「実名か、匿名か」を問わずに温度感を測っていく
最初のステップの「顧客を深く知る」部分をさらに深掘りすると、そこで必要なデータはリアルな飲食店の例と同様に、デジタルでも行動データと会話データの2つがある。
「SYNALIO」で行動データを把握して客観的な温度感や距離感をつかみ、チャットボット機能を活用して取得できる会話データからユーザーの背景をつかんで、双方を掛け合わせると、非常に具体的なニーズが浮かび上がってくる。
たとえば、ユーザーAは「広告から流入してサイト訪問2回目で商品ページを閲覧しており、目的は男性向けのプレゼント探しで予算は3万円以内」といった具合だ。ここまでニーズをつかむのは、行動データからだけでは到底できない。
この手法の強みは、まだ既存顧客としてリスト化していない匿名顧客であっても、しっかりと可視化して最適な提案ができる点だ。大熊氏は、複数の企業のマーケティングを支援する中で昨今浮かび上がっている課題として「ユーザーの多様化/ファネルの複雑化/実名顧客の曖昧化」の3点を挙げる。
「いずれの事象も、誰が有力な潜在顧客なのか、どの段階で実名化を獲得できるのかの判別を難しくしています。ですが、もし匿名の状態であってもしっかりニーズをつかめて精度の高い提案ができれば、実は“実名か、匿名か”は問題ではないんです。
購入したいユーザーなのかどうか、その温度感を測ることをすべてのユーザーに対して行っていくこと。そして当然、昨今の潮流ではそれをCookieに依存せず可能にすることが、今後のマーケティングでは大事だと思っています」(大熊氏)
トーク画面でクロージングする「SYNALIO for LINE」
それを実現する技術が、ギブリーが提示するConversation Techであり、ソリューションとしての「SYNALIO」なのだ。仮に初回訪問の顧客であっても、適切なヒアリングによってユーザーのニーズを可視化し、1to1のアプローチを通してCVへとつなげるという、チャットボットを補助的なユーザーサポートではなくマーケティングツールとして機能する。
セグメントごとに最適な会話を展開し、すべてのサイト訪問者の行動データと会話データを取得するので、 (1)データの取得、(2)ユーザーの検討度や温度感の分析、(3)それを踏まえた会話やポップアップなどのマーケティング活用、という好循環を回していくことができる。「Webサイトに、優秀な営業パーソンを一人置いておくことができるような感覚」と大熊氏。各クライアントに対し、平均して4~5会話はユーザーごとに分岐する設計を組んでいるという。
Webサイト上での“会話”を通したニーズの可視化をベースにスタートした「SYNALIO」だが、現在ではネット広告からのランディングページ、そしてLINE公式アカウントまで守備範囲を広げている。「SYNALIO for LINE」では、LINE公式アカウントのトーク画面の下部パネル部、リッチメニューに質問を表示してトーク画面でそのまま会話を進め、スムーズにクロージングまで誘導する。
「この過程で、会員か非会員か、どのようなニーズがあるのかなどを基にセグメントに分け、以後はセグメントごとにリッチメニューや質問、プッシュ通知を出し分けていくことができます」(大熊氏)
生活者は今後ますます多くの時間をデジタル上で過ごすことになる。「そのとき、双方向のやり取りによって創出できる上質なおもてなしは、体験的価値の向上に直結する大切な要素」と大熊氏は強調する。デジタル上で実現可能な1to1マーケティングの形は、日々進化する。それを常にアップデートすることが、より上質なコミュニケーションの実現に欠かせないだろう。