<家族>、Friend<友人>、Follower<フォロワー>)へのメッセージを気にしましょう。多くのお店や会社からの発信は、社内の友人や知人、フォロワーのSNSの投稿から知られていきます。ということは、「組織」より「個人」、「売る」より「関係性」、「仕事」より「楽しさ」が動画広告のキーワードになります。

 家族や友人、フォロワーという3つのFに対して、好ましい内容であることが重要な理由は、その人たちはあなたの情報を惜しげもなく宣伝してくれるコアファンであるからです。今、あなたの会社やお店の情報はその人たちのSNSで語られていますか。もし語られていないようなら、今すぐ3つのFへメッセージを投げかけましょう。コアなファンにメッセージが届かないようでは、どんなに宣伝しても売上げが上がらないことになりかねません。コアターゲットである3つのFをしっかりと動かしましょう。

図3-3 3つのFの関係図
図3-3 3つのFの関係図

動画広告の目的は、相手にたった1つの変化をもたらすこと

広告には目的となる1つだけのメッセージを入れる

 動画広告を作る際には、何を目的とした広告なのかを明確にしましょう。大切なのは、Aという考えを持った相手(ターゲット)をBという新しい価値観に変えさせることです。動画広告を見て、「どう感じるか」「どう変化するか」を考え、その理想を目的として表現を考えるのです。

 ここで大事なのは、アレコレと言いたいことを詰め込みすぎないことです。何が言いたいのか明快に伝わる「1つだけの変化」をもたらすことが、成功のカギです。

 目的が決まれば、それを達成するための表現が見えてきます。では、どのように目的を見つけるのか、ペルソナの状況をもとにそれを考えます。

 たとえば、あなたからAさんへ「交際」を申し込むとします。このとき、ペルソナであるAさんの状況によって、次のように告白の内容は変わってきます。

  1. Aさんはあなたのライバルと交際している
    →別れさせるだけの魅力を伝える告白
  2. Aさんはあなたの名前すら知らない
    →怖がらせない真摯な告白
  3. Aさんはあなたのことが気になっていた
    →自分の魅力をしっかり伝える告白
  4. Aさんはあなたのファンである
    →すぐにでも交際してもらうための告白
  5. Aさんは恋愛に対して価値を感じていない
    →恋愛が持つ幸せを語る告白

 上記の場合にもたらされる変化とは、愛の告白に対する「YES」ですが、ペルソナの状況によって「目的」が変わり、その目的が「表現」すべきことを生み出してくれるのです。それを明確にできると、あなたの作る動画広告は、より効果のあるものになります。

目的が適切なほど広告の効果大!

 ここからは、あなたは広告主の立場ではなく、伝えたい商品やサービスがお客さまにとってどんな変化を起こすことができるのか、広告のクリエイターとしてお客さまの頭の中をよく考えてみましょう。

 たとえば、「調味料」の動画広告を作るとします。その調味料の表現を作る前に、「料理下手なお母さんに喜ばれる調味料になる」という目的を決めたとします。そうすると、その調味料は、料理が下手なお母さんでもおいしい料理が作れる。下手→上手という変化を生むものになります。

 変化:「料理下手」→「料理上手」
 目的:「料理下手なお母さんに喜ばれる」

 すると、喜んで食べる子どもたちというキャラクターが浮かんできたり、音楽やコピー、言葉遣いも、「料理下手なお母さんに喜ばれる」という目的からいろいろとアイデアが生まれてくるのです。

 この目的の発見は、とても大切です。これがターゲットに適合し、魅力的であればあるほど、動画広告は効果を生むものになるからです。

 広告主でもあるあなたは、商品やサービスのことは知り尽くしているかもしれません。しかし、広告を作るときに目的を見つけずに、ネーミングが伝われば良いとか、商品の説明だけを「目的」としてはいけません。料理下手なお母さんの思いは、子どもが「おいしい」と言ってご飯を食べてくれることなのですから、これを無視してはどんな広告を作ってもその効果は期待できません。

 目的を発見することは、動画広告のクオリティの7割を占めるといえます。あなたの会社の商品やサービスを、あなたのお客さまへ結びつけてくれる、羅針盤となる目的をしっかり考えていきましょう。

変化を伝えるメッセージを含んでいる広告の例

 繰り返しになりますが、印象に残る動画広告は、ターゲットに変化をしっかり伝えることができるものです。変化とは、AをBに変えること、目的を発見して、そこに連れていくことです。

