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「食」分野のプラットフォーマー クックパッドが切り拓く未来

 2020年9月1日、クックパッドのJapan CEOに福崎康平氏が就任した。代表の岩田林平氏はグローバル事業全体を統括する立場となり、今後の日本事業は弱冠29歳の福崎氏が率いていくという発表は、料理や食の領域以外からも注目を集めた。奇しくもコロナ禍による在宅時間の増大で、料理の機会は増えているが、意外にも「表面的な料理ブームだけが急激に起こることがよいとは思えない」と福崎氏は話す。レシピ投稿者と同等に、生産者や飲食業なども「料理の楽しみの“つくり手”」と表現するクックパッドの今後の舵取りを聞いた。

※本記事は、2020年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』58号に掲載したものです。

大きく広がる「料理」の概念

クックパッド株式会社 執行役 Japan CEO 福崎康平(ふくざき・こうへい)氏
大学在学中に、東日本大震災の被災者に住宅を無償貸与できるサービス「roomdonor.jp」を立ち上げ、メディアや政府関係者からも注目を集める。在学中に35ヵ国をまわり、料理を振る舞う旅を実施。2014年コーチ・ユナイテッド入社。先生と生徒のマッチングサービス「サイタ」を運営。2016年2月同社代表取締役。2018年1月クックパッド入社。買物事業部部長、執行役を経て2020年9月より、日本事業の総責任者である執行役 Japan CEOに就任。

――御社は20年以上にわたりレシピコミュニティが生活者に厚く支持される一方、最近では生鮮ECの「クックパッドマート」や、住宅のキッチン環境をより良くする「たのしいキッチン」、絵本の定期購読サービス「おりょうりえほん」など複数のサービス展開を重ねられています。まず、この多角的な展開の意図と、その背景をうかがえますか?

生鮮EC「クックパッドマート」画面。独自流通網で生産者から直接食材を購入できる。ドラッグストアやコインランドリーなどに設けた専用ボックスで受け取る仕組みに加え、2020年春からは自宅配送も可能に。
生鮮EC「クックパッドマート」画面。独自流通網で生産者から直接食材を購入できる。
ドラッグストアやコインランドリーなどに設けた専用ボックスで受け取る仕組みに加え、
2020年春からは自宅配送も可能に。

 クックパッドのすべての活動は、当社のミッション「毎日の料理を楽しみにする」に根差しています。会社の定款にも、「世界中のすべての家庭において、毎日の料理が楽しみになった時、当会社は解散する」という衝撃的な文章があるのですが、それはある意味で正しいと思っています。そんな世界の実現を目指すための土台が、ここ数年の新規サービス展開でようやくできてきたという感覚です。

 私自身は2018年に当社に参画しましたが、料理自体は子どものころからずっと好きで、自炊もしてきました。ただ、世間的には「料理」とは、専業主婦のお母さんが昼間に買い物をして準備し、家族が帰ったら温かいご飯を出してあげる、といった昭和なイメージが長く定着していました。平成の時代の大半も、そうだったと思います。

 それがこの近年、「料理」の概念が大きく広がっています。共働き家庭や独身世帯の割合が増え、平日に何品も手作りするのは難しくなり、限られた時間内でなるべく充実させる、という方向になっています。同時に外食や、買ったお総菜などを家で食べる中食の産業も大幅に伸びています。結果的に、最後に自分で味付けをして食べる機会が減っているのが現状です。

 だからこそ、自分でコントロールできる実感が大事になってきていると思っています。ファッションとも少し似ていて、その昔は布地を買ってミシンで縫っていたのが、今ではユニクロを筆頭に手頃な洋服をベースに自分らしくコーディネートする人が増えていますよね。料理も、外食や中食も取り入れつつ「自分の食べるものに責任を持つ」感覚になれると、もっと毎日が楽しみになるし、健康にも当然つながります。

 クックパッドが志向しているのは、そんな生活に役立つ情報や解決手段を提供することです。そのためには、レシピサービスだけでは到底足りない。自宅で自炊ができる人だけに向き合うのではなく、生産者や飲食産業の方々とも協力して、「自分で食をコントロールする」ことにつながる文脈を作ることに今フォーカスしています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/25 09:32 https://markezine.jp/article/detail/34573

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