アプリ利用時間、収益ともに伸長
図表3は、全世界における週あたりのアプリ平均利用時間の四半期毎の推移だ。

2020年第1四半期(1月〜3月)のアプリ利用時間は、2019年同期比で20%増加。1日あたり3時間40分が平均であるため、今のペースが続くと4時間を超える可処分時間がモバイルに投じられることになる。
モバイルを直接的なマネタイズ(課金)ではなく、マーケティングの目的で活用する企業においては、このコロナ禍において生活者がより一層モバイルに時間を投じるようになったことで、顧客接点を増やしたりエンゲージメントを高めたりするチャンスになってきていると考えるかもしれない。ただ、忘れてはいけないのは、自社アプリの利用時間がコロナ禍で伸びていない場合、他のアプリに顧客の時間が投じられていることになるため、自社アプリの利用時間のKPIターゲットを引き上げる必要があるということだ。常に外部環境の動きを定量的に把握し、自社アプリのKPI設計をすることが重要な視点となる。
マネタイズの市況動向についても、「ニュース&雑誌」カテゴリーが35%増、「教育」「エンターテインメント」カテゴリーが20%増、「ビジネス」カテゴリーが15%増と全体的に増加している。
特にニュース&雑誌カテゴリーは、過去に例を見ないほど成長した。4月は新社会人の入社時期とも重なることから、THE NIKKEIアプリやNewsPicksの課金が3月対比で大きく成長。さらに海外ニュースメディアの課金が過去に見ないほど伸長した。新型コロナウイルスの世界的な蔓延を受けて、日本の生活者が海外の状況を直接触れるべく、高いアンテナを張っていると考えられる。
教育についてはオンライン英会話のSpeakBuddyやスタディサプリ等が3月比較で収益を伸ばした。他にはUdemyという様々なe-learningを受講できるアプリへの課金が大きく伸長。エンターテインメントについては、U-NextやTwitCasting、Showroom等がストアでのマネタイズを大きく成長させた。
新規ダウンロード数を伸ばしたアプリは?
続いて、アプリ単位の動向をデータで解説しながら、生活者の行動変容ポイントを見ていこう。スマートフォンが生活者のライフスタイルに広く浸透していることにより、アプリ個別の動きから、生活者の行動変容が透けて見える。起きている時間の5分の1はスマートフォンに費やしているという実態を考えると、ここの動きを見ることで巣ごもり消費等を理解する一助となる。
図表4は、2020年3月と比較した際に4月でダウンロード数を多く獲得したアプリTOP20だ。

3月も既に外出自粛ムードだったが、緊急事態宣言が発令された4月には多くのアプリがダウンロード数を伸ばした。
上位20アプリのうち、14は外資企業が提供しているアプリである。言い換えると、この緊急事態宣言を受けて日本人の生活者と新たな接点を築いた企業の7割は外資系企業だと言える。つまり日本人がこれらのアプリを起動する度に収集できる利用ログ等のデータは、日本には残らないという点は、今後のマーケティングを考える際にボディブローのように効いてくると筆者は危惧している。
その中で、3位にランクインしたNewsDigestは、3月対比で4月の新規ダウンロード数は1,100%超と、国内企業のアプリの中で最も新規ダウンロード数を獲得したアプリだ。これは新型コロナウイルスに関する速報ニュースや、位置情報を活用した感染予防の機能の実装など、きめ細やかなアップデートや機能追加が多くの人たちに受け入れられた結果と言えるだろう。
筆者が個人的に上手いと思ったのは、位置情報をオンにすることで使える機能を実装したことで、より細かいデータを取得できるようになり、今後それらのデータを用いてより精度の高いマーケティングができるようになる、まさにモバイル時代のマーケティングが実現できるようになった、という点だ。