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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

モバイルアプリデータから紐解くファクトフルネス

来たる2020年に向けて、拡大するインバウンドビジネスの機会を逃すな

急速に浸透するAirbnbやOYOの動向

 その一方で、民間の宿泊施設を直接利用できるAirbnbや、世界2位のホテルグループにまでなったOYOなど、生活者から見るとモバイルを使って安く便利に宿泊できる手段が急速に浸透しています。App Annieのデータによると、AirbnbとOYOのアプリの利用を他サービスと比較すると、以下のように急激に成長しています。

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 左のグラフはワールドワイドのMAU、右のグラフは1ユーザーあたり1ヵ月あたりのアプリ利用時間です。PC  Web時代からの老舗であるBooking.comが安定してユーザーを伸ばしていますが、Airbnbがその後を追っている構図になります。一方アプリの利用時間はAirbnbやOYOが多く獲得していることがわかります。

 一概に利用時間が多いのが良いということではありませんが、生活者の可処分時間を多く獲得しているということは、旅行の計画における宿泊先の検討に割ける時間を多く獲得しているというです。つまり、これは競合他社サービスの利用を減らしていると解釈できます。

 自社でデータを取得してマーケティングを高度化していくために、経営レベルでの意思決定や投資は中長期の視点で必要です。その一方で、このようなデータを見ると、短期的な収益性の向上のためにも、「どこが勝っているグローバルOTAなのか」をきちんと理解して選定する必要性がわかるでしょう。

 OTA側からの営業資料を元に判断するのではなく、客観的な判断材料を元にプラットフォームを選定する時代になっているのです。なぜならモバイルの市場は変化が非常に早く、PC Web時代の勝者が必ずしもモバイルにおいても勝者であるとは限らないからです。

モバイルを活用してビジネスを加速させるヒント

 モバイルを活用し、自社のビジネスを加速させるには、まず目的の設定をすることが重要です。なんとなく「モバイルを活用して事業を加速」とか「モバイルによるCRMの高度化」を中期経営計画や決算説明資料等で謳っている企業が散見されますが、実際に話を伺うと、具体的に目的を定義している企業は多くはありません。

 モバイルをビジネスに活用するという場合、目的は大きく2つしか存在しません。1つはマネタイズ、つまり「お金を直接稼ぐ」ため。もう1つはマーケティング、つまり「新たな価値を創造し、市場に提供する」ためです。

 MarkeZineの読者のみなさんの多くは、マーケティングへのモバイル活用を進めていく方々かと思います。その目的のためには、既存手法の代替としてモバイルを活用するだけではなく、どんな新たな価値を創造し届けるためにモバイルを活用するのか、を自社なりに定義することが重要です。

 たとえばApp Annieのクライアントには、モバイル活用の目的を「ビジネス構造を変革し、新たな顧客体験を提供すると共に顧客データを取得する」と明確に定義している企業がいます。新たな顧客体験を提供するだけではなく、データを取得する、という点も目的に入れて定義をすることで、何をすればモバイルチャネルでデータが取得できるのか=アプリを起動してもらえるのか、という共通認識の元、UXを設計し改善していくことが可能になります。

 データを取得するために、生活者に好んで利用してもらう価値や体験をモバイルで提供する。そこには短期的な収益を期待しないという経営の理解と投資への意思決定が必須です。モバイルを活用したマーケティングが今後のビジネスや日本経済を支える一つの重要なものになっていくと考えます。

 モバイルは生活に浸透しているが故に、個々人の「自分が使っていないから」、もしくは「使っているから」という思い込みがノイズとして入り込みやすいものです。ファクトベースでモバイルの状況を捉え、データを取得するために顧客体験を高度化する新たな価値創造をしていただくことを期待します。

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この記事の著者

向井 俊介(ムカイ シュンスケ)

App Annie Japan 代表
国内IT企業を経て、世界最大の企業情報企業である米Dun And Bradstreet、外資系ITリサーチ・コンサルティング企業である米Gartnerにてセールス職として様々な業種を横断的に担当し、経営者レベルとのビジネスを推進。App Annieにおいては、15年以上のセールス経験の大...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/12 08:00 https://markezine.jp/article/detail/32505

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