1ヵ月に1回以上使われるアプリは平均35個
日本のヘルスケア系モバイルサービスの規模はまだまだ小規模ですが、投資体力のある外資企業が本腰を入れてマーケティングを強化すると一気に生活者に広がるということも、データから読み取れます。では、日本企業はこのヘルスケアの領域で、デジタル(ここではモバイル)の技術を取り入れてデータを活用していくために、何をすれば良いのでしょうか?
データを活用するためには、「集める→整理する→分析する」というプロセスを経る必要がありますが、その前にまず企業が考えなければいけないことは、「何のためにモバイル技術(アプリ)を使うのか」という目標設定です。マネタイズをしたいのか、マーケティングとしてユーザー接点を増やしてエンゲージメント向上を狙いたいのか、それによって設定するKPIが異なります。KPIが異なれば、ベンチマークにする他社サービスは変わります。
そしてデータを取得するためには、まずはアプリを起動して利用してもらわないといけません。App Annieによると、日本において、1ヵ月に1回以上使われるアプリは平均35個程度であり、生活者の限られた時間の中で、定期的に使われるアプリになるのは簡単ではありません。

新しい価値を顧客と一緒に創造する
コトラー教授が提唱しているマーケティング4.0では、以下の様に定義されています。
「顧客が何を持つべきかを創り出そうと考えるのではなく、何を創り出したら顧客がもっと幸せになるのかを聞きながら、新しい価値をともに作っていくこと」
つまり、新しい価値創造は、顧客から得られる声を得ながら顧客と一緒に作っていくものとあります。この「新しい価値」はまさにDXの文脈と重なりますし、顧客から声を聞く、という点についてはまさに今回の文脈である「生活者のデータを取得する」ことと理解することができます。
「RPAで業務効率化」とDXの文脈で語られることが散見される一方で、DXは「新たな価値創造のための変革」と経産省やCDO Clubにて定義されています。作業負担を減らして処理速度を上げる、等の業務効率化がDXではありません。このヘルステックの領域においても、DXやマーケティング4.0で言うところの「新たな価値創造」が肝になってきます。この記事で紹介した外資勢は、既にこの文脈に沿って新たなサービスやビジネスを構築し、市場を着々と拡大しています。
「新たな価値創造」を行うことで、生活者はサービスに触れ、その結果として企業は生活者のデータを取得することが可能になります。目先の収益だけ追うのではなく、データを継続的に取得するために新しい価値創造をしていく、という発想でビジネス企画をするマーケターが、求められているのです。