※本記事は、2020年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』60号に掲載したものです。
株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 大宮千絵氏
行政事業責任者、ソーシャルビジネスプロデューサー。日産自動車にてマーケティングリサーチ業務に従事したのち、NPO法人TABLE FOR TWOのCMOを務め、ソーシャル・マーケティング施策「おにぎりアクション」の企画・立ち上げを行う。2017年日本マーケティング大賞奨励賞、アジア・マーケティング3.0アワード大賞を日本人として初めて受賞。2019年第3回ジャパンSDGsアワード外務大臣賞を受賞。2020年8月より現職。福井県未来戦略アドバイザーを兼業。
Q1.最近、いちばん感銘を受けた書籍とその理由は?
優れたマーケティング施策、事業展開をし続けていくためには、その組織の体制や文化を含めた「カルチャー」が大きく影響しているということ、「カルチャー」の強化なくして事業成長はないことを、これまでのキャリアを通して感じてきました。組織カルチャーはその組織に属する一人ひとりが創り上げ、意思決定時の判断基準ともなるものですが、明文化されていないことも多く、どう強化していくかを考えていた中で手に取ったのがこの1冊でした。組織の「現在の姿」と「目指す姿に向けての打ち手」を、フレームワークを使いつつ考えられるため、組織のメンバー皆でこの本を読み、カルチャープロジェクトを立ち上げ、最高の組織文化構築に向け動いています。
私がいるベネッセコーポレーションの大学・社会人事業開発部は、実は既に非常にユニークなカルチャーを醸成しています。大企業でありながら立場も議論もフラットかつオープンな組織で、メンバー個々人が、書籍・学習動画・メディア等から日々自律的に、かつ楽しそうに学習をし続けていることも特徴的です。こういったカルチャーをベースとし、事業が加速していることは非常におもしろいと思っています。学習し続ける組織文化だからこそ、フレームワークなど学んだことを共通言語にして、リモートワーク中心の中でも議論を深めていくことができています。事業成長をさらに加速するには、このカルチャーを明文化し、発信することで、さらに輪を広げていくことが非常に重要だと感じた本でした。
Q2.「マーケターならこれを読むべし!」という書籍とその理由は?
『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』です。
「顧客起点」「カスタマー・オリエンテッド」というキーワードはよく耳にしますが、その使われ方や中身は様々で、そのための手法を説いた書籍も多種多様に存在します。その中でも、内容に強い納得感があり、すぐに実践に活かせる学びが凝縮されていたのがこちらの書籍で、今後の実践時のバイブルとしたいと感じる素晴らしい内容でした。
これまで日産自動車での経験や、NPOでの事業開発・マーケティング経験を積む中で、時代の激しい変化において既存のフレームが活きない場面に数多く直面してきました。現場で試行錯誤を繰り返す中で、結果的に多くの人の心を動かすことに成功したのは、まさに「たった一人のカスタマー」を思い浮かべ、その人に向けてのメッセージを考え抜いてシンプルに発した時でした。この書籍では、そのたった一人のカスタマー像をN1分析で導いていく方法、それにより事業成長させる方法が非常に納得感のある形でフレーム化されています。ベネッセで私が担当している社会人向けオンライン学習サービス「Udemy(ユーデミー)」でも、この書籍のフレームワークを活用しながら今まさにこのN1分析を行っています。その中でもやはり徹底して、「たった一人」のお客様の心を動かすインサイト、カスタマージャーニーを大切にし、コミュニケーション提案をしていく重要性を感じた一冊でした。