企業側の利便性よりも顧客側の買いやすさを優先
南坊:Ankerさんの場合、販路だけでなく商品カテゴリも拡大されていますよね。モバイルバッテリーから始まって、現在はイヤホンや掃除機も開発されています。
猿渡:はい。私が入った頃は「モバイルバッテリー屋さん」でしたが、毎年商品カテゴリを拡大していますね。各製品で高い評価をいただけているのですが、それもレビューをもとに短期間で製品を改善していく仕組みを築き、横展開できているからだと思います。
南坊:すごく現代的な戦略ですね。
猿渡:おっしゃる通り、最近よく聞くD2C的な動きを、当社は創業当時から実践してきました。
正木:ちなみに、公式オンラインストアとAmazonの売り上げの割合はどのぐらいなのでしょうか?
猿渡:やはりAmazonが多く、公式ストアの売上比率が実はそこまで高くないんです。売り上げよりも、会員さんへのインセンティブや、メディアコンテンツを見ていただける環境にすることを優先しています。
というのも、実は公式ストアにもAmazonページへのリンクを貼っているんです。公式ストアで購入すると、会員登録が面倒ですよね。それなら、多くの方が既に登録済みであろうAmazonに誘導した方が利便性を高められる。当社としては、当然公式ストアで買っていただいた方が利益率は高いのですが、それよりもお客様が買いやすい選択肢をしっかり提供することを優先しています。
信頼・安心を得るための環境整備
南坊:では、ライドオンエクスプレスさんとしてブランディングにつながる事業推進をどのようなものだと考えでしょうか。
正木:そもそも、ブランドとかブランディングって、実務をしている我々には正直わかりにくいんですよね。ブランドを構成するものは何か、要素分解してみると、安心・信頼・刺激になってくるのかなと。特に我々の場合、食を扱うので、安心・信頼が重要です。

正木:ただ、この時点でもまだ扱いにくい。もう少し分解してみると、商品力とか、配達時間などになってくる。そこまで見えてきてようやく、各部署に落とし込んで施策につなげていけます。
私は社内のデジタル化促進をミッションとしていますが、アナログを閉じていくのではなく、デジタル、アナログ双方の強みを伸ばしながら、双方の弱みを消してブランドを形成していく方針で進めています。
次の図は、お客様が比較検討をしてからお届けするまでの流れと、その中にある当社とお客様との接点などを表したものです。

正木:当初は図の上部にあるオフラインの接点しかありませんでしたが、下部にあるオンラインの接点や機能を通じての注文を増やしていこうと取り組んできました。
というのも、多様化するお客様の生活に合わせていかなければいけないと感じていたからですね。チラシを見て電話で注文するといった方法だけでなく、チラシを見て家族で選んでネットで注文する、オンラインでメニューを見ながら電話で注文するとか、お客様によって色々な選択肢を選べる環境を提供するべきだなと。
南坊:オンラインとオフラインを自然にマージして、どのチャネルでもスムーズに使っていただけるようにされていると。
正木:そうですね。電話注文を残しているって古臭いと思われるかもしれませんが、電話でしっかり人が対応すること自体はまだまだ必要な場面があると思います。