「オプトインしているユーザーへの配信」という観点
MZ:クロスターゲティングを活用した広告配信の成果について教えてください。
久保:2~3月の2ヵ月間の分析では、通常、LINE広告の類似配信をしていた時と比較してカードお申込み後利用率は1.5倍となりました。
最初の1ヵ月は、クロスターゲティングで使用するデータがやや不安定だったこともあり苦戦しましたが、2ヵ月目は最適化が進んだことでデータも安定し、コンバージョン率が向上しました。カードお申込み後利用率1.5倍というのは実はリターゲティング配信と同等の数値で、非リターゲティングの施策としては非常に大きな成果を得られたと考えています。
福田:当然ですが、ブロード配信(ターゲティングを行わない広告配信)ではここまで数値が伸びることはなかなかありません。従来、クリックから申し込みにつなげるためにリターゲティング配信に偏りがちでしたが、クロスターゲティングの活用によって、これまで接点がまったくなかったけれど、ロイヤル顧客になり得る方々に効率良くリーチできる先進事例ができたと思います。
MZ:単なるクリックや申し込みのフェーズではなく、その先のカード発行・利用にもつなげられたのは大きな成果ですね。他に、クロスターゲティングの活用に関して手応えはありますか?
福田:2020年6月には改正個人情報保護法も成立しましたし、海外ではGDPRなどデータ保護規則の話題も多いですよね。なので、今やオプトイン(ユーザーへの広告配信時に事前に許可を得ること)のない配信はあり得ないと思っています。その点で、LINEから各種情報の受領を承諾しているユーザーに広告配信ができるのは非常に助かりました。
まだ出会っていない顧客と継続してつながるために
MZ:確かに、個人情報保護の順守は必須ですね。では最後に、今後の展望をうかがえますか?
塚原:LINEとしては、今まで以上に効果と効率を重視して、まだリーチできていない潜在ロイヤル顧客にアプローチできるよう、クロスターゲティングの改良を進めたいと考えています。三井住友カード様が保有されている膨大な種類と量のデータには、分析や活用の仕方によってさらに多くのお客様と出会える可能性があると思うので、データの抽出条件も含めて引き続き相談していければと思います。
久保:実はクロスターゲティング実施前に、刷新されたカードデザインの認知を高めるためにLINEのトークリストの最上部に表示される広告「Talk Head View」に出稿しました。その際、当初はあくまでも認知施策として実施するつもりだった為、獲得の拡大は期待していなかったのですが、実施後想定以上の会員獲得に繋がったので、Talk Head Viewを含めたクロスターゲティングには獲得も期待できるのではと考えました。
とはいえ今後は広告の類似配信という切り口だけではいずれオーディエンスの母数が減少していく懸念があるので、リーチの拡大のため、類似ターゲティングを敢えて除外したターゲティング配信なども模索していきたいです。
福田:同感です。現状では既存顧客の属性分析からオーディエンスを抽出するという実績ベースの配信になっていますが、ユーザーの行動や気持ちをベースとしたデータ抽出を行い、それに合致する方々にアプローチできたらと考えています。まだ出会っていないお客様に、当社カードを通じて“キャッシュレスがつくるいい未来”を体感いただけるよう、LINEの各種サービスを活用して事業を成長させていきたいです。