商品・ブランドが多すぎるからこそSNSを駆使する
コスメ垢による購入したコスメに関するTwitter投稿を見てみると、購入した商品を手に取り、多くのポイントを抑えながら評価をしていることが伺えます。たとえばファンデーションやリップの場合。化粧をした時の状態を保つための「キープ力」はもちろん、自分の肌の色に馴染む「色味」か、素肌に極力ダメージを与えないための「保湿成分」を含んでいるか、日常的に使用するので「価格帯」がいくらくらいか? など。これらの検討材料を、スウォッチ(色見本)を自分の腕に試用することで判断し、その結果を投稿しています。
筆者はこれらの商品の性能や自分の肌に合うか? という相性を、コスメの機能的価値と呼んでいます。一方で、コスメ垢がコスメを評価する指標は、この機能的価値だけではありません。「毎日使うものだからこそ、それを使う瞬間はより特別なものであってほしい!」というコスメの心理的価値もとても重要です。パッケージが可愛いか、自分が大好きなセレブリティが愛用しているか、広告上のコミュニケーションは自分のコスメ利用の欲求を満たす世界観になっているか? これら心理的価値も幾多あるコスメの中からひとつを手に取る時の重要な指標です。
このように、自分にぴったりのコスメを選ぶために、商品・ブランドごとの機能的価値、心理的価値を知らなければならないのですが、これを実際に自分で利用し比較検討するには商品・ブランドが多過ぎることがコスメ垢にとっての課題です。現代人には個人でこれを達成するための時間も経済的も余裕がありません。コスメ垢はこれを解決するために、SNSを駆使しているのです。
知りたい情報を効率的に収集できるコミュニティを形成
以下に、コスメ垢のTwitter タイムラインから特定の1週間を抜き取った、コスメにまつわるジャーニーの例を2種類お見せします。これらをいくつか見ることで、具体的にどのようにコスメ垢が自分の欲しいコスメ情報を収集しているかを把握することができます。
まずは1つめ。これは1日におけるコスメ情報収集の深度、頻度の大きい、かなりディープなコスメ垢の行動です。

ディープなコスメ垢は、コスメに関する投稿を週に何度も投稿したり、RTをすることを継続しています。そして、その情報収集元も、昨今TwitterやInstagramでトレンドとなっているスクショメディアや、コスメの廃盤情報を投稿するアカウントなど、通ならではの情報源であることが伺えます。
それらの情報源のユニークネスも去る事ながら、より注視すべき行動は彼女たちが質問サイトやLINEオープンチャットを用いて、少数に向けて自分の知るコスメ情報を無料で積極的に発信しているということです。コスメ通であることに加えて、SNS利用のリテラシーも非常に高いコスメ垢は、自分たちで少数精鋭のコスメコミュニティを運営することで、自分にとってより有益なコスメ情報を入手することを実現していることが伺えます。
次に、1週間のコスメ情報に関する投稿が2〜3回程度の、もう少しライトなコスメ垢を見てみましょう。

コスメに限らず、ネイルサロンで自分磨きをする様子や、セレブの体型キープ術についての投稿など投稿ジャンルはディープなコスメ垢よりも幅広いです。しかし、雑誌の付録に付いていたコスメの利用レビューを投稿するなど、コスメ垢ならではの検証〜共有のプロセスを踏んでいることがわかりました。
このように、コスメ垢にはこだわりの深度に関わらず、使用したコスメの感想をSNS上で公開する傾向が強いことが伺えます。ひょっとすると、自分からも積極的にコスメ情報を発信することで、そのコスメ情報に反応をする別のコスメ垢からのフォローを獲得することができるのかもしれません。すると、似たようなコスメ情報に反応をするコスメ垢群が自分のアカウントの周りに形成され、自分の知りたい情報を効率的に収集できるコミュニティを生み出すことができるという構造があるのではないでしょうか。