一貫した顧客体験にはシステムの統合が不可欠
また、3つめの要素「顧客エンゲージメント(System of Engagement)」についても以下の様に語った。
「顧客エンゲージメントシステムには3つの特徴があり、(1)メールやSNSやチャットの様に複数のチャネルが存在すること、(2)ターゲティングや自動化、パーソナライズすることが可能、(3)常に前述2つを一元管理して数値改善を行わないといけないこと、です。これらが複数に分かれていて良いことはなく、システムがバラバラになっていることは顧客体験を低下させるものでしかないでしょう」(ジョン氏)

「同時に、顧客一人一人に応じたサービスを提供する”Customer-in”の考えを実現する様にしました。反対語に、Function-Out(企業本位の製品機能開発や提供方法)があります。常に顧客ニーズを起点にして、課題解決のためのプロセスを設計することが大切で、そのためにたとえばEメールシステムを一元化して顧客体験を管理する必要があります」(ジョン氏)
米国企業と同様に、日本企業でも部門間で利用ツールが異なることも多くあり、たとえばメール配信の場合、マーケティングチームは有償メール配信ツール、営業は個人のメルアド、サービスは別の安価な有償メール配信ツール、などもよく見受けられる。やはり、この様な状況では、Eメールの自動化が案件化した見込み客に対しても送信され、見込み客むけのセミナー案内が既存顧客にも飛んでいく。この様なことを避けるためには、やはり“機能で何ができるのか”ではなく、“顧客課題を解決するには何ができるのか”と言う考えが重要だろう。
日本企業が継続的な繁栄を続けていくために
ここまでHubSpotの2セッションのレポートをまとめさせていただいた。同社を2013年あたりから知っている筆者として言えるのは、同社は常に顧客の目線に立って、当たり前のことを、当たり前として積み上げてきた、と言うイメージが強い。フライホイールを作り上げ、戦略を作り、システムに落とし込むことは簡単とは言うことはできないのは事実だ。
しかしながら、今後日本企業が継続的な繁栄を続けていくには、日本企業独特のProduct-Outの様な思考からMarket-In、つまりHubSpotの主張するFunction-OutからCustomer-Inの思考に切り替えて事業を展開していくべきではないだろうか。また、マーケティングテクノロジーの進化のスピードを考えると自社の運用レベルに合ったプラットフォームを選ぶことも同様に大切になるのではないだろうか。このレポートが何かのアイデアと実行のきっかけになれば幸いだ。