データ分析が顧客育成の土壌を整えた
デジタル化にあたって、Jリーグが共通の仕組みとして用意する「JリーグID」を利用した。JリーグIDはJリーグが2017年にチケット販売で導入した仕組みで、個人がIDを持つため、誰がどの試合で何枚買ったのか、電子チケットにより実際に来場したのかなどの追跡が可能になる。
「お客様の行動を把握できるようになったことで、それぞれのお客様に合わせた施策が打てるようになる」と竹井氏。チームのスポンサーでもあるパナソニックの協力を得て、顧客の属性、行動の特徴などを把握し、それをイベントやSNSでの広告に活用できるようにしていったという。

ガンバ大阪は集客コンセプトとして「顧客育成」を掲げている。集客数を増やすと同時に、来場回数を増やすという考え方だ。デジタル化により、顧客数と来場回数の把握が可能になることで、顧客育成を進める土壌が整った。
また顧客の属性や行動の可視化により、「ホームタウン担当、チケット担当、ファンクラブ担当それぞれの役割が明確になった」と竹井氏は強調した。
チームの「意識」を変えた見える化
新規来場者獲得を最大のミッションとするホームタウン担当は、地域の人との接点を作り、ガンバの応援に行ってみようというきっかけ作りをする。チケット担当は、一度来てもらった人を2回、3回とリピートして「定着化」、あるいは一昨年前に来場したが昨年は来場がなかった離脱者の復活に取り組む。ファンクラブ担当は年17回のリーグ戦にできるだけきてもらえるようにして年間席の購入を図る、というのがそれぞれの役割だ。
役割が明確になると、「ほとんど毎試合きてもらえるようなファンを育成する」を共通目標に、部門間の連携が進むようになった。「デジタル化により、目標設定と目標に対する効果が見えるようになった。それぞれのミッションがあるが、連携により自分の仕事の前の工程、後ろの工程が出てくる。それぞれの仕事をきちんとすることにより、前後の工程の人がより成果を上げられる。組織だけでなく、意識も変わったことは、デジタル化で取り組むことができた大きな変化」と竹井氏は振り返る。

そして、「単に取り組んだだけではなく、取り組みがよかったことを来場者数が対昨年比118%増という数字で表すことができた」と続けた。