国内R&D、生産、サポートを約束する証
――テレビCMも出稿されたそうで、その見込み効果や広告費全体のアロケーションもかなり検討されたのでは?
土田:そうですね。そもそもテレビCMは10年以上使っておらず、知見もほぼない状態でしたが、当社の法人ビジネスは約95%がパートナーさん経由で、大都市圏ではない地方のエンドユーザーの方々にきめ細かに対応いただいています。そうした方々には、やはり今でもテレビCMが強いんですね。そこで、投資額とリターンを緻密に計算し、1年ほどで回収する前提で出稿しました。アロケーションについては、既存の刈り取りのための予算などは圧縮せず、一連のキャンペーン分はデビットから上長に掛け合い、プラスαで獲得してもらいました(笑)。
――なるほど、心強いですね(笑)。メッセージについては?
土田:キャッチフレーズとしては「日本のビジネスを、Lenovoが加速する。」と銘打ち、また日本でのR&Dから生産、サポートまでを担保する“約束”の印として「JAPAN MADE & SUPPORT」のステッカーを制作し、すべての製品に貼っていきます。“JAPANMADE”とは、実は文法的には誤りで“Made in Japan”が正しいのですが、それだと当社が伝えたいニュアンスが伝わらないと考えて、あえて和製造語を採用しています。これも、日本文化とニュアンスをよく理解しているデビットがグローバルに掛け合って承認に漕ぎつけました。

――主目的は認知獲得だったとのことですが、手応えは?
ベネット:エンドユーザーの方々だけでなく、パートナーの販売代理店さんから想定以上の反響がありました。もちろん、パートナー企業も今回の認知ターゲットとして捉えていましたが、「こういうキャンペーンをやってくれてよかった」といった声から、パートナー企業からもレノボの認知拡大を期待されていたのだと実感しました。パートナー企業の事業促進にもつながったと手応えがありますね。同時に、今までは「Think Pad」というブランドの知名度に頼っていた部分があったと反省もあります。
土田:マーケティングのパーチェスファネルには、アウェアネス(認知)、コンシダレーション(検討)、プリファレンス(選好)という段階がありますが、国内R&Dから生産、サポートまでの一貫した体制はコンシダレーションとプリファレンスの向上には貢献するものの、そもそも知っていただけないとそうした効果も得られません。なので今回はアウェアネスを最大化し、その後につなげたい狙いがありました。

課題解決のためにはセグメンテーションが重要
――今、SaaSの時代を迎え、物質的なモノであっても“使ってもらって初めて価値が出る”というサービスとしての捉え方や訴求が模索されていると思います。その点についてどうお考えですか?
ベネット:いい質問ですね、今はソリューションの時代であると私も感じています。当社としては2つの考えがあります。ひとつは、やはり製品のクオリティがサービスやソリューションの基盤になるということ。それは昔も今も変わらず当社が追求していることです。もうひとつはおっしゃるとおり、顧客が使って満足いただける状態にフォーカスする必要があると考え、策を進めています。
たとえば働き方改革の流れで、LTEが使えるテレワークに適したモデルを増やしたり、デザイナーなどのクリエイターが使いやすいスペックのモデルも拡大したりしています。レノボのPCで顧客の課題解決を目指すなら、ユーザーのセグメンテーションが非常に重要ですね。加えて、キーボードの打ちやすさや、視線がPCにない間はAIの働きで自動で電源をセーブするなど、使って初めてわかる機能はたくさん搭載しています。……ただ、これらは逆に使わないと実感しにくいので、訴求の仕方は課題ですね。
――最後に、今回の一連の変革を経て、顧客とどのような関係を築きたいかをうかがえますか?
ベネット:シンプルにいうと、「レノボはクオリティが高い」と思っていただける存在でありたいです。クオリティという言葉には、安心感や信頼感も含まれると考えています。私たちは本気で日本のユーザーのことを考え、CXが最大限に快適になるよう今後も努力していきます。
土田:CX重視の考えを生産体制含めて体現し、せっかく日本独自のメッセージでコミュニケーションを始めたので、今後もこの効果を一過性のもので終わらせず、継続的に投資して認知を広げていきたいです。その先に、よりファンになっていただける状態を目指したいですね。
