事業計画を作る理想的なプロセス(2)
ステップ【1】
最初のステップとして、プレゼンのゴールと、前提条件(与えられる時間、参加者、配布資料の有無・プロジェクターの有無など)を確認します。プレゼンの画面がテレビなのか、旧型のプロジェクターなのかによって、スライドのサイズを「16:9」にすべきか、「4:3」にすべきかが変わってきます。
ステップ【2】【4】
次に、【2】【4】の段階では、一度PowerPointから離れて、WordやNoteで情報を整理することをお勧めしています。具体的には、(1)セッションの章立て、(2)各ページのタイトル、(3)各ページに準備するコンテンツ(記載する図や引用するデータを簡単に記載)をまとめていきます。特に数名でPowerPoint資料を仕上げていく場合には、この全体構成を早い段階で固めることが重要です。
大枠の構成が固まったら、次にPowerPoint資料にスケルトン(タイトルとテキストだけ書いてある、何のコンテンツが入るのかだけがわかる骨子の状態)を完成させます。ここでは、PowerPointを一緒に作るリサーチャーなどへの指示を具体的に記載し(例:山田さん、ここに「インフルエンサー・マーケティング市場」の年次推移のデータを挿入してください、など)、作業に漏れがないように進めます。
ステップ【3】
ステップ【2】【4】の作業と並行して、プレゼンテーションのテンプレートデザインのフローも同時に進めます。まず、【表紙】【目次】【インデックス(扉ページ)】【コンテンツページ(テキスト中心)】【コンテンツページ(背景写真透かし)】【裏表紙】のテンプレートのデザインを作ります(参照:図表1~図表5)。PowerPointにおいて活用するテンプレートやルール(フォント種類、サイズ、カラー、テンプレートなど)が決められている会社は、決められたテンプレートやルールに沿って作っていきます。
ステップ【5】
コンテンツを作りあげていくステップ【5】では、概念図を作成・挿入したり、グラフを引用したり、個別ページを仕上げます。ここで最も重要な基本は、「1シート、1メッセージ」です。つい余白スペースがあると、グラフを無理にいくつも詰め込んでしまったりしがちですが、1つのシートで伝えるメッセージはあくまで1つにすることが情報を制御するコツです。たとえば図表3ではビジョンの一文を、図表4では重要なKPIの数値が高いことを主張するために、それ以外の要素の記載を排除(あるいは文字フォントを小さく)しています。
全体の枚数を削減するために、2つの要素を1シートに詰め込んでいるケースも散見されます。しかし、多くの情報量を1枚に詰め込むことで、フォントが小さくなったり、伝えたいポイントがわかりにくくなってしまいます。
もし、どうしても細かいデータを載せたいという場合には、本紙には入れず、別添資料として「ファクトブック」「財務情報」などの章を新たに設け、そこに精緻な情報を詰め込むと比較的スマートです。
ステップ【6】
デザイン全体の微調整をして、バランスを整えます。その後は、プレゼンを何度も繰り返します。その過程で、情報が重複してしまっていたり、余計なページの存在に気づくことができます。折角作ったページであっても、不要なページは削っていきましょう。あれもこれも盛り込まなければいけないと思いがちですが、最後は「削ること」に徹します。
プレゼン後の資料のユーザビリティ
個人のエンジェル投資家やオーナー企業経営者などであれば、当日のプレゼンターのプレゼン力や、ビジョンを強く押し出した資料にするという手もあります。
一方で現実問題として、大手のベンチャー・キャピタルや金融機関から資金調達に挑む場合、プレゼン後に社内稟議や決済プロセスを経る必要があります。説明なしに資料だけを誰が見ても、十分な情報量を含み、項目を網羅した資料が求められます。
そういった観点で、本来はプレゼンでその場で伝えているメッセージを、後で読んだ人にもわかるように、サマリーテキストのBOX(図表4下部)に説明したいことを入れておくのもお勧めです。
次回は、「良いプレゼンは、企業価値そのものを高める」という点についてお伝えしていきます。
事業計画のデザイン例とその解説
図表1 表紙

コーポレートカラーと白文字をベースにシンプルにデザイン。写真はWebサイトのメインビジュアル撮影時に準備したブランドカラーの赤い靴を着用した女性を撮影し、転用している。
図表2 表紙

【会社概要】【市場環境】【事業説明】【成長戦略】【調達概要】の5つの要素で構成。目を通す人が、知りたい情報がどの章にあるか、すぐに目的の箇所にたどり着けるように設計する。
図表3 表紙

最も主張したいビジョン一文と補足説明文を読みやすいようにレイアウト。背景写真は主張が強すぎないように、黒いメッシュをカバーにいれて、白い文字がより読みやすいようにデザインされている。
図表4 表紙

左側には、重要なKPIであるインフルエンサーの所属人数と影響力の数字がシンプルに読めるように、右側にはその説明文を記載するスタイルを採用。
図表5 表紙

インターネット市場の異常な伸び率とテレビ市場に匹敵する規模であることを示すために、あえて「4マス広告」市場の2011年・2014年・2017年のスポットの市場規模を比較できるように設計。