ジャーナリズムから転じてマーケティングへ
西口:年内最後の回になります。今回は、P&G時代の同期でもある日本コカ・コーラの和佐さんを訪ねました。2009年に同社に参画され、マーケティング領域で各カテゴリーを伸ばし、今年の7月にCMOに就任されたんですよね。それ以前も2013年から副社長という立場でしたが、どう変わりましたか?
和佐:忙しいです(笑)。以前と違って、全ブランドのマーケティングの責任者なので、どこを自分で担ってどこを任せるかはいまだに模索中です。
西口:和佐さんはP&G以降、基本ずっとマーケティング畑だったと思いますが、簡単に経歴を聞かせていただけますか?
和佐:僕、元々は新聞記者やジャーナリストになりたくて、同志社大学の新聞学科にいたんです。それが、卒論でジャーナリズムの視点から某ビール会社の大ヒット製品によるV字回復についてまとめたら、マーケティングもおもしろいなと思って。仕事としてどちらの方向に行くか考えて、これからはマーケティングじゃないかと直感して受けたのがP&Gでした。
P&Gには18年在籍しましたが、そのほとんどがマーケティング領域でした。マックスファクターやSK-Ⅱなどの化粧品が長かったですね。最後の3年ほど、ジェネラルマネージャーを務めました。
西口:確か、本社がシンガポールに移るタイミングで退職していましたよね?
和佐:そう、そうしたらリーマンショックが起きて、しばらく空白になっちゃって。趣味を兼ねてゴルフ場経営の会社に入ったのですが、経営資本が変わってやりたいことができなくなり、次の職を探していたところで日本コカ・コーラとご縁があった、という経緯でした。
ぞうきんを絞り尽くした状態にならないようじゃダメ
西口:日本コカ・コーラに入社して以降は、『綾鷹』のV字回復や『ジョージア』の立て直しなど相当の手腕を発揮して、直近ではコカ・コーラ社で初となるアルコール飲料『檸檬堂』がヒットを飛ばしています。
和佐:西口さんもわかると思いますが、マーケターなら2~3年くらいで結果を出せないとダメですよね。その間に自分が出せるものを全部出す、ぞうきんと一緒で絞ってももう何も出てこないくらいにならないと、仕事をしたと言えない。その点では会社も賢いと思います、お茶で成果が出たら「Good Job! 次はコーヒーね!」「次はジュースね!」と、どんどん違うカテゴリーを持つことになった(笑)。『檸檬堂』も、そのあと担当した新規事業部の中から生まれたものです。
西口:ぞうきんね(笑)。P&Gもコカ・コーラ社も外資系で、そのど真ん中でマーケティングを指揮されてきたわけですが、どういう共通点があると思いますか? また、相違点は?
和佐:両社の共通点であり、他社のマーケティング職と違うなと思う点がひとつあって、それは既存のブランドをマーケティングするだけではなく、ブランドを「つくる」仕事だということですね。製品企画の部隊が、元々マーケティング部署内にある。それがすごくユニークだと思います。マーケティングのポジションが100あるとしたら、多分90人は、既にある商品を売っていく仕事を担っているんじゃないかな。
西口:確かに、それは僕もP&Gを出て気づきましたね。
和佐:逆に両社の相違点だと、商材の違いが大きいです。P&Gは“汚れを落としたい”など、何らかの問題解決を目指していますが、飲料はのどの渇きを潤すものの、それなら別に水道水を飲めばいい話で。もっと、飲んだことによるプラスの価値を提示するのがチャレンジになります。