データサイエンスはデジタルマーケティングをどう変えるか
――ここで改めて、データサイエンスとは何か、定義を教えていただきたいです。
柳下:データサイエンスには定義が様々あり機械学習なども含むこともありますが、基本的には統計解析を意味することが多いかと思います。私としてはデータサイエンス(統計解析)は「情報を価値に変えるフレームワーク」で、予測や現象の解釈を行えるものだと考えています。一方で、機械学習は予測や分類に長けていて精度を高速で上げていけることが特徴です。
それぞれ長所が異なりますが、データサイエンスは現象を解釈してその背後にあるストーリーを読み解きやすいこと、ビジネスの実情にあわせてモデルを調整しやすいことも強みだといえるでしょう。
たとえばリスティング広告やディスプレイ広告を出稿する際、過去のクリック率やコンバージョン数をグラフや表にまとめ、どの数値が結果に影響していそうなのかを考えますよね。加えて、広告の遷移先についても1セッションあたりのPV数を伸ばしたほうが良いのか、1ページあたりの滞在時間を延ばしたほうが良いのかなどのページやコンテンツの質的な部分についても担当者が分析し、今後の打ち手に反映するのが一般的だと思います。
こうした解釈や予測の立て方は担当者の知識や経験に依存して属人化しやすいですし、予測の内容が正しいかどうかが判断しづらい傾向にあります。一方、データサイエンスでは各要因がCV数の増減にどのように影響しているかを数式で表現できるので、科学的な背景に基づく提案が可能になります。
具体的にはリスティング広告の予算金額をどれだけ増やしていくとCV数がどの程度増えるかを数式で表現して、「企業が設定しているCPA目標を上回らずにCV数を最大にできる広告予算額」を導くことが可能です。
――そのような予測値を算出する際、実際にはどのようなステップを踏むのでしょうか?
柳下:クリック数、インプレッション数など、広告配信プラットフォームの管理画面で取得できるデータを、Rを代表とする統計解析の専門ソフトに取り込みます。そして、データの種類に応じて適切な多変量解析の手法を用いることで、当てはまりの良い数式モデルを作りCV数を予測できるようにします。
ただ、専門ソフトで出せるアウトプットは専門知識がないと読み取れない場合が多いので、クライアントさまへ納品する際はまずはExcelでアウトプットできる範囲で解析結果をご提供することも多いですね。そして、統計解析で導いた数式を専門知識がなくても理解できるような形式にして、ひと目でわかるグラフも添えます。
マーケターご自身にとって理解しやすくするだけでなく、数式がどのようにできていて何を意味しているのかを上長にご説明しやすいように、シンプルでわかりやすい表現を心がけています。