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イベントレポート

リステリン、クラフトボスはTikTokをどう活用した? 2020年はどうなるTikTok Ads

「リステリン ホワイトニング」はテレビを使わず売上+30%の成果

 ジョンソン・エンド・ジョンソンの安藤尚人氏が登壇。マウスウォッシュ製品「リステリン ホワイトニング」におけるTikTok活用事例を紹介した。

 リステリン ホワイトニングは発売2年目を迎え、美容文脈のコミュニケーションで売上を拡大させたいという狙いのもと、20~30代の女性に自分ごと化してもらうためのキャンペーン施策を検討していた。戦略立案の初期段階では、TikTokを使う計画はなかったという。しかし、広告メッセージの届かない人に、「歯が白くなる体験をしてもらいたい、そしてその体験をシェアしてもらいたい」という考えから、TikTokで「歯を白くするフィルター」を使うというアイデアが出てきた。そして、「体験価値」「画像認識・処理技術」「拡散力」といった観点から、TikTokを中心に据えた設計を行うことになった。リステリンとしては、はじめてテレビを使わない大型キャンペーンとなり、いかに売上につなげるかが最重要課題となった。

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 コネクティッド・コマース本部 デジタル&メディア Associate Manager 安藤尚人氏
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
コネクティッド・コマース本部 デジタル&メディア Associate Manager 安藤尚人氏

 歯が白くなるオリジナルのスタンプ「White Magic」を共同開発。オリジナルの歌とダンスで投稿を促していくという設計だ。TikTok内で“お題”と専用のハッシュタグを設け、ユーザーはお題に則った動画を投稿する「#(ハッシュタグ)チャレンジ」も「#白い歯になりたい」をテーマに実施した。2019年7月19日のローンチに先駆け、2日前の17日にはPRイベントも行った。ローンチ時には、TikTokの協力のもとで選定したターゲットと相性のいいインフルエンサー6名による動画も公開された。週末にユーザーによる投稿が増えるという傾向があるため、ローンチは意図的に金曜日に設定した。商品理解や購買促進のため、他のSNSとの連携も含めた立体的な展開も設計された。

 結果として、影響力の高いインフルエンサーのオーガニック投稿にもつながり、そこから2次拡散、3次拡散と拡がっていった。シェアは想定していたKPIよりも約5倍まで伸びた。安藤氏が「さらによかったこと」として挙げるのが、スタンプを使ったユーザーの数が17万人にも上ったことだ。今回のキャンペーンの目的が「体験」にあったため、この数字には驚いたと安藤氏。命題となっていた売上についても+30%の成果を達成した。

 このキャンペーンからの学びは大きく3つあったと安藤氏。まず、「手段」を目的化しないこと。「何をしたいか」を明確にすることが大切だという。そして、TikTokはユーザー主体で「Fun」を生む、創る場所だという前提のもと、勇気を持って広告色を可能な限り薄めること。そして、フェージングを含めて、他施策との連携性を意識することだ。

クラフトボスは初のクリエイティブコンテストを実施

 サントリーにおける事例を紹介したのは、前田真太郎氏。中国のDouyin(中国版TikTok)では、アウトカメラで撮影され、プロの作品と見間違うばかりの凝った編集の施された動画が投稿されていることに前田氏は驚いたそうだ。日本でも公式のクリエイター育成プログラムとなる「Future Talent Program」が2019年の3月にはじまったところだ。

サントリーコミュニケーションズ株式会社 宣伝部 デジタルグループ 前田真太郎氏
サントリーコミュニケーションズ株式会社 宣伝部 デジタルグループ 前田真太郎氏

 一方、サントリーでは「WORK&PEACE」というコンセプトのもと、「クラフトボス」シリーズを展開している。新しいクリエイターを応援するTikTokと、新しい働き方を応援するクラフトボスの理念が一致し、ミルクティーの新発売時にTikTok初のクリエイティブコンテスト(広告動画制作企画)を実施することになった。受賞作品については、実際に広告として採用するというものだ。

 募集内容は、「『すっきり軽やかな味わい』を爽やかな世界観で表現する」というシンプルなものとした。テーマ設定については、前田氏もかなり悩んだそうだ。盛り込む情報を増やすと、動画制作の難易度も高まってしまう。かといってサンプルを出すと、どうしてもそれを真似たものが多くなり、求めていた多様性がなくなってしまう。最終的にはキーワードとトンマナを保つためのイメージ静止画のみを提示する形とした。

 事前告知は、チャレンジバナーやハッシュタグを使った他、TikTokクリエイター向けのDMも打った。また、そもそもクラフトボス ミルクティーが新商品であったため、商品認知を高めるためのインフィード広告も配信した。インフィード広告ではテレビCM素材を使い、コンテスト後のクリエイター作品とのブランドリフト差を検証するという目的もあった。

 結果、430点以上の応募があり、最優秀賞と優秀賞を選出。また、優れた作品が多数寄せられたため、急遽特別賞も追加で設けられた。TikTokにおけるクリエイティブコンテストの実施ははじめてということもあり、応募のハードルが高いのではないかと前田氏は懸念していたが、想定の約4倍の応募が集まった。動画の総再生数も想定の4倍近い数字となった。

 コンテスト開始時に配信したテレビCM素材を使ったインフィード広告と、受賞作品を使ったインフィード広告とで完全視聴率とエンゲージメント率を比べて見ると、どちらも受賞作品を使ったもののほうが2倍から3倍高い結果であった。広告認知と購買意向の調査結果についても、優秀作品のほうがかなり高いリフトとなった。

 前田氏は、コンテスト成功の要因を「施策に対する理念がTikTokとブランドで一致したこと」にあると分析する。コンテスト企画自体はよくあるものだが、ブランド側のメッセージが強調されがちだ。今回は、新たなクリエイターを発掘し、支援するという理念を最後までぶらさずに実施した。それが、応募数と作品の幅につながったのだ。前田氏は、「ユーザーにとってのコンテストの価値を考えることが大事」であると語った。

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2020年度のTikTok Adsのアップデート

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この記事の著者

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/11 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32419

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