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“意味のイノベーション”で問い直す、生活者との関係性

多様化する生活者の価値観に、マーケターは追いついているか 突破口は議論ではなく「対話」にあり

価値観の形成に必要な「対話」とは

 企業が、組織としての、あるいはチームとしての価値観を問い直すために大切になるのが、対話(Dialogue)のアプローチです。対話は、議論(Discussion)と違い、良し悪しの判断をすることを一旦留め、チームや組織を構成する個人がそれぞれどんな想いや価値観を持っているのか、お互いに開示し探りあうプロセスを通じて、共通のまなざしを形成しようとする手法を指します。そのため、それぞれの考えの背景にあるものを探ることが重要になります。

 対話は、意見の対立を乗り越えるために活用されることが多い方法ですが、新しいビジョンを探っていくポジティブな場面でも用いることができます。誰かの考えが合っていて、誰かの考えが間違いである、ということではなく、じっくりと話を聞き、問いを投げかけ、それぞれの考えの背景にあるものを探りあうことで、より新しい共通の理解や前提(Shared Assumptions)が形作られていくのです。

 対話を行う上で重要なのは、まず判断を留保すること。既存の価値観をベースに良し悪しを判断していては、新しい価値観を生み出すことはなかなかできません。革新的な商品を作ろうとしているのに、もしくはそうした商品をプロモーションしようとしているのに、そのアイデアを今までの価値観で評価してしまってはいないでしょうか? 大切なのは、まず新しい価値観について、チームの中で対話することです。

図2:対話と議論のプロセスの違い(関連リンクの参考記事を基に、筆者作成)
図:対話と議論のプロセスの違い(関連リンクの参考記事を基に、筆者作成)

リサーチデータを活用して、対話を引き出す

 マーケティングチームがより具体的な共通理解を形成していく手段の一つが、リサーチデータを活用し、対話を広げていくことです。

 リサーチデータは、市場の動向を読み解いたり、消費者のインサイトを掴んだり、商品の受容性を探ったりと、いわゆる「正解探し」を目的に利用されることが多いものです。その場合、データが示す解釈は一義的であることが求められ、その解釈を根拠にマーケティングのプロセスが進行していきます。

 しかしながら、リサーチデータは今の生活者の声を示すもの。失敗することを恐れ、正しい答えばかりを探していても、生活者が驚くようなギフトを届けることはできません。これはデータのあり方の問題というよりも、データと向き合うマーケターの姿勢の問題です。失敗することを恐れて正解探しばかりしていては、作り手側の中にオリジナリティは生まれてきません。

 新しい驚きを実現するような、企業のオリジナリティを見出すためには、リサーチデータを用いながら、その意味や解釈の背後にある考え方について語り合うことが重要です。

 たとえばデータを見ながら、「データに示されていないような糸口はないか」「このデータが生まれた背景に存在している想いは何か」「データが指し示すような人たちに対して、私たちは何を届けたいのか」などを話し合ってみる。これを繰り返す中で、自分たちならではの価値観やまなざし、それを形容する「言葉」が生まれてきます。

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対話を通じて形成される「言葉」を大切にする

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この記事の著者

小田 裕和(オダ ヒロカズ)

株式会社ミミクリデザイン ディレクター/デザインリサーチャー。東京大学大学院 情報学環 特任研究員。千葉工業大学大学院工学研究科博士課程修了。 博士(工学)。千葉県出身。新たな価値を創り出すための、意味のイノベーションやデザイン思考といったデザインの方法論や、そのための教育と実践のあり方について研究を行なっている。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/30 08:00 https://markezine.jp/article/detail/32745

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