入社後のエンプロイーサクセスまでの体験を設計する
近年、SaaS事業を中心に、顧客を成功に導く活動を「カスタマーサクセス」として重視するようになりました。顧客との長期にわたる関係構築はLTVの最大化につながるだけでなく、顧客がファンとしてサービスを周囲へ勧めてくれる提唱者になってくれるなどの効果も生むため、カスタマーサクセスは企業の成長に不可欠な活動として考えられています。

ビジネス領域においてカスタマーサクセスの重要性が増し続けているのと同様に、採用活動を長期的に捉えるリクルートメント・マーケティングでもまた、採用のゴールは入社ではなく、その人材の成功、つまり「エンプロイーサクセス」であると定義しています。その理由は、従業員の成功に企業として貢献することで、従業員のモチベーションや満足度が上がるだけではなく、リファラルでの採用につながりやすくなると考えているからです。以下では、エンプロイーサクセスを目指すために押さえておくべき要素を2点ご紹介しましょう。
エモーショナルサイクルカーブ:モチベーションの振れ幅を最小限にして高く維持する
まず、人の感情や精神の波を理解する上で、Don KelleyとDaryl Connerが1970年代に提唱した「エモーショナルサイクルカーブ」が役立ちます。エモーショナルサイクルカーブは新しい環境に飛び込んだ人の心理状態がどう変化するかをモデル化したものです。
一般的な心理モデルとして、新しい職場でのキャリアを開始したタイミングだけでなく、大きなプロジェクトに配属された直後など、個人のキャリアに大きな変革がもたらされた時、当初こそ期待に満ちモチベーションが高まるものの、立ち上がりの障壁でモチベーションが大きく下降すると言われています。
従来の短期プロセスの採用では、新入社員は実際の就業イメージについては手探り状態で入社をしてくることが多かれ少なかれ前提となっていましたが、長期的なコミュニケーションをとった場合、働くイメージを具体的に持った状態で入社する人が増えてくるでしょう。その場合、いかに入社後の振れ幅を最小限に留めるかがエンプロイーサクセスの肝となります。
社員のモチベーションを高く維持するための最善策は、入社前後のイメージギャップをできるだけ小さくすることです。ここでもやはり、入社前から続く採用コミュニケーションを「Why」を軸としたメッセージングに統一することが、ギャップの最小化につながるでしょう。
