大きく遅れている日本のヘルスケア領域のモバイルビジネス
さて、日本におけるヘルスケア領域のモバイルビジネスを見てみましょう。日本においても、iOSおよびGoogle Playの両ストア共に、ヘルスケア・フィットネスのカテゴリーの収益性は大きく成長しています。規模はまだ小さく、カテゴリー全体の収益額を合算しても1ヵ月に2億円にも満たない規模ではありますが、この2年半で単月収益額が4倍に成長しています。

2019年の1月~6月の期間で、大きく収益を得たアプリの上位ランキングは下記です。

iOSもGoogle Playも、TOP10のうち9つのアプリは2018年7月~12月の6ヵ月の収益額よりもプラスに成長しており、様々なジャンルにおいて日本の生活者が健康管理や体調管理等のモバイルサービスにお金を投じる傾向が強まっています。しかし、モバイルで完結する新たな顧客体験を提供する日系のサービスはまだ数も少なく、収益性も相対的に小さいことから、日本企業は大きく後れを取っている状態です。
ウェアラブルデバイスとの連携を必要としない、スマホアプリ単体でサービスを提供することは、生活者にとっては利用を始めるハードルがぐっと下がります。技術的にも新たな価値創造を進め、この領域に早期に着手しなければ、日本企業は大きなチャンスを失うことになります。
生活者のライフログデータが海外に流出するリスク
現在、社会保障制度は運用を維持することが困難なほど超高齢化社会となってきています。一方で人生100年時代と言われており、高齢者も健康寿命をさらに延ばすことが求められてきます。でも、はたしてどうやって健康寿命を延ばすのでしょうか? 人の健康状態は様々であり、個々に効果のある施策は細かく異なります。
筆者は、このデジタル時代において、健康データの取得と活用が重要なポイントを担っていると考えています。スマートフォンが広く浸透し、上述のようにアプリやウェアラブルデバイスによって、生活者のライフログを企業が直接手に入れる環境は既に整っています。
先ほど、ウェアラブルデバイス 対 アプリ単体という構図でお話ししましたが、FitbitもSamsungもXiaomiも、外資系企業です。今後は中国のKEEP、米国のCalm等のモバイルセントリックの企業が日本にビジネスを展開してくることを予想すると、日本人のあらゆるデータ(たとえば体組成データ、アクティビティログ、睡眠データ、食事データ、生活者のSNSの繋がり、さらにはデバイスによっては血中酸素濃度など)が、どんどん海外に流出してしまう可能性が高いとみています。
健康維持、健康管理、健康状態の改善、といった「健康を推進していくための戦略、方針、施策を講じる為に根拠となるデータ」がこの日本に残らないリスクについて、国と企業で真剣に対策を講じる必要があると考えています。