楽天→BICP DATAの代表へ、その決め手は?
野崎:6年間3PASのスペシャリストとして活躍してきた渡邉さんですが、2016年には楽天に転職していますね。その理由を教えてください。
渡邉:3PASの持つテクノロジーの限界を感じたからですね。サードパーティーデータを駆使した技術ではできることが限られると思う場面が増えました。その中で、ファーストパーティーデータの活用に関心を持つようになりました。そのデータを大量に保有する企業に行きたいと考えていた中で、ご縁があったのが楽天でした。

野崎:渡邉さんは、新たなテクノロジー、やりたいことのある企業へヤドカリのように住み処を移していくスタイルの転職をしていますね。楽天もやりたいことのできる会社だったと思うのですが、その中でなぜBICP DATAの代表になったのでしょうか。
渡邉:きっかけは、BICPの代表である菅さんからお誘いを受けたことです。ただ、当時は産休明けから2ヵ月経ち、保育園もやっと見つかったタイミングで、まだ子供優先だから難しいと思っていました。
しかし、「もしここで挑戦しても死なない」「会社が守ってくれる環境で成長カーブを鈍化させるより、10年後息子に誇れる仕事をしたほうがハッピー」だと転職したい思いが強くなりました。菅さんは非常に信頼できる人だったこともあり、最終的には代表に就任することを決めました。
デジマから抜け出して更なる成長
野崎:年齢を重ねると意思決定が慎重になりがちですが、フットワークを軽く動けるのが渡邉さんらしくていいですね。BICP DATAの代表になって、成長カーブは変化しましたか。
渡邉:変化しましたね。これまではデジタルマーケティングの領域内でいいテクノロジーを見つけて、それで課題解決につながる提案をしていました。でも、それで得られるリターンって、企業活動における数パーセントのインパクトしかないことに、今の立場になって気づくことができました。
また、データやデジタルを軸にした提案をしていると、情報システム部や法務部など、様々な部署との折衝も多くなります。これまでは打ち手の一部でしたが、事業会社のデータにおける困りごとを俯瞰して見ることができるので、大きな成長につながっていると感じています。
野崎:データを軸に、組織戦略まで入り込んでいるからこその学びですね。しかしながら、育休明け間もないタイミングでの代表就任ということもあり、仕事と子育ての両立は大変ではありませんでしたか。
渡邉:現在進行形で、めちゃくちゃ大変ですね(笑)。だからといって、育児のせいで仕事をあきらめる必要はないと思っています。
子供といる時間が短くともその時間の質を上げたほうが、子供にとっても自分自身にとってもいいし、子育てする上では重要だと考えています。毎日、仕事終わりに保育園にお迎えに行くときに、「もうすぐ息子に会える、うれしいなぁ!」と心から思います。そんな気持ちでお迎えをするので、その後の息子とのコミュニケーションも、自然と愛情に溢れたものになります。
野崎:仕事でも交渉力や提案力を磨いてきた中で、子供に対しても質の高いコミュニケーションを求めているのかもしれませんね。
では、最後に今後のキャリアにおける展望を聞かせてください。
渡邉:もっとBICP DATAの組織を大きくして、多くの企業にサービスを提供していきたいですね。今の仕事は必要なものですが、その必要性がまだ認識されていない部分があるので。ただ、元々そんなに先のことは考えず、今面白ければいい、という考えがありました。
野崎:確かに、これまでのキャリアを見ても瞬間瞬間でおもしろいことに飛びついている印象がありますね。
渡邉:でも、息子が生まれたあとに、10年後、20年後、30年後というスパンで物事を考えるようになりました。「自分が楽しればよい」から「社会にとって役に立つ仕事をしたい」という気持ちに変化しました。
そして、経営者というのは、自分の選択でそれが実現できるのだな、とも思うようになりました。自分自身の向き不向きでいうと、伝道師気質があると思っていて、自分がいいと思ったものを広く伝えていく仕事があっていると思っています。データ戦略という枠組みの中でいいと思ったことを先陣切って今後も広めていきたいです。そのためにBICP DATAのメンバーと協力して具体的に何をすべきかを話し合います。
野崎:ありがとうございました。キャリア面談をしていると「将来のビジョンが持てない」「今後のイメージが湧かない」という相談を受けますが、渡邉さんのように「10年後子供に誇れる仕事をする」くらいの大きなビジョンを持って、新たな環境に飛び込んでいくのもいいと思いました。
加えて、「今は3PASに興味がある」など自分でトレンドをキャッチする動きもして、関心軸を定めておくと、渡邉さんのようにチャンスが降ってきやすいです。ぜひ読者の方は渡邉さんのキャリアを参考にしてみてください。