デジタル化の進展は、顧客習慣化のチャンス
新型コロナウイルスの影響で、生活者のデジタル化が大きく進展しました。4月25日に習慣化の秘訣をまとめた書籍『カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-』(秀和システム) を刊行した博報堂ヒット習慣メーカーズでは、この変化は顧客の習慣化を実現するためのチャンスであると考えています。
デジタル接点を活用すると、企業が顧客にサービスを提供する自由度が飛躍的に高まります。リアル接点しかない状態であれば、お店に来てもらえなければ届けられなかった情報も、デジタルを介せばいつでもどこでも最新情報を届けることができます。また、顧客ごとの購入や利用の履歴をデータ化して、一人ひとりに合わせたサービスを提供するといったことも実現可能となります。
こうしたサービスを通じて、顧客が商品の情報に「習慣的に」接触したり、商品を「習慣的に」購入したり、利用したりといった顧客の習慣化を進めることができるのです。もちろん、ネット注文のように商品購入の利便性自体を向上させるサービスも、リピート率を高め、顧客の習慣化を実現することに貢献すると考えられます。
顧客の習慣を作る5つの手法
私たちは、独自の事例収集を通じて、デジタルを活用して、顧客の習慣化を促す手法を大きく5つに分類しました。購入前から、購入、利用…といったカスタマージャーニーの順序に沿ってそれぞれご説明します。
1.情報コンテンツ <購入前の習慣化>
2.購入インセンティブ <購入時の習慣化>
3.利用体験強化 <利用時の習慣化>
4.利用ログ管理 <利用後の習慣化>
5.コミュニティ運営 <シェアの習慣化>
情報で習慣化を作る
1.情報コンテンツ<購入前の習慣化>:商品やカテゴリーに関する情報コンテンツを提供。メディアとして顧客に習慣的に閲覧してもらうことが狙い。
たとえば、ブランドファンの多いスポーツブランドであれば、自社の商品情報をどこよりも早く発表するだけで、十分なコンテンツになります。加えて、あるブランドでは自社アプリで、限定スニーカーの購入申し込みを不定期かつ先着順で受け付けることで、普段からアプリをチェックしてもらうための強力な施策を展開しています。
中国では、保険会社がオンライン上の問診サービスや、お医者さんのレビュー・予約サービスなどを無料で提供しています。これにより、ユーザーの信頼を集め、保険契約者を獲得するという、コンテンツに留まらないサービスを提供することで成功していることが有名です。このケースも情報コンテンツによる顧客の習慣化と捉えられます。
いずれの例も、自社や商品についての情報に習慣的に触れてもらうことで、いざ商品を購入・利用しようとなった際に、そのまま自社を選んでもらうことを狙っています。そのため、情報を提供している接点上に、購入導線が設置されているケースが多いことも特徴です。
顧客が求めていることをポイント化せよ
2.購入インセンティブ<購入時の習慣化>:商品購入時に、ポイントなどのインセンティブを付与する。インセンティブを理由に、商品を習慣的に購入してもらうことが狙い。
ポイントプログラムは昔から存在しますが、デジタル化によって、物理的なカードを発行せずとも、ポイントプログラムを提供できるようになったことで、多くの企業が独自のプログラムを提供しやすくなりました。
たとえば、かつて自動販売機は、カード発行機能を持った特定の会社の自動販売機のみがポイントプログラムを提供していました。今では、飲料メーカー各社がスマホアプリなどを通じて、独自のポイントプログラムを提供し、多くの会員を集めています。一部の自動販売機では、アプリ上に事前購入やまとめ買いの機能も搭載し、毎朝同じ自販機で飲み物を買い続ける習慣を根付かせるサービスも提供しています。
習慣化という観点で効果的なポイントプログラムとしては、おむつを購入すると知育玩具などの赤ちゃん用品に交換できるポイントが貯まっていくといった事例が挙げられます。単にポイントが貯まるだけでは、貯まる動機付けが弱いので、「顧客が何を求めているか?」にフォーカスしたプログラム設計が習慣を生むための肝となります。