持続性のある組織を作るために「動機づけ要因」を明確化して把握・改善する
また、社員のモチベーション維持は、企業という組織の持続的な成長とビジョン実現のために必要不可欠です。有限の時間や人的資源を効果的に活用するためには、取り組むべき課題や施策の見極めが重要になります。その一助となるのが、産業革命以降に提唱された「ハーズバーグの二要因理論」に基づく「衛生要因」と「動機づけ要因」です。
IT革命以前は、不満足の原因である「衛生要因」をどれだけ改善できるかが勝負でした。しかし、衛生要因の改善は職場に対する不満解消や、離職の防止といった効果を発揮する一方で、満足要因をゼロからプラスに引き上げるに当たっては貢献しない点が指摘されています。また現在は、衛生要因が産業革命期の労働環境からはるかに改善しているため、動機づけ要因を高められるかがモチベーションに大きく影響します。
動機づけ要因を高めるための方法として、ウォンテッドリーでは社内のコミュニケーションを「Why:自社がなぜ存在するのか」に紐付けることを心がけています。組織のあるべき姿をメンバーと正しく共有することにより、上からあえて指示しなくとも適切なアクションを期待することができるという考え方です。
また、コーポレート人事と現場マネージャーの間で、動機づけにおける役割分担を明確にすることも有効です。人事はシステムを導入したり、OKR(Objective & Key Result)の運用を通じて企業の目標と個人の目標を紐づけたりするといった全社員向けの施策を担当し、マネージャーは1on1などで社員一人ひとりをケアする個別最適の施策を受け持つと、定量と定性の両軸から適切な動機づけができるでしょう。
採用の好循環を生むコミュニケーション原則
採用における長期的なコミュニケーション設計には、入社前後に伝えるメッセージの「透明性」と「統一性」が求められます。これらの要素が欠けてしまうと、社員が入社後のイメージギャップによるモチベーション低下から脱却できず、期待されていたパフォーマンスを発揮できなくなる要因となり得ます。
エンプロイーサクセスの領域を始め、HRにまつわる分野では様々なバズワードが生まれては消えを繰り返していますが、それぞれを分断して個別最適で施策を捉えるのではなく、常に組織のあるべき姿に紐づけて全体最適的に採用におけるすべてのコミュニケーションを整えていくことが肝要です。
もちろん、目的意識は企業によって千差万別のため、まずは「自社のあり方」を言語化することが長期的な採用コミュニケーションを設計する第一歩となります。選考時の面接官トレーニングや入社後のオンボーディング、人事制度なども組織のあるべき姿から逆算するように設計を行うと、高いモチベーションとパフォーマンスを発揮する社員の採用と定着、そしてリファラル採用につながっていくでしょう。
