コスト面からみたバーチャルトレードショーのメリット
ここまでで、バーチャルトレードショーがいかにインタラクティブで自由度も高く、企業にとっても有益な出店ができることを紹介してきました。
では、コストの面ではどうでしょう。一般的なトレードショーでは、展示ブースへの出展料以外に、展示ブースの設置・撤去費や、オーディオなど各種レンタル料金がかかります。また、展示ブースでの対応担当者は、終日時間がとられてしまいますし、設置・撤去まで含めると開催期間+αの時間が必要となります。遠方から参加ともなれば、交通費、宿泊費、食事代といった諸経費までかかってしまいます。一方、バーチャルトレードショーでは、出展費以外にほとんどコストがかかりません(図8)。また、当日の展示ブースでの対応も、インターネットの環境さえあればどこででもできるので、オフィスにいながらにして数時間ずつ交代で対応するなど、人材確保に悩む必要もありません。

($1=¥112で計算)
成功事例:ノーテル社
上記で紹介したバーチャルトレードショーの機能的特長を踏まえ、実際にバーチャルトレードショーは、B2Bマーケティングにどのように生かされているのか、米国のマーケティングリサーチ会社marketingsherpa社がまとめた事例をご紹介しましょう。
カナダに本社を置くノーテル・コーポレーションは、150を超える国々で事業を展開するグローバルな通信技術の会社です。ノーテルのマーケティング担当者は大きな3つの課題を抱えていました。
- 通信は限られた顧客数に対し、グローバル的な競争が激しい市場であること
- 商品やサービスが複雑なため、見込み客から十分な商品理解を得られていないこと
- ターゲットがCレベルエグゼクティブ(*2)にIT担当者であるため、リーチが難しいこと
そこでマーケティング担当者は、自社のサイトで既に展開しているWebinar(ウェビナー=ウェブ上でのセミナー)がとてもよい結果を出していること、また調査の結果ターゲットとする世界中のトップ企業のIT担当者やCレベルエグゼクティブは、ウェブ上での情報収集を好むという結果に基づき、ひとつの解決策を打ち出しました。
その結果、予想以上の効果を得ることができました。その結果をサマリーとしてみてみると、以下のようになります。
- 数千にものぼるエグゼクティブの登録があった。参加者の内訳は75%がUS、25%が95カ国以上もの海外企業からの参加。そして半分がCレベルエグゼクティブ、半分がIT担当者と、通常よりも圧倒的にCレベルエグゼクティブの参加比率が高かった。
- 参加者の平均滞在時間は約5時間。
- 各講演で行われたチャットでのQ&Aセッションでは、平均して65もの質問がされた。リアルの講演では、参加者の気恥ずかしさや時間的制約から、ここまでの活発な質問は期待できない。
- 高い見込み客へのリーチ率。参加者全体の21.6%は、収益額が年間10億ドルを超える大手企業で、参加者の23.6%は4ヶ月以内に、45.6%は12ヶ月以内にモバイル関連のプロジェクトを控えている有望見込み客であった。
- 参加者アンケートによると、参加者の98%が次回の参加意向を示しているという、高いリピート率を獲得することができた。
まとめ:距離というハードルを越えたマーケティングの未来
B2Bのマーケティングでは、限られた市場による競争の激化や、複雑な商品・サービス群によって生じてしまう長い営業リードタイムの短縮など、多くの課題があげられます。トレードショーへの出展は、B2Bにおける一般的なマーケティング手法ですが、出展企業・参加者ともに時間的かつ地理的制約など多くのハードルが存在し、十分満足のいく結果を得るのは難しいことです。そんな中で、バーチャルトレードショーは、時間的・地理的制約のハードルを低くし、高い費用対効果を期待できるマーケティング活動のひとつとして、これから注目されるべき手法ではないでしょうか。