関与度と文脈をどう見つけ出すか?
実際にこのような手法でファンとコミュニケーションをしていく場合、そもそも自社のファンがどのような「関与度」と「文脈」を持っているかを把握することがポイントになる。この「関与度」と「文脈」の見つけ方は、ブランドによって様々と言える。
中でも取り組みやすいのは、自社のブランドに関連する口コミを定性的に分析していくことだ。たとえばInstagramやTwitterといったSNSは、ファンのインサイトを紐解くのに多くのヒントを提供してくれる。
自社のブランドに関連する口コミにどんなハッシュタグが付いているかは、多くのブランド担当者が把握していることだろう。しかし、自社に関連する口コミに書かれているハッシュタグと一緒に、どのようなハッシュタグが書かれているかについては、意外と見逃してしまいがちだ。
それらの関連ハッシュタグをある程度の量分析していくことで、投稿してくれているファンがどのような文脈でブランドに関心を抱いてくれているかがわかるだけでなく、競合他社と比較してみると、自社の独自性としてどのような文脈が存在しているかも明らかにすることができる。もちろんブランドの性質にもよるが、ブランドに関連する直近の投稿を100投稿程度分析してみるだけでも、ファンの持つ文脈を掴むことができるだろう。
また口コミだけに限らず、ミートアップなどを通してファンに直接会ったり、ファンへの個別インタビューを行ったりすることで、関与度と文脈を理解することもできる。ファンにとって、そのブランドへの関心軸は必ずしもひとつではない。ファンがどんな楽しみ方をしているのかという視点で理解を深めていくことで、関与度と文脈を把握することができ、さらにはファンが関心を持って集まってくれる場、つまりコミュニティを設計する際の仮説を立てることができる。
コミュニティはファンによる自律分散型へ
コミュニティは一歩間違えると、企業が主導し、ファンを管理するための便利な「囲い込みツール」になってしまう。そうなるとファンにとってのコミュニティの価値と企業にとってのコミュニティの価値に差が生まれ、ファンが離れていってしまう。これは第1回の記事でもお伝えした通りだ。
自社ブランドのファンを生み出し、様々なファンとの関わりを増やしていくためには、コミュニティを企業とファンとの個別の関わりの場として広義に捉えていく必要がある。そのときに欠かせないのが、ファンの「関与度」と「文脈」を尊重することだ。
同時に、オンラインなどで会話できる場だけが、必ずしもコミュニティとは限らない。リアルな場も含め、より広く接点を設計していくことによって、企業とファンにとって欠かせない場に発展させることが可能になる。
第2回のまとめ
・コミュニティが拡大するにつれ、ファン同士の対話が成り立たず、衰退してしまうことがある。
・必要なのは「関与度」と「文脈」を整理し、合わせること。コミュニティを分けるのも一案。
・ファンの持つ文脈を見つけ出すには、口コミ分析やインタビューが有効。