通常の広告では起きづらい「感謝」という効果
ここで鍵となるのは、日産はこのキャンペーン企画の主催者ではなく、社会的な企画を「応援する」立場で参画をしているということ。消費者からすると、この取り組みを通じてセレナを見るときには「これはセレナ広告だ」と思ってみるのではなく、「セレナは社会的な取り組みを応援しているのだ」と捉えて見る。だからこそ、商品や企業へのイメージも上がり、感謝の気持ちが寄せられる。通常の広告ではなかなか起きない効果が、このマーケティング施策では見られるのだ。
丸地氏は「おにぎりアクションは、SNSを通じたコミュニティマーケティングだと思います。私達がお客様に自社の商品を訴求するのではなく、おにぎりアクションというコミュニティを私達が応援させていただくことで、逆にインフルエンサーの皆様がセレナの事を知り、情報発信していただきました」と取り組みを振り返る。

ブランドイメージの向上だけでなく、販売向上にもつながる
もうひとつの事例として、Mizkanを紹介したい。Mizkanは、同社のふりかけ商品「おむすび山」でおにぎりアクションに参加している。
おにぎりアクションへの寄付に加え、“「おむすび山」でおにぎりアクション”という企画を展開し、専用のフォトフレームを作るなど参加者がおむすび山で楽しんでアクションできるアイデアを提供している。
同社マーケティング担当(2019年当時)の平井雅之氏は、「おむすび山の抱える課題を解決できると考えた」と話す。商品の抱えていた課題としては、「元々高かったおむすび山の認知率が近年降下傾向にあり、購買意向も他社商品と開きが出る中、商品の大幅な見直しや、広告を打つ予算も限られた状態」であったと話す。限られた予算の中で何の施策を打つかを日々考えていた中、おにぎりアクションを紹介され、おにぎりアクションという「コト」がきっかけとなって、おむすび山を買ってもらえるようになるのでは、と考えた。これからはこういった“コト消費”を意識したマーケティングをしていかなくてはいけないと考えていた中での縁でもあった。
参加の結果として、たくさんのおにぎりアクション参加者が「おむすび山」でおにぎりアクションに参加した。フォトフレームを活用した写真も、おむすび山への温かいコメントもSNS上に溢れ、ブランドイメージの向上・販売向上にもつながった。

上述のように、企業の取り入れ方は自社の商品・課題に併せて様々であるが、ソーシャル・マーケティング施策を取り入れることで、通常の広告では得ることが難しい効果を得ることができるというのが、ソーシャル・マーケティングの良さである。
それでは、ソーシャル・マーケティング施策を創るにせよ、参画するにせよ、どういったポイントを押さえておくと、施策を成功に導くことができるのだろうか。
次回から実例を元に、鍵となるポイントについて紹介する。