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OMO時代のアプリ戦略の到達点 マーケティングプラットフォーム「Coke ON」はなぜ成功したか

自販機体験を向上する「Coke ON」、その目標設定は?

――「Coke ON」のサービスについて概要を教えてください。

 Coke ONは「コカ・コーラの自販機がおトクに楽しくなるアプリ」をキャッチフレーズとしてリリースされました。自販機を利用してドリンクを購入したり、特定の条件を満たすことでスタンプが貯まり、スタンプが15個貯まるとドリンクと交換できる「ドリンクチケット」を獲得できます。

 そのほかにも、2018年4月には、歩いた歩数でスタンプが貯まる「Coke ONウォーク」をリリースしました。開始してから1年少し経ったところですが、7月現在で約480万ユーザーにご利用いただいています。

 ダウンロード数は7月現在で1,500万ダウンロード、「Coke ON」対応自販機は全国32万台あり、AppStoreなどでも評価が高く、星4.6以上の評価を得ています。

――非常に高い評価ですね。「Coke ONウォーク」もダウンロードした人の3分の1ほどが利用しているなど、かなりエンゲージメントが深く、ユーザーをアプリに吸着する力が強い機能だと思います。ユーザーの満足度を上げている理由には何が考えられますか?

 1つの理由として、街中にある自販機で使えるという手軽さがあると思います。どんなにいいアプリでも、使う機会が年に1回程度であれば、ダウンロードも継続利用もそれほどされないでしょう。「身近なところで使える、開くたびに新しいキャンペーンが楽しめる」そんな信頼感をいただいているのも、1つの要因だと思っています。

――元々「Coke ON」アプリはどのような目的、数値目標を持っているのでしょうか。

 大きくいえば、様々なコカ・コーラ体験を向上させるという目的があります。その数値目標でいえば、ダウンロード数はもちろん、機能毎の利用者数といった累計規模に関する数値目標に加え、アクティブユーザー数や継続率、利用頻度のような利用状況に関する指標についても目標を設定しています。また、サービスの安定稼働やお問い合わせの発生についても監視して、サービス改善に取り組んでいます。

Bluetoothとクラウドのおかげで、新サービスを迅速にリリース

――キャッシュレス決裁への対応など、次々に新機能を投入されている印象ですが、コストもかなりかかっているのではないでしょうか。

 そうですね。自販機は一種の冷蔵庫なのですが、一度街中に置かれると大体7~10年は使われるんですね。しかも1台当たりの売上がすごく大きいわけではないので、莫大なコストをかけて自販機を入れ替えたり改修を加えたりするのは難しいのが現状です。とすると、ある程度実績がある、安価で枯れた技術、長く使われる技術を使ってイノベーションを起こさなくてはなりません。

 「Coke ON」の場合、Bluetoothを使って自販機と通信し、自販機からはサーバーに通信して購入履歴などを管理しています。現在ほとんどのスマホにはBluetoothが搭載されており、安価で使いやすい技術です。先ほど「テクノロジーが進化してやっと新しいイノベーションを展開できるようになった」といいましたが、それがこの点です。

 また、キャッシュレスに関しても大きく前進しました。先ほどお話ししたFeliCaの電子マネーだと、たとえばSuicaやnanacoなど各規格に対応させるには、自販機1台毎に新しいモジュールを追加する必要があり、かなりコストがかかります。

 ですが、アプリで支払いできる「Coke ON Pay」の場合、今年6月に実施した「LINE Pay」への対応などであってもCoke ONのサーバーサイドで対応すればいいので、自販機1台毎に特別な改変を行う必要はありません。そのためFeliCa対応自販機は、開始から15年かけて全国15万台の規模に達したのに対し、「Coke ON」対応自販機は3年半で32万台に急増しています。

 イニシャルコストやランニングコストがかさんでしまうと、どうしても展開できる規模に限界があり、たくさん売れる都市部の自販機にしか導入できません。ですがBluetoothのようなリーズナブルな技術を活用し、サーバーサイドで開発すればあらゆる自販機に一気に展開できるという方式をとれば、より柔軟にサービス改善を行えるのです。

――「Coke ON」が次々に新しい機能をリリースできる理由が理解できました。

 サービス開発についても、皆さんが日々新しい発見や楽しみができるようにということを念頭に置いています。それと同時に、当社自身もCoke ONのプラットフォームを使ってサンプリングを継続的に行い、新製品を知ってもらう取り組みもリリース直後から盛んにやっています。

 自販機と「Coke ON」のプラットフォーム上でサンプリングを展開するメリットはいくつかありますが、身近な自販機で配布できるのは大きな強みです。街頭やスーパーのサンプリングだと、その場で配って飲んでいただくことになりますが、自販機で製品サンプルを試飲できるので、ユーザーが自分のニーズに合わせ、適温に調整された商品を楽しんでいただけるメリットがあります。

 また、アプリの位置情報を活用して、地域や天候などに合わせたサンプリングやコミュニケーションも提案しています。2016年夏には、気温が35度を超えたエリアで、「熱中症対策で水分補給しよう」という文脈を使い、アクエリアスの無料サンプリングチケットを発行しました。するとお客様にも、「こんな暑い日にはアクエリアスだな」と認識していただけますし、今後当社がそういったメッセージを伝える助けになります。これこそ、デジタルとリアルが連携しているからこその仕掛けだと思います。

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アプリ機能が自販機営業のセールスツールに

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

江川 守彦(編集部)(エガワ モリヒコ)

東京大学文学部を卒業後、総合広告代理店でマスメディアの媒体営業業務を経験し、出版社に転じて人文系の書籍編集に従事したのち、MarkeZine編集部に参画。2018年よりオーガナイザーとしてMarkeZine Dayの企画にも携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/31864

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