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半歩先行くコンテンツマーケティング 「独自性」を紐解いて活用する

CMIファウンダーのJoe Pulizzi氏に聞く、ニューノーマル時代のコンテンツマーケティング


ターゲットが何を求めているのか、常に考え続ける

――年代、性別、人種、価値観、宗教等でコンテンツマーケティングにおけるアプローチ方法は変わるのでしょうか? それとも普遍的なのでしょうか?

Joe Pulizzi氏:購入者のペルソナは、居住地、収入、ライフスタイル、趣味嗜好、宗教等がありますが、私が着目するのは概念的にはやや下にあたる「インフォメーショナルなニーズ」です。

 仮に「商品を安く生産するための委託先を海外に探している」ビジネスマンがいたとしましょう。ここで重要なのは「目的を達成してくれるために必要な情報」です。そこで居住地や価値観はあまり関係ありません。

 ビジネスに関わる人は大なり小なり「いい仕事をしたい」「会社を大きくしたい」「商品を広く知らせたい」と考えています。もちろん、ビジネスによっても個々の要素の数は変わりますが、そこについて私はあまり大きな問題だとは感じていません。もちろん、国や地域で商習慣は異なりますし、商材によってはそういった要素も検討しなければならないといったことはあるでしょう。

 かつてヒューレットパッカードと仕事をしていた時、私はたった150人をターゲットにしてコンテンツマーケティングに取り組んでいました。150人といっても、すべてCレベル(CMOやCEOなど)の人たちです。当時は、このニッチな人達特有のニーズは何かを考え抜き、情報を集めていくのがとても楽しかったですね。

 人数が変わっても、本質は変わりません。いかにターゲットからフィードバックを得るか、ターゲットが何を求めているかを知ろうと常に怠らないこと。つまるところ、どれくらい顧客のことを理解しているかが、肝になるのです。

「オーディエンスビルディング」が失敗する原因

――「オーディエンスビルディング」が失敗するのはどんなときでしょうか?

Joe Pulizzi氏:短期的成果にコミットしすぎて失敗するコンテンツマーケティングの事例は、枚挙にいとまがありません。オーディエンスビルディングは時間がかかるプロセスですが、目標とKPI設定、成果測定、効果が出るまでの期間をどう決めるかは、最も重要な問いの一つです。

 私は持論として、「企業のコンテンツマーケティングは、パフォーマンス(成果)が出なかったという理由で終了するのではない。経営陣があなたが何をしているか理解していなかったから失敗するのだ」と繰り返して伝えています。

 コンテンツマーケティングが順調に進んでいても、部署が閉鎖されることはあります。それは会社が担当者の業務を理解してなかったからでしょう。すべてが上手くいっていたのに、会社への報告だけが下手だったためにストップがかかることはあるのが現実です。

 最も大事なのは「適切な期待値を社内で合意すること」です。CMO、CEO、CFOといった人々の多くは「マーケティング=消費者の注意を引きつけること、彼らの目線の間に割り込むこと」だと考えています。いわゆる、無理やり注意を引きつけて、うちの商品を見て!買って!……というアプローチですね。

 そういう手法に慣れている人たちは、商品のことに触れないコンテンツマーケティングは理解を示しにくいでしょう。なぜ商品のことを語らないのか、なぜ売り込まないのか……と考えてしまうのです。

 そこで重要なのが「アセットを作る重要さ」を訴えて教育することです。オーディエンスビルディングとは何か、なぜやっているのか、オーディエンスを築く有用性や、築いた後にどんなメリットがあるのかを、粘り強く伝えていくのです。信頼性を担保したオーディエンスがいれば、将来的に購買する可能性が高まると根気よく説得し続けることを怠ってはいけません。

社内コミュニケーションはマーケターの仕事

――上司や部門長には、どのように報告し、また彼らを巻き込んでいけばいいのでしょうか?

Joe Pulizzi氏:一定の成果が見えるまで、12~24ヵ月はかかるでしょう。でも、だからといって、マネージャーに「18ヵ月かかるので気長に待ってほしい」と言えば、一喝されますよね(笑)。そこで、まずは広告、既存のSEO施策、リードジェネレーションは継続しつつ、ベータ的にコンテンツマーケティングにトライしましょう。

 私は上司に「なぜオーディエンスビルディングが大事なのか?」と問われたとき、「資産になるから」と答えてきました。コンテンツマーケティングに関しては「すぐには成果は出ない」と伝えておきます。仮に半年で結果が出せる自信があってもです。12~18ヵ月はオーディエンスを築くことに集中すると宣言します。ここまでがファーストステップです。

 セカンドステップ「継続的な社内教育と啓蒙活動」は、実はさらに大事です。なかなか取り組む人は多くありませんが、特に予算をもっている人にはやるべきです。CMOやCFOにケーススタディや事例を共有しましょう。他社が何に取り組み、どんな成果が出ているか、といったことでかまいません。「我々が実現したいのはこれだ」と伝えるのです。面倒に感じるかもしれませんが、まだこれをしないといけない段階なのです。

 計画は長めに立て、想定以上に早期に効果が出れば儲けもの。とはいえ、マネタイズには12ヵ月はかかると伝えておくのが良いでしょう。こういった社内コミュニケーションはマーケターの仕事です。極端な話、上司にアクセス解析の細かな数値を報告しても意味はないし、理解してもらえないだけです。

 ちなみにレポートはかしこまった体裁でなくて構いません。ニュースのリンク、メール連絡、あるいはチャットでも、自社のカルチャーに合わせて共有しましょう。私は2週間毎に雑誌の切り抜き、記事のコピー、事例等を封筒に入れて上司に渡していました。さぁ、読者の皆さんもさっそく隔週の金曜の朝に「共有作業をする」とカレンダーに入れておきましょう。

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イチからコンテンツマーケティングに着手する手順

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この記事の著者

伊東 周晃(イトウ ノリアキ)

株式会社JADE代表取締役。同社では、「Grrowth&Integrity」をコンセプトに検索を軸としたウェブコンサルティングサービスを提供している。前職の株式会社ぐるなびでは、SEO、ソーシャルメディア施策、ウェブ解析、コンテンツマーケティング、広告、広報領域の執行役員をつとめた。

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中山 順司(ナカヤマ ジュンジ)

SEO・ソーシャル・動画の3領域でのコンテンツ企画と制作が得意な生粋のコンテンツクリエイター。ソフトバンク、楽天トラベル、Six Apart、freee、ファベルカンパニーを経て2024年に独立。コンテンツマーケティングを専業とし、オウンドメディアとYouTubeの設計 / 企画 / 執筆 / 編集 / 分析 / 改善 / SEO を幅広く行う。MarkeZine、Web担当者Forum、ねとらぼ、WorkshipMAGAZINE等で執筆しつつ、Content ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2020/08/07 09:00 https://markezine.jp/article/detail/33935

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