サステナブル志向は浸透するか
ここまで超先進層における例を見てきたが、これらはどの程度一般の生活者の間に伝播する可能性があるだろうか。筆者は、近い将来、意外と広がりを見せるかもしれないと考えている。根拠は、10代の若者において、大人世代とは価値観が異なる兆しが見えることだ。図表3で示したとおり、10代の若者においては前述のサステナブル行動の3分類のうち、「(3)サステナブル新概念&社会・環境優先行動」の頻度が高い。
たとえば「社会的格差の解消を助ける、フェアトレード商品を選ぶ」「動物の福祉に配慮して生産された肉などを買う」「SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいる企業の商品・サービスを選ぶ」など、TOTALでは2割前後しか実行していない行動も、15-19歳は3割以上が行っていると回答しており、超先進層の価値観と近い傾向が見られる。
一方、彼らが社会人となり家族を持ったときにもサステナブルな行動を取り続けていくかについては注視していく必要がある。家計を考えたときに、「エコ」「エシカル」「サステナブル」といった要素の優先順位が変わる可能性もあるからだ。しかし、もしかすると本当に今の10代は違うのかもしれない。以前会話を交わした、動物の福祉を守る活動をしている大学生が「今の高校生は自分の世代とは全然違う」と言っていたのを思い出す。その片鱗を感じたのが、筆者が先日立ち会ったインタビューで、ある商品の紙素材へのシフトについて聞いたときのことだ。高校生2名が力強く「エコでいい」と即答したのに対し、大学生2名の反応は薄かった。あくまで一つの例であり、しかも筆者の受けた印象に過ぎないので、少々楽観視しすぎかもしれない。それでも、日本の生活者の商品選択基準の中で「サステナビリティ」の重要性が高まる兆しとして期待したい。
参考文献
Hujić, L. (2019).The2.5%(small group–big influence)Bubble Publishing.
調査概要
<定量調査>
調査地域:全国 対象者条件:15~69歳の男女標本
抽出方法:インテージの「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2017年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=3,206 調査実施時期:2020年1月20日(月)~2020年1月22日(水)<定性調査>
調査地域:日本、イギリス
対象者条件:以下の(1)(2)両方に当てはまること
(1)TFTKの定義するイノベーターである
(2)日本在住の日本人、日本在住の海外出身者、海外在住の日本人
標本抽出方法:TFTK.CLUB(TFTKのイノベーターネットワーク)
標本サイズ:n=11 調査実施時期:2020年4月21日(火)~5月1日(金)
インテージの調査レポート 「超先進層にフォーカスし、新しい価値観の兆しをいち早くキャッチするアプローチ~未来への兆しを見つけ出すforesight(後編)~」はこちらからご覧いただけます。
