宣伝色の薄い投稿や参加型コンテンツを活用
いいたか:では、そこからどのように施策を進めていったのでしょうか?
海宝:「自分ごと化」をしてもらうために、UGC(クチコミ)数をKPIに置きました。デジタルマーケティングにおけるメディアの捉え方で言えば、オウンドメディアやペイドメディアとしての使い方を中心に据えるのではなく、ユーザーが自分から発信をするアーンドメディアとして活用しようという考え方です。そこから、公式アカウントの運用を本格的に始めました。
佐藤:SNS活用の方針としては、海宝さんの仰る通り、認知を得ること、そしてジョンソンヴィルを食べたユーザーによる感想の投稿といったUGCの創出です。

UGCは結局、何もしないと増えません。テレビCMを流しているときはそれがきっかけで発生しますが、それがなければ平坦な状態でした。そのためUGCを生み出すアカウント基盤を広告を使って形成していきました。
海宝:アカウントの基盤作りでは、ジョンソンヴィルのターゲットがどのようなコミュニティに属するのかを分析し広告を配信しました。
嗜好性や使うメディア、ホットリンクから提供いただく良質なフォロワーに関するナレッジをかけ合わせて、精度を上げています。これにより、購入してUGCを生み出す可能性の高いユーザーから徐々にフォローしていただけるようになり、質の高いフォロワーによるベースが形成されていきました。
いいたか:ベースができてからは、具体的にどのような取り組みをされてきたのでしょうか?
海宝:まず、よりエンゲージメント率の高い、フォロワーさんに喜んでいただけるオーガニック投稿です。投稿する画像があまりにきれいすぎると宣伝色が出てしまうので、宣伝色のないユーザー目線の画像投稿、トレンドに乗った投稿/企画など、工夫していきました。企画の中では、カンバセーショナルカードなどを利用して参加型のコンテンツを投稿したりしています。
あとはアカウントの運用の中でのリツイートです。UGCとして出てきた投稿を、公式アカウントが拡声器となることで、より多くの人の目に触れるようにし、さらにUGCが出てくるように盛り上げていきました。
シーンの提案が複数のクラスターを生む
いいたか:UGCを見たり、公式アカウントを通じてリアクションしたりする中で、気づいたことや学んだことはありますか?
海宝:当初のUGCには生活感のある画像も多く、古式ゆかしきブランドコミュニケーションの「公式のブランドから出すものは美しくなければいけない」という常識もあって、最初は正直リツイートに少し抵抗を覚えなかったわけではありません。
しかし、目的である「自分ごと化」に立ち返って考えれば、UGCにはユーザーだからこそ出せる公式とは違った魅力があると思いますし、身近な投稿こそがより多くの人の心に届くと考えています。色々な食べ方や喫食シーンなど、魅力の再発見という意味で、むしろブランドの学びになるUGCがたくさんあります。

いいたか:オウンドメディア、ペイドメディアにはないメリットですね。
佐藤:ただ、UGCは少しずつ目に見えるようにはなっていったのですが、その次にUGCの幅が利かないという課題がありました。焼いたり、茹でたりといったシンプルな調理の投稿が多く、バリエーションがあまりなかったのです。
UGCのバリエーションを増やしていくために「バーベキュー」や「お酒と一緒に」といったシーンでの訴求をしていきました。そうするとそれぞれの関心ベースでクラスターが形成されていき、それぞれのUGCが発生します。これにより、全体のUGCが増えていきました。
海宝:最初、ジョンソンヴィルのSNS上のコミュニケーションは木で言うと「細い幹」しかない状態だったのですが、続けていくにつれてバーベキューの枝ができ、ホットドッグの枝ができ、ポトフの枝ができ、そこからさらに枝葉ができていくことで、木全体も大きく成長していきました。
いいたか:企業には「出て欲しいUGC」があり、それはある種エゴのようなものだと思うのですが、一つのクラスターだけに偏って広がるようにするのではなく、他方のクラスターでも広げていくことが、UGC数の最大化につながりますね。
佐藤:オーガニック投稿では、ブランドからユーザーに向けた「1対n」のコミュニケーションですが、さらに次のフェーズでは「N対n」のコミュニケーション、つまりユーザー同士でジョンソンヴィルを話題にしてもらうというアーンドメディアの活性化を目指しました。ジョンソンヴィルも様々なクラスターの中で話題になっていきました。