キャリアは「コントロールは難しい」が大前提
成岡:クリーク・アンド・リバー社の成岡です。私はキャリアに悩まれているマーケターの方々と採用を希望される企業の双方にお会いして、マッチングのお手伝いをしています。相談に来てくださった方には山口さんの『マーケティングの仕事と年収のリアル』を薦めていて、今回は本の内容をより深くうかがうため、インタビューの場を設けてもらいました。
山口:本を薦めてくださりありがとうございます(笑)。
大前提として、キャリア形成って本当に難しいんですよね。運やタイミングも影響して、コントロールしきれない部分が非常に多い。望み通りのキャリアを歩める方はごくわずかで、新卒入社した会社でめきめき頭角を現す方もいれば、数回転職してようやく自分に合う職場を見つけられる方もいます。
インタビューや本の執筆では、どうしても形式知化しやすいスキル要素に焦点を当ててしまいがちですが、それは全体の2割ほどに過ぎず、言語化や再現性が難しく、運も左右する「残り8割」の影響が大きいと常々感じています。キャリアに関するアドバイスも、それを踏まえた上で聞いてほしいですね。
成岡:私も、日々たくさんの方とお会いする中で同じことを感じています。王道がないからこそ難しく、悩みも多いのだと思います。
アラサーで実績を積み、アラフォーでは「折り合い」を意識せよ
山口:その上で、キャリア形成のアドバイスとして私がお伝えするようにしているのは、20代のうちに自分の向き不向きを知り、アラサーでは向いている領域で経験を深める。アラフォーになると実績でしか見られなくなるので、それまでに数字のともなった実績を出せるように全力を尽くすということです。
アラフォー以降で得られるオファーは、それまでの仕事の通信簿。人によっては、シビアな評価と自分の希望の折り合いをつける時期でもあります。
たとえば、もしアラフォーの僕が今、P&Gレベルの米国本社に転職したいと思っても極めて難しい。それは経歴として海外で働いてきた、外資系企業で働いて実績を残してきたという経験が決定的に不足しているからです。
もちろん「その差分を埋めるために、何歳からでもチャレンジしましょう!」という話は、一般論としては美しいですが、倍率の高い人気企業から評価されて要職で転職するというのは、そこまで簡単に思い通りになるものではありません。
むしろ起業のほうが自己完結して実行できる分、簡単かもしれません。私のように、誰だって会社をつくれば社長になれますから(笑)。
成岡:若い人が減っている影響もあり、転職が可能な年齢は引き上がっているため、必ずしも悲観する必要はありませんが、やはりアラフォーになると実績や経験により、選択の幅は狭まりますよね。
山口:はい。だからこそ、ある程度「折り合い」をつけるのが大事かなと。何かをまったく諦めることなくキャリアを歩めている人は、ほとんどいないと思います。以前、ある著名なマーケターの方が「面白そうなことを優先してやっているから、年収は必ずしも上がっていない。転職時に年収が下がることもある」とお話しされていたのが印象的でした。
スター選手ですら、やりたいことと引き換えに何かを諦めている。折り合いをつけるというとネガティブに聞こえがちですが、諦めるというより、自分にとっての幸せや優先順位の高いものを見つけ、それを追っていくという姿勢が大切なのではないでしょうか。
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