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売上よりもファンの声を重要指標に関係性をじっくり育む 西武ライオンズのマーケティング

2020/04/24 13:45

 CookieIDによる高精度のターゲティング広告は、デジタルマーケティングの成長を後押しし、企業の新規顧客獲得に大きく貢献してきた。しかしCookie利用の制限を受けて、マーケティング戦略、とりわけ既存顧客との関係性作りを見直していく必要が生じている。本稿では、ファンファーストの姿勢を10年以上貫き、取り組みを続けてきた西武ライオンズの吉田康治氏にインタビュー。試行錯誤してきたCRM運用とそこから見えたインサイトのロイヤル施策への落とし込み、そしてオフラインとデジタル施策それぞれの役割についてうかがう。

目次

※本記事は、2020年4月25日刊行の定期誌『MarkeZine』52号に掲載したものです。

CRM運用で見えた、顧客主導型マネジメントの重要性

株式会社西武ライオンズ 事業部 部長 吉田康治(よしだ・こうじ)氏
慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科在学中のインターンシップを経て、2008年に西武ライオンズに入社。以降、CRMの導入・運用から、デジタルチケッティングの採用やスマートスタジアム化の取り組みなど、同社のマーケティング全般に関わる。

――西武ライオンズ(以下、ライオンズ)は、デジタルチケットの導入やスマートスタジアム化など、様々なデジタル施策を展開されています。そのベースとなるCRMをスタートしたのは、2008年とうかがいました。CRMの運用を10年以上続けてこられた中で、マーケティング戦略にはどのような変化が生じたのでしょうか。

 私たちライオンズは、観客動員数が落ち込んだ2007年の低迷シーズンをきっかけに、マーケティングの軸として、ファンクラブ(西武ライオンズ友の会が前身)の会員基盤をベースとしたCRMの取り組みをはじめました。

 CRM導入後の10年で、顧客情報の管理に対する姿勢が少しずつ変わってきました。導入初期は、企業主導で顧客のニーズを推測しながら関係性を管理していくCRM(Customer Relationship Management)の考えを基本としておりましたが、顧客が主体となり企業との関係性を管理・構築していく考え方である、CMR(Customer Management of Relationships)へと少しずつ変わってきました(図表1)。

図表1 CRMからCMRへ(タップで画像拡大)
図表1 CRMからCMRへ(タップで画像拡大)

 私たちにとってそれは、ファンのことを第一に考えた球団作り、サービスの提供を指すものであり、そのほうが当社のマーケティングには適していると考えたためです。

 具体的には、球場へ年一回以上足を運んでくださった方を“アクティブ会員”と定義し、その来場者数を増やしていく施策を行っています。

 来場者からの収益構造の基本は、来場者数×購入回数×購入単価です。来場いただける試合数や購入回数、単価には上限がありますから、ユニークユーザーを増やし、球場キャパシティに対する観客動員数からなる、球場の稼働率を高めることが第一と考えています。昨今、球場外収入としてグッズの通販や動画配信なども注目されていますが、それらも熱心なファンがいてこそ成り立つもの。まずは観客動員数を増やし、ファンクラブへの加入やアクティブ会員を増やすことが最優先です。

 様々な取り組みの結果、この10年で、観客動員数は141.3万人(2008年)から182.1万人(2019年)と成長し、アクティブ会員数も、昨年実績ではファンクラブ会員数11万8,000人に対して8万5,000人を記録、2008年に比べ87%増加しました(図表2)。

図表2 アクティブ会員数の推移(タップで画像拡大)
図表2 アクティブ会員数の推移(タップで画像拡大)

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