“ちょっとダサい”を狙ったSNS「タビノコ」
――そうした投稿を呼びかける際には、何かインセンティブが?
千歳:基本的にはないですね。新規登録の際には、インセンティブをつけることもありますが、タビノコにはコアな旅好きユーザーが集まっており、みなさん積極的に投稿してくれています。
データを見ていると、こうした状況で新規登録は減っているのですが、コンテンツの投稿数やアクティブレートは逆に上がっています。投げかけると、皆さん溜めているものがいろいろとあって、その想いを共有してくれるんです。
――呼びかけによって、自発的に投稿してくれるユーザーが多いんですね。
千歳:そうですね。お題だけ出すと、あとは大喜利みたいな感じで(笑)。
通常のSNS投稿以外の形式だと、デジタルマップ(※)に、行ったことのあるスポットや、写真の登録をしてもらうというものもありました。Googleマップに写真を載せるぐらいの手軽さが良かったのか、これも利用者が多かったです。

――そもそもタビノコを立ち上げた背景は?
千歳:タビノコは、旅行のきっかけ作りをサポートするプラットフォームとして生まれました。各SNSではタイムラインに、様々なカテゴリーの情報が溢れていて、旅行に関する情報だけを拾うのは意外と難しいんです。旅に関するブログサービスは複数ありますが、もう少しカジュアルなものを作れないかと。映えなくても良い、ちょっとダサいところを意図的に狙っています。
※ オリジナルマップを作成できるデジタルマップソリューション「プラチナマップ」を用いたもの(提供:ボールドライト社)。
UGCが拡散されるコミュニティづくり
――タビノコがスタートしてから一年ほどと伺っていますが、ユーザー自ら盛り上がってくれる環境はどのように作っていったのでしょうか。

千歳:基本的にはCtoCのサービスなので、私たちが供給するというよりは、皆さんに自由に使ってもらって、アイデアを共有してもらうというユルさが良かったのかなと思います。また、タビノコにはコメント機能がないんです。つながりすぎないSNSにしたことが、当社のお客様には合っていたのではないでしょうか。
――タビノコの会員になってもらうために、どのようなことに取り組んでいますか。
千歳:タビノコはInstagramの公式アカウントを設けていますが、そういったところでおもしろそうな人に直接声をかけて、「こちらでも投稿しませんか」といったような草の根活動をしています。広告で誘導するというよりは、「ガツガツしない旅ソーシャル」にピンと来てくれる人に使ってもらうために、コツコツ増やしているという感じです。
――その草の根活動は、マーケティング部の方たちが?
千歳:はい。実際に中で切り盛りしているのは1.5人ぐらいです。SNSでターゲティング広告をやると、ある程度会員を集められることはわかっています。実際にテストを行い、獲得単価なども把握できたので、それ以外のやり方でやろうと。
今後は、航空券を予約してくれた方についでに登録してもらえるような施策を考えていますが、会員をやみくもに増やすというよりも、いかに良いコンテンツを投稿してもらって、ユーザー同士が旅の参考にしあえるプラットフォームにできるかということを主眼に置いています。
また、映える写真を投稿する場ではなく、「この人はここに良さを感じたんだな」といったように、その人の目線を感じるような写真を投稿してもらえる場にしたいと思っています。私たちの飛行機を利用してくれた方が、到着地でどんなものを見て、何を感じたのか、きちんと理解したいんです。それを理解することで、結果的にお客様にも良いオファーができるのではないかと思っています。