「正しい顧客に売れる」というベネフィット
カスタマーサクセスを中心としたマーケティングの取り組みのもう一つのベネフィットは、「正しい顧客に売れる」と言うことです。
チャーン(解約)が発生する理由の一つとして、契約前の顧客の期待値と実際のオファリングが異なるために、オンボーディングが失敗してしまうという点があります。受注するために、できないことをできるように期待させるようなマーケティング、売り方をしてしまうのはもちろん避けるべきですが、プロダクトが自社に適合していないことを顧客が事前に気づかず契約してしまい、導入後に判明するというケースは往々にして起こります。
カスタマーサクセスを中心としたマーケティングを行うと、顧客は買う前から自分の成功イメージを持った上で購入できるため、期待値のズレが発生せず、チャーンを防げる上に、オンボーディングがうまくいきやすいという利点があります。この点は、カスタマーサクセスの実現をぐっと楽にしてくれると同時に、営業やCSMのリソース配分が最適化できる、PMF(Product Market Fit)達成の見極めがしやすくなるなどの観点でも大事なポイントと言えます。
カスタマーサクセス仕様な組織にアップデートする
サブスクリプション・ビジネスで顧客のサクセスを実現するためには、カスタマーサクセス部門だけでなく、マーケティング部門とも密に連携し、顧客を深く理解した上で、何ができるかを考えていく必要があります。
ところが、カスタマーサクセスという言葉自体は一定の認知を得て、企業の経営層にも重要性を理解されはじめているものの、前回記事の冒頭でもお伝えしたように、ともすると「カスタマーサクセス部門」を立ち上げて、そこだけで頑張れとなりがちなこともまた事実です。全社としてカスタマーサクセスの重要性を理解・共有し、すべての部門がそこに向かうようになっている企業は、現時点では決して多いとは言えないのが現状でしょう。
特定の組織だけがカスタマーサクセスという任務を担うのではなく、会社全体がカスタマーサクセス実現というゴールに向けて各組織をアップデートすること。カスタマーサクセスを実現するには、これが求められるのではないでしょうか。経営陣含め社員全員が、潜在顧客・既存顧客を問わず、カスタマーサクセスを実現するにはどうしたらいいかを各組織の役割ごとに考えてアップデートするということです。カスタマーサクセスが浸透し始めた今こそ、組織をカスタマーサクセス仕様にアップデートする時です。マーケティングはその最初に来るべきものだと考えます。
決して従来のマーケティング活動を否定しているわけではなく、これまで行っていたマーケティング施策を取りやめる必要はありません。デマンド喚起や認知向上、刈り取りのための施策などが新規顧客獲得のために必要なのは変わりません。既存顧客のためのマーケティングにも予算を配分し、潜在顧客・既存顧客を問わず顧客のサクセスを支援することが、最終的にはマーケティングの効果を高めることにつながるのではないでしょうか。