Twitterで若年層へのリーチとユーザーの声の創出を
MarkeZine編集部(以下、MZ):イオンのTwitterアカウントは2015年10月に開設されたそうですが、普段はどのような運用を行っていますか。
松本:イオンのプライベートブランド「トップバリュ」では毎月のように新商品が出るので、その紹介を行う他、クリスマスやお正月、ゴールデンウィークといったシーズンごとのイベント情報を発信しています。
我々のお客様は40代の主婦の方が多いため、接点の少ない若年層の方へのアプローチを強化するべくTwitterを活用しています。また、主婦の方に向けても忙しく時間がなくても簡単に情報収集ができたり、商品情報を端的に理解したりしてもらえるようなツイートを日々考え、ツイートしております。
MZ:今回Twitterで「トップバリュ」の新ジャンル「バーリアル」のキャンペーンを行ったと聞いています。どのような課題からキャンペーン実施に至ったのでしょうか。
松本:課題としてあったのは、「トップバリュ」というブランド自体の認知はすごく高いのに対し、個々の商品についての認知が少し弱いという点です。
また、イオンの店舗にはこれまで、結婚したり子供が生まれたりした方の来店頻度が高くなる傾向があったのですが、近年20代から30代の方との接触頻度が低くなかなかイオンの商品やサービスの情報を伝えられていませんでした。そのため、結婚や出産を経ても店舗にいらしていただけないことも増えていました。
そうした若年層の方々にキャンペーンをきっかけに店舗へ来ていただいて、商品を試していただき、「バーリアル」の良さを知ってもらいたいという目的もありました。
Twitterは第三者からの評判が伝わるプラットフォーム
MZ:たくさんある「トップバリュ」の商品の中で、「バーリアル」をキャンペーン対象商品としたのはなぜでしょうか。
松本:「バーリアル」は、大手ビール飲料メーカーによる国内製造で品質がとても高く、1本78円と低価格も実現しています。我々としても自信のある商品なのですが、まだ試していただいていないお客様もいらっしゃるので、まずは多くの方に一度飲んでいただきたいという思いがありました。
MZ:キャンペーンの場としてTwitterを選ばれたのはなぜでしょうか。
松本:ネット上には「『トップバリュ』商品の品質が悪いのではないか」という印象を持たれている方もいて、それを払拭したいのが大きかったですね。アンケート調査をしてみて驚いたのですが、特に「バーリアル」に関しては「価格が安すぎて逆に不安」だと感じる方もいらっしゃいました。
今は広告の信頼度が落ち、企業が発信する情報があまり信頼されなくなっています。そのため、「我々が良い商品です」と伝えるのではなく、第三者から商品の良さが伝わるようにしたいと思い、Twitterをキャンペーンのプラットフォームとして選択しました。
商品の特徴が伝わるフォロー&RTキャンペーンに
MZ:具体的には、どのようなキャンペーンを行ったのでしょうか。
松本:2019年12月9日〜18日のキャンペーン期間中に、Twitterでイオン公式アカウント(@AEON_JAPAN)をフォローし、キャンペーンツイートをリツイートしてくれた方から毎日抽選で2,000名、10日間で合計20,000名に「バーリアル」の引換券が当たるというものでした。
高価なものが数名に当たるよりは、毎日多くの当選者が出る設計にすることで、「自分も当たるかもしれない」と思わせて参加のハードルを下げることを意識しました。
MZ:キャンペーンツイートには動画が入っていますね。こちらは、テレビCMの素材ですか。
松本:ツイート内の動画は、テレビCM用の素材に少し編集を加えたものになります。「バーリアル」が国内大手メーカーの製造でありながら価格が78円であること、累計20億本売れていることを特徴として訴求しました。
また、動画を見ずともキャンペーン内容が伝わるよう、動画の上下に説明の文字を表示しておく工夫も施しました。また、店頭にあるサイネージでも、Twitterでフォロー&リツイートキャンペーンを行っていることを発信し、店頭との連動も意識しました。
想定以上の好意的なツイートが集まる結果に
MZ:キャンペーンに当選して「バーリアル」を飲んだ方のツイートも見られましたね。
松本:一度飲んでいただければ、今までバーリアルを知らなかった、あまり期待していなかったというお客様にも「美味しい」とツイートをしていただけると思っていましたが、想定以上にツイートが集まって良かったです。
また、感想をツイートする際には「 #バーリアルでせんべろ 」(せんべろとは、1,000円でべろべろになるほど酔える価格帯の居酒屋などのこと)というタグをつけていただくようにしました。このタグによって、イオンで「バーリアル」と合わせて食べ物を買うことを想起させることを意識していました。実際「バーリアル」だけでなくご飯やおつまみと一緒に写真を撮ってツイートされている方も多かったです。
松本:そして何より、ツイートの多くが好意的な内容でした。キャンペーンに参加はしていない方にも、キャンペーン参加者のツイートを見て「バーリアル」を知っていただけたり、良い評判が届いたりするのは、Twitterを活用して一番良かったところですね。
若年層の購買が増加、新規顧客を獲得
MZ:キャンペーンを行ったことで、どのような成果が得られましたか。
松本:まず、新規顧客が増えました。インテージの協力のもと行ったパネル調査によると、キャンペーンを告知する動画を視聴した人の購入意向が増加していました。安さと美味しさが強みだということが伝わると、購入意向が増えるという調査結果も出ました。
また、キャンペーン期間中はTwitter内の「バーリアル」に関する会話が増え、先ほどもお伝えしましたがその内容のほとんどがとても好意的なものでした。中には「バーリアル」の熱烈なファンの方もいて、そうした方が勧めてくれたのがとてもありがたかったです。
MZ:若年層へのリーチという点でも効果は出ましたか。
松本:主に20〜30代に、Twitterキャンペーンに接触した人の購買のリフトが見られました。これは仮説ですが、ビールは嗜好品なので、40代以上の世代はすでに気に入った銘柄が決まっていて、キャンペーンに触れてもなかなかブランドスイッチが起こりづらいのではないのではないかと思います。
しかし20〜30代の方はまだ飲む銘柄が固まっていないことも多く、「バーリアル」を試していただきやすく、飲んでいただくことでブランディングにもなっていくのではないかと思いました。
オンラインとオフラインの連携強化を
MZ:キャンペーンを通じて得られたことについてお聞かせください。
松本:今回はテレビCMを流した2ヵ月後くらいにTwitterのキャンペーンを行ったのですが、ここまで会話が増えるという結果が出るなら、同時期に行えばより大きな効果が出たのではないかと思いました。
今後はそういったオフラインとオンラインを連携した施策も積極的に試していきたいです。自社商品と実店舗の両方を持ち合わせていることが我々の強みでもあるので。
また、PRイベントやテレビCMだと商品より出演したタレントさんのほうが話題になってしまう、話題になっても瞬間的で持続しない、といったケースもありますが、今回のキャンペーンは商品自体がフォーカスされて、そこから会話が生まれたのが非常に良かったです。
MZ:今後、Twitterはどのように活用したいですか。
松本:Twitterではキャンペーン終了後もある程度の情報が広がり、ファンが広がっていくということがわかったので、その点を踏まえた設計を行いたいです。
また、Twitterにはお客様の本音がたくさんツイートされています。そうした声をたとえば広告クリエイティブや店頭、テレビCMに使うこともできるかもしれません。そのようなオンラインとオフラインをつなぐ役割として今後Twitterを活用していきたいです。