最適な広告予算額は数式で導ける
――データサイエンスが加わることでマーケティング施策はどのようにブラッシュアップされるのでしょうか。
柳下:収益に直結する部分でいうと、たとえば予測モデルから線形計画法に基づいて「CV数を最大化させるために適切な広告予算の配分」を算出できます。
一般に広告予算額は増やすにつれて増分から得られる広告効果が徐々に下がっていくものです。そこで、広告配信媒体ごとに広告予算額とCV数の関係性をシミュレーションし、これ以上予算額を増やしてもCPAが上がるばかりで広告効果がほとんど増えなくなる、広告効果を維持できる上限となる広告予算額およびCV数を出すことも可能です。キャンペーン単位での広告予算額とCV数のシミュレーションも同様に行えます。
リスティング広告の改善はもうやりきっていて伸びしろはない、と考えているクライアントの方は多いのですが、分析してみると広告予算額がCPAが悪化するポイントに達しておらず、予算額を増やすことでCVを効率的に伸ばせることが判明することもあります。
テレビCMやイベントなど、オフラインの媒体も交えて最適な広告予算のアロケーションを導き出すことも可能です。テレビCMやイベントの場合直接的な効果指標を得られないので、状態空間モデルなどデジタル広告だけの場合より高度な分析手法を採り入れることが多いです。
――ということは広告予算の策定プロセスにデータサイエンスを取り入れるとROASを最大化しやすいということですね。
柳下:そのとおりです。多くの場合、企業として捻出できる広告予算が決まっており、それを割り振る形で各キャンペーンや媒体の広告予算に設定する場合が多いと思います。ただ、そのように恣意的に決められた予算が必ずしも費用対効果の観点から最適な金額だとは限りません。
データサイエンスによる予測を入れれば、広告予算が不足していて機会損失しているとか、逆に広告予算が過剰であるといった状態を回避して費用対効果を高めることができます。ですので、予算策定からお任せいただけるクライアントさまには率直に最適なアロケーションをご提案しますし、特定の媒体やキャンペーンの広告予算を下げて他の部分へ割り振るご提案をさせていただくこともあります。
各媒体が提供する広告プラットフォームにも入札を自動で最適化する機能はあります。一方で、あくまで設定した予算内で効率性を高めるためのものであると考えられるため、各媒体にどのくらい予算を投じるかは広告主が決める必要があり、成果を挙げる上で非常に重要な意思決定の部分だと考えています。その面において、私たちがデータサイエンスで効果的に支援できると考えております。
アドフレックス・コミュニケーションズではAIを活用したマーケティング支援を得意としており、たとえばリスティング広告の場合「AdScale」というツールを用いてAIの力で獲得効率を突き詰めてさらに広告予算を有効活用することができます。その場合も、広告予算額をどのように割り振るかはデータサイエンスが効いてきます。
データサイエンティストが最適な予算アロケーション作りを支援し、運用ではAIツールを用いて徹底した効率化を図るというのは、最も効果的な広告運用体制の一つなのではないでしょうか。