ブリーフィングにない前後の余白を考え企画に
――クライアントの課題を考えるところから寄り添うという話がありましたが、課題を発見・再定義する上で大事にしていることはありますか。
ブリーフィングの資料に載せきれなかった前後の余白を読み解くことですね。クライアントのマーケターからブリーフィングを受けると、商材が生まれた背景やコンセプトなどを伝えてくれます。しかし、その資料に書くことは整理されているので、シートには書かれていない背景や熱量みたいなものが存在していると思っています。クライアントの方も忙しいので至って合理的な進め方だと思いますが、我々はそこに載っていない余白を意識し本当の課題を探すようにしています。
――ちなみに、マーケターからブリーフィングを受ける際に「こうだったら嬉しい」というポイントはありますか。
マーケターの想い、本音が聞けると嬉しいですね。ブリーフィングシートに書かれた内容になかった、担当者の想いみたいなものを知れると、ブレイクスルーのきっかけになると思っています。
――山中さんはAID-DCC時代からデジタルを軸にした企画・制作に携わってきたと思いますが、デジタルクリエイティブを考える上で何が重要だと思いますか。
デジタル上で何かを仕掛ける場合は、文脈やストーリーを入れることと、技術先行なアウトプットをしないことが重要だと考えています。2013年ごろまではデジタルで何をやっていいかわからないお客さんもいて、技術先行で派手さや新しさだけで話題が作れましたが、今はそうはいきません。世の中にある文脈とストーリーに合った手段を選んでおもしろく課題を解決できるようなものを作ることを心がけています。
想像力を持ったすべての人の懐刀に
――最後に今後の展望を教えてください。
想像力を持ったすべての人の懐刀のような存在になりたいと考えています。僕が米でやっているのは「やってみたいけど、どうすればいいかわからない」ことを実現するための支援です。何を誰とどうすればクライアントの想像が具現化できるのか、今後も一緒に考えられたらと思います。
そのために今後取り組みたいことは2つあります。1つは広告受託業務以外のお仕事です。たとえば、現在あるアーティストとインターネット上の音楽プラットフォームの制作に取り組んでいます。このようなサービス開発などにも、これまでのデジタルクリエイティブで培ってきた力を活かせると考えています。
そしてもう1つは、広告受託業務の形を変えるための取り組みです。実現する方法を知っているプロデューサーがこれまで以上に上流からコミットし、クライアントが描く世界が制限されないように寄り添っていきたいです。
かつ、予算が決められた中で制作するのではなくフィーをしっかり獲得していくべきだと考えています。米でも少しづつ増えていますが、まだ広告業界ではプロデューサーフィーというものがあやふやな印象です。
今後は受発注の関係を超えた本当のパートナーとしてクライアントと共創していくことが目標です。米もクライアントの真のパートナーとして寄り添えるよう支援のあり方を考え実現していきたいです。