※本記事は、2020年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』56号に掲載したものです。
アパレル業界の5年後、10年後を考える
――神田さんが室長を務められている、「未来政策室」とはどのような部署でしょうか?
未来政策室は、一言で述べると新規事業を立ち上げる部署となります。未来政策という名の通り、アパレル業界の5年後、10年後を見据え、「将来のために、今自分たちに何ができるか」を考え、実行しています。
未来政策室ができたのは、今からちょうど2年前。海外におけるサスティナブルの意識が非常に高まり始めた時期でした。アパレル業界においても、海外ブランドが「サスティナブルのため、今後は革を使わない」と発表するなど、キーワードとなっていたのです。一方で、日本では当時、こうした意識がまだまだ低い状況でした。
未来政策室が立ち上がってからの最初の1年間は、まず徹底的に市場調査を行いました。ファッションのトレンドは若い世代が作っていくということもあり、若い世代の価値観やライフスタイルを理解するために大学の学食に行ったこともありますし、リテールは中国が進んでいるので、現地に最新技術を見に行ったりもしました。そうして1年間、ひたすらに状況を確認していったなかで、真っ先に取り組むべきと判断したのが「デッドストック問題」でした。
株式会社バロックジャパンリミテッド 未来政策室長 神田麻衣氏
社員として働く傍ら、タレントとしても活動。自身のチャンネル「かんだま劇場」のチャンネル登録者数は30万人を超える。
環境問題にもつながる“デッドストック”という課題
――デッドストック問題とは、どのような問題でしょうか?
デッドストックとは、売れ残り品や長期間倉庫に置かれ、新品のまま眠っていた商品のことを指します。アパレル業界では、どれだけMD設計をしても、セールや福袋で売ろうとしても、どうしてもこのデッドストックが生まれてしまうという課題がありました。日本だけでも年間100万トンのデッドストックが生まれていると言われています。そして、こうしたデッドストックの多くは一定期間を過ぎると、焼却処分されてしまいます。これは、地球環境にもつながる大きな問題ですよね。
弊社はアパレル業界の中では比較的デッドストックが少ないと言われているのですが、それでも倉庫を見ると、やはり非常に多くの在庫を抱えていることがわかりました。でも、そうした商品を手にとって見ていると「まだ着られるもの」が非常に多かったのです。
「たとえ綺麗でも、シーズンが過ぎていたら売れないでしょ」という声もありますが、ファッションの流行は常にまわっていて、実際、1980〜1990年代のものが今の若い世代にヒットするということも起きていますよね。「新しいものでないと売れない」ということは決してなく、良いものであれば売れるのです。そこで、こうしたデッドストックをなんとか販売できないかと考え、「コーディネート」という付加価値を付けて提供し始めたのが、「AUNE(アウネ)」です。