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リゾームマーケティングの時代

NHK電波返上とコロナ不況の影響 電通「2019年日本の広告費」に潜む「UXインテリジェンス」の課題

Googleは量子力学的、マスメディアはニュートン力学的だ

 ところで、次に、Googleのボブ(Bob)の予言の話をしたい。というのは、今回の「2019年 日本の広告費」をみて私は、「まるで、ボブの言った通りになったな」と思ったからだ。

 ボブの話は、「地上波テレビ」から「ネットテレビ」に転換するテレビ局にとって、ビジネスモデルのヒントになると思うのだ。私は、テレビ局のコンテンツは、地上波を使わなくても、社会にとって必要だと考えている。

 さて、ボブとは誰か? それは、10年以上前にカリフォルニアのGoogle本社に出張したとき、Googleキャンパスのカフェで偶然出会った人物だ。

 ボブは「Googleは量子力学的メディアだ。マスメディアはニュートン力学的だ。量子的なメディアのほうが、圧倒的に儲かる。しかも、そのユーザー体験(User Experience=UX)も良くなっていく」と主張した。

 ボブは約30分間に及ぶ量子論(quantum theory)の講義をしてくれた。彼は物理学の博士号をもっているニューヨーク出身のアメリカ人だった。

 「ところで、Googleとマスメディアの本当の違いを知ってるかい?」

 困惑している私を横目に、ボブは話し続けた。「テレビや新聞はニュートン力学なんだ。Googleは量子力学的だ。そこが決定的な違いなんだ!」と。そして、ボブは「近い将来、世界はIoT広告時代に突入する」と予言した。要点は3つだ。

1、量子論的メディアのほうが儲かる。それがGoogleの優位性だ。

2、量子論的メディアのUXは圧倒的に良くなる。UXはメモリー(記憶)だ。

3、世界がIoT化し、放送局は技術的に電波を必要としなくなる。

 「世界がIoT化し、静的(static)なマスメディアは徐々に劣勢になる。動的(dynamic)なデジタルメディアとIoT広告の世界がやって来る」と。

 静的(static)なメディアとは、マスメディアがその典型であり、ニュートン力学的で20世紀のテクノロジーだ。その一方で、動的(dynamic)なメディアとは、Googleの検索サイトとその広告が典型であり、量子力学的で21世紀のテクノロジーだ。

 たとえば、テレビにはタイムテーブルがある。プラニングする(線を引く)ことで、どの放送局のどの枠にCMが掲出されるか事前にわかる。つまり、決定論的世界だ。ニュートン力学では、「時間」「速度」がわかれば「距離」が決定する。数式から演繹的に物体の位置が確定する。

 量子力学では、アインシュタインが1905年、光は粒子(光量子)の流れだと主張した(光量子仮説)。19世紀のマクスウェルの方程式では、光は電磁場の波動とされていた。はたして、光は、波なのか粒子なのか?

 Google米国本社副社長・日本法人代表取締役社長を務めていた村上憲郎さんとも、昨年の電通総研のインタビューでこの話をした。

 アカデミックな世界では、「コペンハーゲン解釈派」と「多世界解釈派」にわかれるが、村上さんは「で、僕はコペンハーゲンではなく多世界解釈派なんです。この世もあり、パラレルワールドもある。それが無限にある」と話した。そのほうが量子コンピュータの仕組みを解釈しやすい。

 いずれにせよ、量子は波と粒子の二面性がある。つまり、量子論的世界観では、観察者問題というのがあって、観察者が定まるまで量子は波として漂っていて、観察者との関係性によって粒子になる。これは、不確定な確率論的世界だ。

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Googleの広告は「ヴェニスの商人」だ

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2020/05/15 08:00 https://markezine.jp/article/detail/33334

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