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実践!マーケティングアカデミー

定期購読のみで実売数32万部超え!シニア女性から絶大な支持を集める『ハルメク』の徹底的な顧客視点

読者向けに動画再生マニュアルを作成 オンラインの楽しさも提供

――コロナ禍による外出自粛要請を受けて、オンラインのイベントをスタートされたそうですね。

木村:実は、意図してオンラインイベントを企画したわけではないのです。ハルメクでは3月からイベントを中止する判断をしましたが、多くの方が楽しみにしていらっしゃった中、何かできないだろうかと考えていました。そこで、中止になったお散歩イベントのコースを、安全に配慮した上で先生とスタッフだけで実際に歩き、風景を撮影し、解説をいただいた動画をお届けしよう、少しでも、イベントを感じていただこうと考え、動画を制作したのです。ほかにも、イベントで人気の高いエッセイ講座もオンラインでスタートしました。これは、先生のご指導のもと、実際にエッセイを書いて講評をいただき、みんなの前で読むといった講座ですが、オンラインではエッセイの書き方動画を公開しています。また、自宅で過ごす時間が増えていますから、「みんなでまた会えるときまで、元気に過ごしましょうね」と、メイクや運動などの動画も用意しました。スピードが大切だと考え、社内で撮影、編集しています。

――動画の内容も、読者のことを第一に考えているんですね。しかし、動画を見ることや、ツールの利用に不慣れな読者も多いのでは……?

木村:おっしゃるとおり、オンラインで動画を見ることが初めての読者ばかりです。ハルメクWEB上で、「動画を配信しています」とお知らせしても、見てもらえないと考えました。そこで、ハルメク6月号のイベント告知ページに、オンライン講座のご案内をし、動画を見る方法を丁寧に解説しました。あわせて、イベント動画再生マニュアルという冊子を作ってお送りしています。動画を見るためには、スマートフォンやパソコンが必要で、インターネットに接続しましょうと、本当に基本的なところから説明しました。検索エンジンの使い方や、YouTubeの再生方法など、細かなマニュアルは15ページにも及んでいます。このくらいフォローをしないと、見ていただけないと思ったのです。

ハルメクが作成した動画再生マニュアル(タップで画像拡大)
ハルメクが作成した動画再生マニュアル(タップで画像拡大)

――読者も嬉しいですね。反響は、いかがでしたか。

木村:「先生のお顔が見られて嬉しかった」「参加を諦めていたけれど、良かった」など、ポジティブな反応が多かったです。ハルメクの読者は、積極的にイベントへ参加されています。毎月のように予定を立てられて、本当に楽しみにしていらっしゃるんです。コロナの影響で、多くの予定がなくなってしまったけれど、ハルメクでオンラインイベントを開催したことで、「自分たちの居場所が守られた」という声もありました。また、余計にリアルのイベントが恋しい、みんなに会いたいという気持ちも高まったそうです。以前も、動画コンテンツを配信しましたが、あまり再生はされず、ニーズがないのかと思っていました。それに比べ今は、予想以上に読者の反応がいいですね。オンラインにしたことにより、地方からの参加者が増えたことも良かったです。コロナが終息しても、イベントの良さを伝えたいですし、オンラインによるアプローチは続けていきたいと考えています。

変化が起きているからこそ、いつもどおりが大切

――生活環境が変わる中、少しでも読者の支えになりたいと考えたアクションが素晴らしいですね。実際に、読者の行動に変化は見られますか。

山岡:世の中の流れにあわせて、通販は伸びていますね。特に、食品の伸びが目立ちます。ハルメクの通販では、名店とのコラボメニューや、こだわり食材を用いた食品を取り扱っており、「おうちにいながらおいしいものを食べたい」ニーズがあるようで、ご注文が増えています。また、ハルメクWEBのPVが2倍に伸びました。世情を反映してか、マスクの作り方の記事が人気です。また、その記事内には、ハルメクの通販で取り扱うミシンが登場しますが、完売しました。今までにない流れが起きていると感じます。また、ECも伸びていますが、ハルメクの通販は電話からのご注文が多いです。おそらくですが、オペレーターとお話をされたいのではないかと思います。

――ここまでのお話をうかがって、ハルメクは読者とのコミュニケーションをとても大切にされていると感じました。どのようにして、読者の声を聞いているのでしょうか。

山岡:はじめにお話しした、生きかた上手研究所による調査が大きいですね。読者だけでなく、ハルメクを知らないシニアの方にも会社へ来ていただいて、座談会を毎月何回も行っています。今回、対面での座談会ができなくなったときは、「生命線が奪われた!」と感じるほどでしたが、オンラインによる座談会を進めています。はじめは、テレビ会議のハードルが高く、なかなか思うように進行できないことが続きましたが、座談会チームでマニュアルを作り、ご意見をうかがいやすい問いかけを試行錯誤していくうちに、スムーズな運営ができるようになりました。参加いただいた方からも、「初めての経験で楽しかった」「ワクワクした」と好評です。また、以前の座談会は、移動がともなうため首都圏の方が中心でしたが、イベントと同じように、遠方の方もオンラインで参加できるようになりました。いろいろなことが変わっていくのだと感じる楽しさがあります。

 そしてもう一つの大切なコミュニケーションが、雑誌内に同封されているハガキです。毎号2,000枚近くご返信をいただいています。どのテーマがおもしろかったかなどのアンケートもありますが、メインはハルメクへの短い手紙なんです。誌面の内容に関係なく、「孫が生まれました」とか、「猫が病気になってしまって……」と、友達へ綴るようなメッセージをいただいています。ひとこと、ハルメクへ伝えたいという方が多いんです。私たちも1枚1枚を読ませていただき、読者の気持ちに寄りそい、シニア層の関心の傾向を掴んでいます。

――最後に、これからの展望をお聞かせください。

山岡:やはり、リモートワークの環境の中、雑誌を制作することは大変でした。しかし、いつもどおりに雑誌が届いたこと、そのこと自体にホッとしたと喜びのお手紙をいただいています。いつもの習慣が続いていることが、読者の心の安定につながっているのだと感じました。やはりシニア層は、これからのおでかけにも注意されるでしょうし、お一人で暮らしている方、ご自宅で過ごす方もいらっしゃいます。雑誌があり、通販の申し込みの電話をしたら、オペレーターとつながり、届いたものが便利で楽しい、おいしいなど、今まで取り組んできた形に価値があります。オンラインの動画配信など、新しい取り組みも始めながら、これまでどおりのサービスを続けていくこと。ビジネス以上に、ハルメクのひとつの使命と考え、より強化し、維持していきたいと考えています。

今回のポイントは……
  • 読者が欲しい情報やコンテンツを、通販やイベントなどの体験も交えて提供する。
  • 読者とのつながりを考えた動画を配信。読者層のITリテラシーを考慮して、マニュアルを冊子で届ける。
  • ハガキや電話など、読者にとっていちばん適切なコミュニケーションツールを使って、声を聞く。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

MarkeZine副編集長。1993年生まれ、島根県出身。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/27 15:30 https://markezine.jp/article/detail/33880

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