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有園が訊く!

個人データ利用の規制が強まる中、LINEのマーケティング活用に切り込む

 デジタル上でのコミュニケーションは、企業のマーケティングやブランディングを明らかに変革し、速度と深度を増している。有園雄一氏が業界のキーパーソンや注目企業を訪ね、デジタルが可能にする近未来のマーケティングやブランディングについてディスカッションする本連載。今回は、昨今関心が高まっているテーマのひとつである「個人データの扱い」にフォーカスし、LINEの菅野圭介氏を訪ねた。国内8,600万ユーザーを擁する一大プラットフォームでは、個人データ保護と広告への活用をどう捉えているのだろうか?

データ活用を取り巻く環境変化に伴い、ユーザー規約を改訂

有園:今回は、プラットフォーマーにおける個人情報の扱いをテーマに、LINEの菅野さんを尋ねました。菅野さんは、自身が設立したファイブが2017年にLINEグループ傘下となり、その後LINEの事業に参画されています。まず、LINEでの業務をうかがえますか?

菅野:LINEはカンパニー制を取っていまして、私が所属するマーケティングソリューションカンパニーでは、広告主企業や代理店と相対して広告マーケティング事業を担っています。私が所属する組織は社内でDisplay Sales Planning室と呼ばれており、開発と営業の間に立って広告プロダクトの企画をしたり、市場展開時のサポートをしたりもしています。

▼LINE マーケティングソリューションカンパニー カンパニーエグゼクティブ 菅野圭介氏
LINE株式会社 マーケティングソリューションカンパニー カンパニーエグゼクティブ 菅野圭介氏

有園:完全にBtoBの部門ということですね。昨今、欧州のGDPR(General Data Protection Regulation)や、米カリフォルニア州のCCPA(California Consumer Privacy Act)など、個人データに関する法規制が相次いでいます。GDPRは居住地を問わずヨーロッパ人の個人データが対象になるので、海外のユーザーも多いLINEも準拠すべき立場かと思います。どのようなスタンスでいるのか、うかがえますか?

菅野:LINEは特にタイ、台湾などで海外ユーザーの多いサービスですので、GDPRに限らず各国のデータ保護法令に適切に対応しています。私もLINEグループに入って驚いたのですが、元々メッセージアプリなので、「ここまでやっているのか」と思うほど、現場も経営側もプライバシー保護に対する意識を強く持ち、事業運営に取り組んでいます。この傾向は、2016年の上場のタイミングでより一層強化されています。

「通信の秘密」に守られているLINEのメッセージ

有園:今、一般生活者も個人データの扱いを意識するようになって、LINEはともすると「メッセージの中身を読まれているのでは」と思われることもあるのでは?

菅野:一般の方々の間には一時期そうした声もありましたが、前提としてLINE上の通話やメッセージの内容などは「通信の秘密」として、特に厳密な保護の対象としています。また、LINE上のユーザー同士の通話やテキストメッセージの内容は原則暗号化されており、LINEの全サービスにおいて閲覧も利用もできない仕組みとなっています。GDPRの議論が起こる前から、メッセージアプリとして事業拡大をする中で、かなり先行して社会における立ち位置とあるべき姿を見据えて厳格にデータを扱ってきた経緯があります。

有園雄一氏
zonari合同会社 代表執行役社長/株式会社ビービット マーケティング責任者/
電通総研パートナー・プロデューサー 有園雄一氏

有園:なるほど。メッセージアプリだからというのは、考えてみれば「通信の秘密」の法律を順守する立場であるとはっきり認識されている、ということですね。この法律は、どんな些細なやり取りでも、郵便物などの個人間のメッセージを勝手に開けてはいけないという内容ですが、LINEも通信上サーバーは経由するが見てはいないと。

菅野:そうです。メッセージのやりとりを読み込んだり解析することは原則していませんし、それを事業に活用することももちろんできません。逆に広告事業を預かる立場では、「こういうデータ分析ができるのでは?」と企業からの期待を感じますが、BtoCのサービス側とは厳しく一線が引かれています。

 ただ、サービスと広告事業に隔たりをあえて設けることは、ユーザーの利益を第一に考え、ガバナンスを効かせるべき領域という発想と理解しています。一方で、トークデータ以外にも大量のデータアセットが存在することはたしかで、プライバシーを保護した上でそれらのデータを活かせば、非常に大規模な属性分析やマーケティングインサイトが得られます。実際、広告における属性の推定や類似ユーザーの拡張などの精度は非常に高いものがあります。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/01/19 09:00 https://markezine.jp/article/detail/34812

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