正しい見積もりによって、リスクをともなう判断を乗り越える
成岡:それからもう一つ起こりがちなのが「隣の芝生が青く見える」問題。ネットやSNSを通じて情報がオープンになることで、どうしても他者と自身のキャリアを比べて焦りを感じてしまう方もいると思います。どう向き合っていけばいいのでしょうか。
山口:他人の成功を学びや発奮の材料にするのは良いですが、自分を卑下する材料にしても仕方がありません。「自分とそれほど変わらないと思っていた人が、自分より成功している」と感じているならば、それはシビアに言えば、「自分を過大評価し過ぎていた」ということ。悩んでも仕方がなく、高ぶれした自己評価を下げるか、自己評価に相応しい結果が得られるように頑張るしかないのです。
または「適切なリスクをとってこなかった」ために、望んでいた成功を掴めなかった可能性もあります。キャリア形成には、目の前の仕事に対する努力だけではなく、リスクのある決断をできるかどうかという要素も少なからず影響します。
成岡:おっしゃる通り、キャリアを積み重ねていく中で、時にリスクをともなう選択をしなければならない場面が出てきます。山口さんは、どのように考えを整理し、意思決定してきたのでしょうか。
山口:リスクを感じる判断をするときは、不安を分解するところから始めていました。これからとろうとしている意思決定がもたらす最悪の結果を想定し、どこまでなら受け入れられるのかを自分に問いかけることで、プランを立てていくのです。
実際に起業した時には、どこまでの失敗であれば自分は耐えられるかを考えました。その上で、半年間で目標を達成できなかったらサラリーマンに戻ろうと決めたことで、将来に対する漠然とした不安は消えました。
成岡:不安を分解して、想定シーンに応じたアクションプランを立てるのが大切なのですね。
山口:はい。リスクの許容度を自分で見積もることで、リスクをまったくとらないのではなく、リターンを得るのに必要な判断ができるようになります。
なにを失敗と捉えるかは、その人の価値観や生活コストなどに左右され、年収は絶対に下げられないという人もいれば、所属企業のブランド力にこだわる人もいる。自分の生々しい本音から逃げずに考えてみることを強くお勧めします。
そもそも、マーケティング施策は失敗の連続です。施策への投資を決めるときに、リスクと許容度を計算できないマーケターが、長期的に成功し続けられるはずがありません。これができないなら、マーケターとしての成功をあきらめたほうが良いというくらいに大事な見積もりです。
成岡:最後にキャリアの本質について、あえて言語化するとすれば、山口さんがいちばん強く伝えたいことはなんですか。
山口:ビジネスをしている以上、まずは成果に向き合うことが最も重要です。成果を上げることから逃げて、漫然と知識やスキルを身につけても活躍するのは難しいでしょう。
知識やスキルは誰かがもっているので、詳しい人から借りれば良いという考え方もできます。たとえば、一人のマーケターがプロである成岡さんと同じレベルで転職関連の知識を身につけるのはかなり難しい。それなら成岡さんのお力を借りれば良い、ということになりますよね。
成岡:ありがとうございます。私は、特にマーケターの場合は俯瞰で見る力、立ち止まってみる力が必要だと考えています。
今自分が置かれている状況や、自分の願望を達成するためにはどのような会社で働くべきかを俯瞰してみることで、ヒントが見つかる場合も多くあります。ただ、自分自身を客観視するのは難しいところもあるので、その場合は、当社に気軽に相談していただけると嬉しいです。
また私たち転職エージェントの強みは、一人ひとりに深く向き合うことができる点です。その方に応じたアドバイスをさせていただくので、山口さんがおっしゃっていた「形式知にならない部分」に関しても、お役に立てるのではないかと思います。山口さん、本日はありがとうございました。
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