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生活者データバンク

テレビCM効率化に「エリア視点」を

エリア視点の有効性を検証する

 とはいえ、理想を実現したところで本当に効果が見込めるのかという疑問もあるだろう。ここからは2商材の全国でのCM放映実績を比較して、データドリブンなエリア配分調整の有用性を検証していきたい。検証にあたっては、インテージの全国各都道府県における個人の番組やCM接触の計測が可能なデータ「Media Gauge Dynamic Panel」を利用した(※3)。

 今回は、2ブランドの全国および各エリアでのアクチュアルGRPとリーチ率について分析を行っていく。図表2は、2ブランドの全国でのアクチュアルGRPとターゲットにおける3+リーチ率の概要である。

 図表2 2ブランドの全国でのGRPとリーチ率の概要
図表2 2ブランドの全国でのGRPとリーチ率の概要

 Aブランドは430GRP、Bブランドは460GRPと同程度の出稿量である一方で、ターゲットリーチ率には大きな差がある。リーチ率はAブランドが57.3%であるのに対してBブランドは53.1%となっており、Aブランドが4.2ポイント多くリーチを獲得できていることになるが、具体的な人数の開きはどの程度のものだろうか?

 今回の分析におけるターゲットは女性20〜49歳としており、全国での人口は約2,210万人だ。つまり、Aブランドは人口に換算すると約93万人(2,210万人×4.2%)多くテレビCMを届けることができているということとなる。どれだけ良い製品・良いクリエイティブも、まずは情報を“届ける”ことから始まるため、自分がもしこのブランドを担当していたらと考えるとなかなか悔しい結果だ。

 では、限られた予算内でより効率よくテレビCMを届けるための改善方法はどのようなものだろうか。その糸口を見つけるために、投下量に対する各エリアでのリーチ率の違いを分析し、図表3に示した。

 図表3 2ブランドの各エリア別GRPおよびリーチ率(タップで画像拡大)
図表3 2ブランドの各エリア別GRPおよびリーチ率(タップで画像拡大)

 棒グラフがGRPを、折れ線がリーチ率を表している。まずは各エリアのGRPの傾斜に着目していただきたい。Aブランドは比較的エリア間の傾斜がなだらかであるのに対して、Bブランドは関東にかなり寄った傾斜になっている。確かに、日本人口の約3割が関東に集中しており、リーチを稼ぐのであれば関東に出稿するのは得策であるが、結果として全国でのリーチはAブランドが上回っていた。その要因はリーチのサチュレーションにあることが、各エリアのリーチを見ていくことでわかる。

 関東エリアにおいてBブランドはAブランドよりも100GRP以上多く出稿しているが、3+リーチ率はほぼ変わらない。基本的に出稿量が多ければ多いほどリーチも伸びていくが、リーチ効率は少しずつ下がりサチュレーションが起き始めるため、各エリアにおいてどのあたりでそれが起き始めるのかを把握することが重要である。Bブランドはサチュレーションポイントを超えた出稿をしたことでリーチ効率が悪くなったため、このような現象が起きている。翻って、東北や九州においてはAブランドのほうが出稿量が多く、リーチもBブランドより獲得できている。

 つまり、Aブランドは各エリアに多すぎず少なすぎない、的確な出稿予算の配分を行ったことで、最終的に全国でより多くのリーチを獲得することができたのである。もちろん、Bに比べて効率的な出稿ができているAすら、実はデータに基づいてエリア配分するとさらに効率化できることもわかっている。以上の検証から、「エリア視点」でのデータ活用には、大いに可能性がありそうだと言える。

より多くの人に商品を届けるために

 テレビCMは大規模リーチを狙えるメディアだからこそ、効率化による見返りは大きい。全国を俯瞰したテレビデータの活用は、これまで実現できなかった規模での効率化・最適化をもたらすはずだ。この1〜2年でテレビ事業支援サービスが格段に増えたことからも、データ活用によるCM効果向上への期待が垣間見える。データの拡充や技術の発展による出稿金額の最適なエリア配分算出や出稿枠の最適化は現実のものとなりつつあり、さらに売上を最大化させるようなCMプランニングの実現も遠い未来のことではないはずだ。テレビCMをより良くするため日々奮闘する皆様にとって、本稿が新たな視点を獲得する一助となれば幸いである。

※3 Media Gauge Dynamic Panelは、85万人規模(2020年6月時点)のサンプルサイズを持ち、全国の都道府県単位でテレビ視聴を計測でき、ユーザー属性単位でCM接触からデジタル接触・コンバージョンまでを推定的に紐付けて計測できる。なお、データの利活用における個人情報の扱いには、徹底した注意を払って運用されている。

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この記事の著者

藤田 祥太(フジタ ショウタ)

 2017年にインテージに中途入社。定量調査・定性調査・その他データ活用による顧客のマーケティング活動支援の担当を経て現在は、広告宣伝部のTVCMプランニング効率化・効果向上支援および新規事業開発を担当。趣味はお酒・お笑い鑑賞・ゲーム・オニツカタイガー(スニーカー)集め。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/25 09:37 https://markezine.jp/article/detail/34641

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