 世の中にある多くの広告が、この変化を伝えるメッセージを含んでいます。では、その例を見ていきましょう。

例1:スポーツジム

 目的は、「やせる」「体力をつける」「健康になる」「楽しむ」「筋トレ」などいろいろ考えられますが、若い女性の新入会者がターゲットならば、その人の心の声は、「今はぽっちゃり体型だけれど、好きな人ができた。その彼に振り向いてほしいから、ダイエットを始めたい。いいジムがあれば行こうかな」といったところではないでしょうか。

 このコンセプトに基づいていると思われるのが「RIZAP」の動画です。内容は、ぽっちゃりとはいえない、鏡もちボディの女性がやせて「かわいい」と言われたいという目的から、変身してスリムになる。使用前・使用後を見せる動画です。A→Bへという結果が一目瞭然な納得感のある実証広告です。

「RIZAP」の広告

例2:ホテル

 目的は、「旅行」「ハネムーン」「出張」「ひとり旅」などさまざまですが、インバウンドなど訪日外国人や女性ビジネスマンにも気軽に泊まってもらいたいと考えているとしたら、「高級ホテルは高いし、カプセルホテルは怖い。女性の私でも泊まりやすい、リーズナブルで贅沢感のあるビジネスホテルはないかしら」などの声があるのではないでしょうか。

 このコンセプトに近いと考えられるのが「ファーストキャビン」の動画です。内容は、地上でファーストクラスのフライト気分を味わえるような新スタイルのカプセルホテルを見せていきます。女性を登場させ、室内の仕様やアメニティなどを見せつつ、ホテルへの意識改革となる動画広告となっています。

「ファーストキャビン」の広告

例3:英会話教室

 目的は、「ビジネス会話」「試験合格」「海外留学」などが考えられますが、日常の英会話が目的なら、「普通の英会話教室ではなく、自分の趣味や好きなことを通して楽しく英語を話せるようになれないかしら」といった声があるのではないでしょうか。

 このコンセプトに基づいていると推察されるのが、「AK-English」の動画です。内容は、YouTubeチャンネルでの英会話動画で、学ぶのではなく楽しく話すという英会話習得の極意を教えてくれます。視聴者に自然体のストレートトークで語りかける動画をシリーズ展開しています。なかには視聴回数が100万回を超えるものもあります。

超短期間で上達した英語勉強法!(AK inカナダ|AK-English)の動画

相手を変化させる言葉を出して、選んで、コピーにする

ペルソナと変化と目的が決まればコピーの方向性は決まる

 キラリと光るコピーは生活や人生を変える影響力があります。動画広告のコピーもポスターや新聞広告と同様に重要な要素です。「そうだ、京都に行こう」「すぐおいしい、すごくおいしい」など印象的なTVCMには印象的なコピーが付いていることからもわかるでしょう。

 ただし、動画広告のコピーは、大衆向けではなく、あなただけを振り向かせるためのコピーとなります。その人の立場になって考えてみましょう。そうすると、その人の悩みを解決する言葉がいくつか生まれてくるのです。それをできるだけ何通りも書き出します。その中から一番ふさわしい言葉を選ぶのです。

動画広告のコピーライティングに必要な5つのこと

 動画広告のコピーを考える際には、次の5つの事柄に気を付けることが必要です。

(1)相手(ペルソナ)の心の声「解決したい悩み」をリストにする

 自身の商品やブランドを念頭に置きながら、お客さまの悩みを言葉にしてみます。何より、相手(お客さま)になりきり、「やりたいけどやれない、でもやりたい」という悩みを言葉にしてみます。

(2)相手(ペルソナ)の悩みに「応える言葉」を書き出してみる

 自身の商品やサービスが、お客さまの悩みにどう応えられるか言葉にしてみます。不安が安心、不満が満足、不便が便利、不快が快適、不都合が好都合になるように、解消する言葉を考えます。このとき選ぶ言葉は、「◯◯できる」など、ポジティブなものにします。

(3)その答えとなる言葉を1つ選び「的確なコピー」へと磨いてみる

 聞き覚えのある平凡な言葉は排除。新しさやワクワクする言葉を優先して選びます。

(4)相手(ペルソナ)の視聴態度・気持ちの流れを的確に読み取る

 視聴時の意識や認識は、見るWebメディアや時間帯で変わります。そこでの思考、理解、感情を、どう動かし変化させるコピーが作れるかを考えます。

(5)相手(ペルソナ)との関係性が強い場合は専門用語もあり

 専門用語や身内ならではの言葉のほうが効果があります。

図3-4 動画広告のコピーを考える上でのポイント
図3-4 動画広告のコピーを考える上でのポイント

コピーの具体例

 例をもとに具体的に考えてみます。取り上げるのは、スポーツクラブの動画広告のコピーです。

(1)相手(ペルソナ)の心の声「解決したい悩み」をリストにする

「やせたい」「かわいくなりたい」「カッコいい服を着たい」「モテたい」「夏に水着を着たい」etc.

