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ニューノーマル時代に求められる“企業カルチャー”とデジタル業界の未来/INBOUND2020レポート

ニューノーマル時代において必要な3つの企業カルチャー

 では、HubSpotはどのような企業カルチャーを持っているのだろうか。ダーメッシュ氏は同社の企業カルチャーについて、次のように説明する。

 「ブライアンと我々は、元々HubSpotのカルチャーを製品のひとつと位置付けていました。もちろん、通常の製品をお客様のために作ります。一方で、カルチャーという製品は社員のために作り出すものです。そこで常に創業期から力を入れていた3つのことがあります。1つは、皆がうなずいて手を取り合えるミッションを作ること、2つは、強固な自主性を育むこと。仮に間違っていても、それは最大の学びになりますからね。3つめは、最高の同僚に囲まれ、尊敬でき、称賛でき、一緒に働くことへ楽しみを覚えられること、です」(ダーメッシュ氏)

 これらの従来のHubSpotのカルチャーに加えて、現在のコロナ禍やニューノーマル時代に企業が最高の人材を惹きつけ繁栄(Thrive)していくには、新たな3つのカルチャーが必要になったのではないかとダーメッシュ氏は付け加える。

【企業が最高の人材を惹きつけ、繁栄していくために必要なカルチャー】
1、自由度を持ってもらうこと:どこで、いつ働くか
2、透明性を持つこと:企業の中で何が起きているのか、マネジメント層が何を考えているか
3、多様性を持つこと:最高のメンバーは最高のメンバーと一緒に働きたいと考え、最高のチームは多様性を持ち合わせている

 ブライアンは特に多様性について、2020年に米国を発端とし、世界的に広がった人種間差別に触れ、以下のように述べた。

 「ハイハイのようにゆっくりと変化し、徐々に加速していくものだと思うし、1960年の公民権運動と2020年の今の違いは、(人種間の)多様性を良い方向に向かわせる役割を企業が担えることなのではないか。2030年に今を振り返ったとき、この変革の中で私たちが果たした役割や、今社会で起きている大きな変化を誇りに思えるようにしたい」(ブライアン氏)

 筆者が同社と関わりを持ち始めたのは2013年。当時の同社従業数は600人ほどだったと記憶しており、その大多数はコケイジャン(白人)であった。その後、様々な人種、宗教を背景に持つ従業員を積極的に採用し、人種のるつぼと変化、2020年現在従業員数は3,800人程となっている。その変化から感じることは、“多様性を取り込むことにより組織の柔軟性が高まる”ということ。日本は世界でも稀に見るhomogeneous(同種の、等質的な)社会であり、日本企業が組織の硬直を防ぎ、様々な意見や前向きな成長をし、繁栄していくには多様性は一つの大きな鍵になるだろう。

顧客へ共感すること(Empathy)の大切さ

 また同社には「HEART」というカルチャーがあり、新従業員トレーニングでもそのカルチャーについて、HubSpotのスタッフとしてあるべき行動規範の一つとして教え込まれる。

 ダーメッシュ氏は、顧客を可能な限り尊重することは当然大切であることに付け加え、HEARTの頭文字の一つである「Empathy(共感)がニューノーマル時代にはさらに大切になり、今後は顧客に対して深い共感を示すことも重要になるのではないか」と述べている。

 一例として、ブライアン氏は同社が行っている「顧客とスタッフの月次ミーティング」を説明する。顧客の声やペインポイント(HubSpotを利用するにあたっての課題)を集め、それだけを議題にすることが非常に役立っていることも強調した。

 スタッフミーティングなどを行うとわかるように、企業が今後2つのタイプに分かれていくのでは、とブライン。1つは顧客の動きに合わせてオンラインやインサイドセールスなどを積極的に取り入れる企業、他方は2019年以前に戻ろうとする企業だ。

白板を使いレクチャースタイルでダーメッシュと語り合うブライアン
白板を使いレクチャースタイルでダーメッシュ氏と語り合うブライアン氏

 前者のように顧客が望むような形のビジネスの行い方に移行することも大切で、そのプロセスは、Googleのように完全に人間が出てこないオンラインで行われるセールスサーブ型ビジネスをC(Compurter)とオフラインで人が直接関わってくる従来型のビジネスをH(Human)の間を移動することであり、コロナ禍を前向きに捉えている企業は、HからHcへ。さらに、CHへ移行することによって顧客の状況に共感しながら要望に答えられるはずだ、とブライアン氏は主張する。

 と同時に、ダーメッシュ氏は共感しているという信頼(T)を勝ち取るためには、望むことをされるという期待値が、望まないことをされる期待値を上回り続けることが大切であると述べ、以下のように続けます。

 「インバウンドマーケティングを提唱し始めたころはマーケターやセールスパーソン、メディアや政府の言うことがとにかく信頼されていなかった。だからこそ自社の顧客にとって真に役立つ情報を発信し、インバウンドマーケティングをいち早く行ってきた企業は成果を出してきた。ニューノーマル時代もやはり同じ状況で、マーケティング担当者や、営業担当者、CROやオペレーション担当者も、その場しのぎの対策ではなく、顧客が望むことに共感、積極的に変化に飛び込み、信頼されることによって事業が繁栄していくのではないか」(ダーメッシュ氏)

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ニューノーマル時代にデジタル業界が向かうべき方向

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この記事の著者

戸栗 頌平(トグリ ショウヘイ)

株式会社LEAPT(レプト)
代表取締役

複数BtoB企業と起業を経て、マーケティングコンサルタントとしてBtoB専業マーケティング代理店へ従事。その後、外資SaaSのユニコーン企業の日本法人立ち上げを行い、法人営業開始後マーケティング責任者として創業期の日本法人を牽引。現在、LEAPTにてBtoBマーケティング支援事業を行う。海外SaaS、マーケティング、カンファレンス等に精通。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/34494

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