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MarkeZine Day 2025 Autumn

新・女性のココロを動かすマーケティング術

Withコロナ時代に再注目の「応援消費」、その新しい形と女性の“推しゴコロ”の作り方

応援消費の応援対象は「集団」から「個人」へ

 「応援消費」のもう1つの新しいトレンドが、その応援対象の変化にあります。女性の応援消費を分析する上でSNSの存在は欠かせませんが、SNSにより個人のパーソナリティがよりダイレクトに伝わるようになりました。これにより、これまでの応援対象が「企業」「ブランド」「チーム」「地域」といった「集団」であったのに対し、今ではその対象が「個人」へと変化しています。

 先ほど例に出したさくらんぼ農園も、経営者やそのお孫さんという存在と、そのパーソナリティがSNSによって伝わったことで応援消費が生まれました。

 このような、個人が見知らぬ「個人」を応援するという現象は、AKB48が「総選挙」や「会いに行けるアイドル」といった斬新なコンセプトで一世を風靡したことから火が付いたトレンドといえます。その象徴として「自分が特に応援している、推しているメンバー」を指す「推しメン」という言葉が誕生し、2011年の新語・流行語大賞にもノミネートされました。

 AKB48はメンバー個々のパーソナリティを詳しく紹介しつつ、その成長プロセスを見せることで「個人」への共感と興味を喚起し「推しメン」現象を生み出しましたが、今新たな手法で女性たちの熱狂的な「推しゴコロ」を生んでいるのが「Nizi Project」 です。

「虹プロ」のヒットに見る「推しゴコロ」の生み出し方

 「Nizi Project(通称:虹プロ)」とは、Huluや日本テレビ系列で放送されたオーディション番組で、1万人超の応募者から9人組ガールズグループ「NiziU」が誕生するまでの軌跡を追ったものです。K-POP界でTWICEをはじめとしたトップアーティストを輩出してきたJ.Y.Park氏のプロデュース手法や未来のスター候補者たちに注目が集まり、それぞれを「推し」として宣言する熱量の高いファンが続出しました。

 デビューメンバー発表後、6月末に配信されたプレデビューのミニアルバムはヒットチャートを席巻し、AKB48や坂道グループ以降、目立ったヒットが生まれていなかった日本人ガールズグループ界隈に登場した久々の大型新人として、連日メディアに大きく取り上げられています。

Z世代マーケティング研究機関「TT総研」による2020年下半期トレンド予測でも「NiziU」がランクイン

 既に2020年を代表するヒットコンテンツともいえる「虹プロ」ですが、個人が個人を応援する熱狂的な「推しゴコロ」を生み出した要因は大きく2つあります。

 1つ目は、個人のパーソナリティへのフォーカス手法です。J.Y.Park氏が「一人ひとりが特別です」と候補者に言う通り、虹プロでは候補者をアイドルグループの1メンバーではなく、自分の夢に挑む1人の人間として扱います。

 目を引く特定のメンバーだけをピックアップするのではなく、1人ひとりにスポットライトを当てそれぞれの個性や魅力を浮き彫りにすることで、視聴者の応援欲求を刺激し「推しゴコロ」を生み出しました。

 2つ目は、「成長度合い」「練習態度」という新しい評価基準です。オーディションでは段階的に、各パフォーマンスに個人順位が付けられますが、これはAKB48のようなファンからの人気投票数でもなければ、ダンスや歌の実力だけでもありません。「前回からどれだけ成長したか」が重要な評価基準であり、さらには練習態度やトレーナーからの評判も加味した上で順位が決まるのです。

 このように誰かと競わせるのではなく、評価の軸すらも「個人」の中にあるという点が視聴者の関心と共感を生み熱狂的な「推しゴコロ」へとつながったといえます。

 番組のオープニング楽曲「Baby I’m Star」に「全部魅せるよ!」という歌詞があるように、回を追うごとに引き出されていく候補者たちのありのままの魅力や自分自身にストイックに向き合う姿勢、他のメンバーと競い合うのではなく互いの成長を認め合い絆が生まれていく様子など、メンバーのパーソナリティをまさに「全部魅せ」している虹プロ。共感力が強い女性の「推しゴコロ」を的確に捉えた、新しい応援消費の1つのモデルケースといえそうです。

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企業の「全部魅せ」を実現する「エンプロインフルエンサー」

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この記事の著者

添田 裕女(ソエダ ユメ)

 トレンダーズ株式会社 MimiTV Div. 美容マーケター/編集部。

 化粧品・消費材を中心としたインフルエンサーPRのプランナーを経て2018年より現職。美容メディアMimiTVのマーケティング業務に従事。化粧品やメイクを愛する「美容オタク」のインサイト把握を得意とし、Twitterで話題となった...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/25 09:00 https://markezine.jp/article/detail/34347

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