(2)相手(ペルソナ)の悩みに「応える言葉」を書き出してみる

「1カ月で-6kgやせられる」「専属トレーナー付きで安心」「やせて彼ができる」「夏までにくびれを作る」「リバウンドしない」etc.

(3)その応えとなる言葉を1つ選び「的確なコピー」へと磨いてみる

「モテるカラダ作り」→「やせて、モテるカラダが手に入る」 「夏までにウエストを絞る」→「やせて、目標のかわいい服を着る」

(4)相手(ペルソナ)の視聴態度・気持ちの流れを的確に読み取る

「就寝前」「一人」「スマホで」「好きな人を思うとき」「未来の幸せを考える」「好きな人に告白されたい」「モテるカラダが手に入る」→「やせて、『かわいい』と言われたい」

(5)相手(ペルソナ)との関係性が強い場合は専門用語もあり

「全額返金保証!」「専属トレーナー指導無料!」「セルライト解消」「筋膜リリース」etc.  このようにたった一人の相手に向けてその人を振り向かせるためのコピーを考えていきましょう。

広告コピーに使える心理学のテクニック

 優れたコピーを考えつくには、ある程度の経験が必要になってきます。しかし、このあと述べるさまざま心理学の考え方を押さえておけば、コピーの精度を上げることができます。詳しく見ていきましょう。

■カクテルパーティ効果

 見る人をつかみでゲットする手法です。街中の喧騒の中でも自分の名前を呼ばれると振り返ってしまったり、パーティ会場の騒がしい中でも二人の会話が成立したりするのは、自分に関係のある事柄だけを選択して聞きとっているからです。

 この効果を広告コピーに応用することができます。たとえば、「1カ月後、確実に6㎏やせたいあなた!」「クリスマスを一人で過ごす人へ一言」というコピーを付けるとします。相手はWeb上で多くの情報を目にしていますが、こうしたコピーを目にすると「あ、私に話しかけてきた!」と、目にとめることができます。特にSNS向けの動画広告では、明確なターゲット設定ができるので、最初にはっきりとこうしたコピーを打ち出すようにしましょう。

■バンドワゴン効果

 バンドワゴンとはパレードの先頭にいる楽隊車のことで、大勢に人気があるものに惹かれる、思わず行列に並んでしまう心理です。飲食店なら行列に並ぶ人たちの姿や、多数の笑顔の写真を見せるなどが代表的なやり方です。周囲が「認めている」という実績を示すことにより、自分も信じて大丈夫だという安心感を持ち、商品の購入を検討してくれやすくなります。「100万個完売!」と販売数を挙げたり、「残り10室! 週末は見学会へ」とカウントダウンで人気のマンションをアピールしたりするなど、人気を演出する手法も覚えておきましょう。

■ハロー効果

「東大出身」「アカデミー賞8部門ノミネート!」など、対象を評価するときに、最初に与えられた情報に影響され、実態を知る前にそれに対する評価が上がる効果のことです。ハローは後光という意味です。したがって、「〇〇医大△△教授監修のダイエットサプリ」「ファイナンシャルプランナーが教える月収3倍増の方法!」など、パッと見でいかに良い印象を与えるかがポイントになります。

■フォールス・コンセンサス効果

 多くの人が自分と同じ意見や行動をするだろうと考える心理のことです。契約や購入を決めるタイミングで躊ちゅうちょ躇している相手に、その商品を買ったお客さまの満足の声などを紹介すると効果があります。たとえば、「買うべきか悩んでいましたが、買って正解! 毎日使っているうちにどんどん効果を感じてきました!」「少し高いなと思ったけれど、それ以上の効果がありました! もうこれ以外考えられません!」という声があると、「そうなんだ、やっぱり効果あるんだね!」と購入してしまいます。他人の声に同調して、自分の正しさを確信してしまうのです。

ハード・トゥ・ゲット・テクニック

 ハード・トゥ・ゲットとは、入手困難なものという意味です。人は特別扱いされることが大好きです。「この広告を見たあなただけに教えます」「いつもご愛用いただいているあなただから」と言われることで、「私にとって、あなたは特別な存在だ」「あなただけに使ってほしい」と、相手の深層心理をくすぐり、信頼感や好意を得ることができます。

