意外なカテゴリーのツールが結びついている
全3部で開催した「MarkeZine Trend Seminar vol.3」、第3部ではマーケティングに関するコンサルティングを行っているアンダーワークスの田島学さんを招き、同社が作成した「マーケティングテクノロジーカオスマップ JAPAN 2019」をもとに、現在のマーケティングテクノロジーの潮流について解説してもらった。
このカオスマップは日本企業が開発・販売している、もしくは日本に支社やオフィスがある海外企業のマーケティングに関するツールやテクノロジーを俯瞰できるようにカテゴリーごとにまとめたもの(現在、世界で約8,000、日本だけでも約1,000のツールがあるという)。最初は社員用だったが、クライアント側でもツール選定が難しくなっていると考え、一般に公開するようになったそうだ。
カオスマップの左上にある赤い領域が広告やSEOに関連するツールで、中央あたりがメールやチャット、ECなど顧客接点に関するツールである。そして右下の領域にはクラウドやサーバーなどインフラ関係のツールが配置されている。
田島さんたちがカオスマップを作成している中で気づいたのは、一見関係のなさそうなカテゴリーが実はつながっている場合があるということだ。たとえば、SEOはWebページの表示が速いほうが有利であり、そのためにはWebサーバーやCDNなどインフラにもコストをかける必要がある。特定の目的に必要なツールは領域が限定されがちだが、より視野を広くし適切なツールを見つけるためにもカオスマップが有用だと言えるだろう。
2019年になってABMがトレンドに
では、2018年と2019年のカオスマップを比べるとどんな違いがあるのだろうか。田島さんはまず、ツールの掲載数が1.8倍になったことを強調する。カテゴリー数も1.3倍になっているという。
BtoBの領域ではコールセンターやインサイドセールスなどアウトバウンド向けのツールが増えているそうだが、なによりABM(アカウントベースドマーケティング)がトレンドになっていると話す。
その理由は、これまでBtoBの営業とマーケティングで齟齬があった部分を補完する役割があるからだ。営業部門は足を使い個々の企業とやり取りするので、特定の企業を口説きたいという思いが強い。一方、マーケティング部門は年商がいくら以上で関東地方の……という大雑把なセグメントで見込み顧客のリストを作る。このリストは営業が欲しいリストではない、というわけだ。
ABMはマーケティングの段階からターゲットが具体的で、ツールには企業を名指しして広告を配信する機能もある。自動車会社Aの事例コンテンツを自動車会社Bの人にだけ配信できるのだ。営業の受注率が高まるためABMに注目する企業が増えており、伴ってベンダーも増えていることがカオスマップに反映されている。
他に目立つのはデータ統合系のツール(CDP、カスタマーデータプラットフォーム)だ。様々なツールを使えば使うほど社内にデータが蓄積するが、今度はそれを統合して活用しなければデータの持ち腐れとなる。CDPにもいくつかタイプがあり、実店舗とECの顧客データを統合するものや、マーケティングに特化したものもある。
注意しなければならないのは、ツールの説明にはマーケティングオートメーション(MA)と書かれていても、実際にはメール配信ツールでしかない場合もありうるということ。ベンダーはよりよく見せたくても田島さんたちはユーザーの立場でカオスマップを作成するので、ベンダーから直してほしいと指摘されることもあるそうだ。