P&Gにおけるマーケティング本部の役割とは
セッションの最初に、クー・マーケティング・カンパニーの音部大輔氏からP&Gがどのような企業なのかについての説明がなされた。同社は65ものリーディングブランド(カテゴリーのトップ3に入るようなブランド)を180の国と地域に展開し、純売上高は650億ドル、日本円にして約7兆円を誇る。
また、P&Gの大きな特徴と言えるのがブランド単位でオペレーションをしている点。今回登壇した岡田久雄氏もシンガポールで新規ブランドの参入に携わっており、瀬戸温夫氏も日本でパンパースのアソシエイトブランドディレクターを務めている。
続いて、P&Gにおけるマーケティング本部の役割・立ち位置について、現P&G社員である2人が説明した。
先述の通り、P&Gはブランド単位でオペレーションを行っており、マーケティングの組織もブランド単位で存在する。ブランドマネージャーは他の部署と連携しながら、戦略を立てていくという。瀬戸氏はP&Gに入った初日に「今日からお前はリーダーだ」と言われたという。
また、岡田氏によれば「P&Gにおけるマーケティングは広告領域だけを指さない」という。経営×ブランドマーケティングという軸のもと、売上・利益・ユーザー数・ブランドエクイティをKPIとして追っていく。そして、各施策がどの数字に影響しているのかは日報や週報を通じてレビューしている。
現P&Gの2人の話を受け、音部氏も自身のP&G時代を振り返り独自のカルチャーがあることを明らかにした。
「P&Gでは、正面の上司が何を思っているかは関係ありません。議論する言語もネイティブではない英語なので、忖度も発生しない。そのため、データをもとにしたロジックが求められるのです」(音部氏)
加えて音部氏は、「売上や消費者に関するデータやログデータと真摯に向き合う文化がある」とも述べた。
Consumer is Bossを徹底
続いて、2人が関わったプロジェクトの中で成功した事例が紹介された。
まず、瀬戸氏が紹介したのはパンパースに関する事例。瀬戸氏がP&Gに入る少し前は、同ブランドの売上は厳しい状況だった。そして同社が目を付けたのが、プレミアム価格帯の展開の強化だ。
瀬戸氏はプレミアム価格帯のオムツ市場のグラフを見せ、5年間で売上が10倍近くになっていることを説明。日本は少子化が進んでおり、ただシェアを奪い合っているだけでは苦しい。そこで、プレミアム価格帯の市場に飛び込み、新たな市場を見出し創造していったという。
そして、瀬戸氏は取り組みのポイントとしてP&Gのスローガンでもある「Consumer is Boss」について話した。
「誰々が言っているから提案をするのではなく、消費者が本当に必要としているかどうかを判断の軸としています。そして、組織としても消費者求めているものに投資をするのが、P&Gのすごい点だと思います」(瀬戸氏)