■スノッブ効果

 そんなにほしくないものでも「残り○点!」と言われると、人は希少なものに価値を感じてしまう心理です。この心理を利用して、「今なら先着50名さまに初回限定CDプレゼント」「タイムセール終了まで残り1時間20分!」といったコピーを付けると効果があります。

■シャルパンティエ効果

 これは人間の錯覚による心理効果のことです。たとえば、「15kgの鉄」と「15kgのダンボール」では、15kgの鉄のほうが重い気がしませんか。

 これは、広告コピーにも活用することができます。たとえば、「100名さまに5%値引き!」よりも「100名のうち5人に無料クーポンが当たる!」のほうがお得な気がしませんか。また、「ビタミンC2000mm配合」よりも「レモン1000個分のビタミン」と言われたほうがビタミンが多く含まれているように感じると思います。このように、数値で表す場合、パターンを比較してみて理解しやすいものを基準にコピーを考えてみましょう。

■カリギュラ効果

「絶対に中を見ないでください!」と言われたら、どう思いますか。禁止されるとついやってみたくなるのが、カリギュラ効果です。雑誌の袋とじもこの効果のひとつです。「スマートな人は絶対に買わないでください」「栃木県で本気で働く気のない人は応募しないでください」などと、あえて禁止して、ハードルを高くすることで興味をそそり、信頼感の獲得につなげるのです。

■ツァイガルニク効果

 テレビ番組を見ていて、ちょうどおもしろい場面でCMになること、よくありますよね。このように未完な状態で、先が気になってしまう効果のことをツァイガルニク効果といいます。「この続きはココをクリック!」「まだ安くなる! あなたの保険は毎月いくらになる?」といったように、動画広告の中でも最後のひと押しの言葉に使えます。

■認知的不協和

 矛盾する2つを並べることで、なぜそうなるのかが気になってしまうことを狙った手法です。たとえば、「売上げを上げたければ、営業はしない!」「お金を貯めたいなら、給料は全額使え」といった具合です。自分の考えが正しくないと否定された(ストレス状態)ことにより、そのストレスを緩和させるべく、提案内容を受け入れやすくなります。

 コピーに活用できる心理学はまだまだあります。しかし、コピーを考える際に忘れてはいけないことは、想定した相手に適した言葉を使うことです。具体的には、(1)ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字をバランス良く、読みやすく並べる、(2)簡潔で一瞬で読める文字数でまとめる、(3)業界の専門用語は使わない(ただし、ニッチなターゲット層や緊密な相手に向けてならば使用可)といったことがポイントになります。

相手の悩みをネーミング化で解決する

商品、サービスのネーミング化は重要な要素のひとつ

 お客さまが求める商品やサービスを瞬時に伝えられる要素のひとつとしてネーミングが挙げられます。文字で見て、聞いて、口に出して強いネーミングは、大きな売上げに貢献するものです。たとえば、当初伸び悩んでいた「モイスチャーティシュ」という商品は、「鼻セレブ」と商品名を変えたところ、なんと売上げが激増しました。また、「お~いお茶」も、元の名前はシンプルに「煎茶」でした。

 意味を感じ、端的に親近感を醸し出すなど、ネーミングにはコピーの重要要素が詰まっています。商品やサービスも一工夫すると、グッとコミュニケーションしやすくなり、売上げアップにつながるかもしれません。

 このことは、動画広告にも当てはまります。たとえば、大和ハウスの動画広告では、「家事シェアハウス」というネーミングによって家族が気付かずにいた家事を「家族ゴト」と考えて自然に「シェア」できる環境が生まれた話をしています。家事は分担するのではなく、丸ごとみんなでシェアするもの。それを「家事シェアハウス」というネーミングとともに商品化して、家族のより良い生活動線や家具の配置などの設計を再構築。ネーミングのチカラで商品力が生まれ、販売につながる広告展開をしています。

大和ハウス
大和ハウス「家事シェアハウス─名もなき家事のお悩みを解決する家─」では、「家事シェアハウス」というネーミングにより、サービスの良さを瞬時に伝えている
デジタル時代の実践スキル 動画広告 作成&活用

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デジタル時代の実践スキル 動画広告 作成&活用
売上・ブランド価値を高めるビジュアル手法

著者:中澤良直
発売日:2019年8月30日(金)
価格:1,814円(税込)

本書について

本書は、自社商品の宣伝やブランド認知度のアップについて、次の打ち手に悩みを抱えている個人事業主や中小企業の宣伝担当の方が、スマホ1台で簡単に動画広告の企画・作成ができるやり方を解説しています。

 

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/06 07:00 https://markezine.jp/article/detail/31809

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