メディアでの商品説明もアンバサダーが出演
徳力:先ほどの「アンバサダーを有名にしていく」というKGIのお話をもう少し伺いたいのですが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。
林:アンバサダーの方の伸びに関しては、「ワークマン製品を扱った投稿と、通常の投稿の差」を見ています。視聴が伸びていれば、ワークマンを使っていただくことでSNSの影響力が伸びているぞ、と考えています。逆に落ちてきたらうちの製品が飽きられているということですね。

徳力:ワークマンを取り上げた際の動画が、通常と比較して200%から1,000%という大きな割合で視聴再生数が伸びていますね。御社で、視聴が増えるようバックアップをされているのですか?
林:バックアップは基本的にしません。後追いで公式SNSが反響を紹介するといった程度で、基本的にはご本人にお願いしています。あるとすれば、店頭POPの影響はあるかもしれません。
アンバサダーとコラボ開発した商品については、このようなPOPを店頭に立てますが、QRコードがあり、詳しい紹介はアンバサダーのYouTube動画やブログで見られるようにしています。ワークマンは全国に880店舗がありますから、もしも1店舗1日1人のお客様がQRを取ったとしても、毎日の積み重ねではかなりの量になるはずです。

徳力:店舗にこういった仕掛けがあると、アンバサダーもモチベーションが上がりますね!
林:何よりも、ご自身が開発しているので、店員や公式サイトの説明より、アンバサダーたちの熱意ある説明を聞いた方が、お客様にとっても商品の特徴がわかるのでは、とも思っています。
徳力:お客さん(アンバサダー)がお客さんを接客してくれるというのは、理想的なありかたです。
林:メディアさんの取材がきたときも、私達よりもアンバサダーの方に商品の魅力を伝えてもらったほうがわかりやすいと思い、積極的に出演をお願いしています。メディアに出て有名になっていただく後押しもありますが、それが商品の販売増にもつながるという考え方です。
実際、新製品を買いにこられるのはアンバサダーのフォロワーの方です。ブログやサイトを見てから来店され、何十着という店舗の在庫は大体当日に売り切れてしまいます。

会社のリリースではなく、アンバサダーの発信を一次情報にする
徳力:アンバサダー周辺の方がまず商品を買って、そこから話題になっていくような形なのですね。メディアからの告知は先行しないのですか?
林:これは衣料品だからということもあるのですが、実は新商品についても、コラボに関しても我々では一切メディア向けのリリースは打ちません。なので、コラボ製品についても新製品についても、情報を持っているアンバサダーさんの発信が一次情報になります。
徳力:驚いた。IT製品などではまず記者の方に最初に情報を渡して、解禁日までに準備していただくことが通常のため、ちょっと考えられないです。
林:ですから取材依頼も、口コミやアンバサダーの方の情報をみてくるケースが多いのですよ。また、アンバサダー達にはUGCが増えるお手伝いもしてもらっています。「買いました」「実際に着てみました」というようなファンからの報告が入ってきますので、それをアンバサダーのブログなどでどんどん紹介してもらっているのです。
UGCが増えることで、たとえばこれからキャンプを始めようという人が「どんなウェアがいいのかな」と初めて探すときに、評判が多いとワークマンがひっかかってくるようになります。
徳力:非常に良い循環でまわっている成功事例というように思いますね。

林:それからこれも重要なのですが、アンバサダーの方々には、全員無償でお引き受けいただいています。一銭も払っていませんので、みなさん言いたいことはどんどん言ってくださいます。それがすごく良く、我々にとって刺激になっています。